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脳卒中の超基礎シリーズのカテゴリ記事一覧

SCU、回復期、ACLS、認知症ケア専門士、認定看護管理者ファースト、うつ病にさせないためのアドバイザー。医療的ケア教員。現役看護師だから書ける旬な情報を分かりやすく発信。

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カテゴリ:脳卒中の超基礎シリーズ

高次脳機能障害の患者さんとの関わりはどうしたらいいのか。間違った対応は悪循環になりますよ。

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脳卒中の後遺症で「高次脳機能障害」というのがあります。

これは脳卒中になったら必ず残るものではありません。ある人もいればない人もいます。あってもその程度は人それぞれです。

この「高次脳機能障害」=(高次脳)は、外傷や麻痺と違って外からパッと見ただけでは分かりません。いや、分かりずらいというべきでしょうか。健常者にはなかなか分かりずらい症状ゆえに、周りの理解や強力が得られにくかったりします。誤解も多いこの高次脳。医療者であっても対応に困ることは多いし、医療者でさえきちんと理解できていなかったりします。それくらい奥が深いというか、まだまだ謎に包まれている症状でもあります。

対応を間違えるとかえって患者さんのやる気をなくしたり、混乱させたりします。周りの人間はどういうことを留意しておくべきなのかを見ていきましょう。






◆ 注意障害があると後で恥ずかしい思いをすることがある。

注意障害といって、普通なら気付くようなことでも気付かなくなります。特に半側空間無視の症状がある人にはよくあることです。

例えば横にあるモノの存在に気づかない。

衣服がめくれあがっているのに気づかない。

など、生活しているいろんな場面で「気付かない」のです。

別に本人がボーっとしているわけではなく、症状としてそうなります。


カーディガンを片手だけ通して、それで歩いているということがあります。当然カーディガンは片腕分しか着られていないのでだらりと垂れ下がっています。そんな状態で歩いていることがあります。それでも本人は気付いていません。普通片方の腕しか通していないなら気付くものだと思いますが、注意障害があると気付かないのです。


大切なのは、「これは社会的に恥ずかしいことをしている」と本人が分かっていることです。

スカートがめくれ上がっているのを公衆の前で指摘したり、職場で指摘したりすると、本人は大勢の前で恥をさらしてしまいます。

それは本人にとってマイナスになるだけでいい事はありません。

そっとさりげなく直してあげるのです。

「ダメじゃないの!みっともない!」

と言ったところで恥の上塗りで、本人のリハビリをする気持ちや社会の中で生きていく気持ちを殺いでしまいます。


◆ できないことを「なんでできないの?!」と叱咤激励をしてもあなたの思うようにはいきません。

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注意障害のほかにも、服が着れないとか道具を上手く使えないとかいろんな症状があります。

高次脳になるとそのすべての症状が患者に出てくるというのではなく、脳の損傷部位によって出てくる症状は違います。


これらは「症状」なのです。

本人の性格や生まれつきの癖とかとは違って、ある日突然その人に降りかかった「症状」なのです。

しかも「すぐに」改善はしません。時間がかかるものなのです。

本人も焦っていたり悔しかったり悲しかったりするものです。

つらいのは本人が一番感じています。

一見、やる気がないように見えても、本当にやる気がないのではなく歯がゆい思いもしています。

何度も言いますが、パッと見では分かりにくいのが高次脳です。

これを周りの人間は理解しましょう。



◆ 一歩家の外に出ると障がい者にやさしくない社会なのがよく分かる。

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ユニバーサルデザインが叫ばれて久しくなってきましたが、公共の施設でもまだまだ不便なことが多くあります。

障がい者からすると「なんでこんなところにあるの?」「もっとこの辺にあると使いやすいのに」ということが結構あります。

これは設計者や施工者が実際に障がい者の方から意見を聞いていなかったり、健常者の利用しか頭になかったりと、ユニバーサルでない考えで工事をおこなったからです。


ほんのちょっとした気遣いでいいんです。

それだけで断然使いやすくなります。

麻痺があり注意障害があると、数センチ位置をずらしただけで助かることがあります。

行政のお偉いさんもこれが分かっていないのです。


◆ できないことよりも、まだこんなことができると思ってください。

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特に家族。友人。同僚。先輩。

こうした身近にいる人こそ知ってほしいと思います。

やいやい言ったところで本人はすぐにどうしようもできないので、余計苦しいのです。

言っている方は励ましのつもりでしょうが、悪気はないしむしろいい事をしているつもりでしょうが、そこは理解してください。


「しっかりしなさい」「がんばれ」と言われても、「はいそうですか」とはいかないのです。

のろのろしていると周りは思うしそう見えるのでしょうけど、そればかりは本人に言ってもどうしようもないのです。


しかし「じゃあもう何も言わないよ。一切言わない。放っておく」というのも良くありません。

本人はちょっと優しく背中を押してほしいのです。放っておかれるのは悲しいし余計やる気がなくなります。

やる気が出にくいがやる気がなくてもいいわけではない、本人は両方の気持ちが共存しています。

陰口を言われると悲しいし悔しい。

相手から見るとのろのろしててやる気がないように見えるかも知れないが、本人はこれじゃいけないと思っています。

本人も困惑しています。

これを分かりましょう。

「この患者は何に困っているのか」「どんな能力が残存しているのか」「どうありたいのか」

こうしたことを患者とコミュニケーションをとっていくことが大切です。


あと「怒ったところで回復が早くなることはない」ということも覚えておきたい。


高次脳は人それぞれです。

周りの人は柔軟に対応していくことです。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。



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帰りたい、けど帰れない。理想と現実の間で考える医療。

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脳卒中は突然やってきます。

突然だから本人は混乱しますし精神的に不安定になります。一見、脳卒中になった患者さんで特に精神的な動揺がないようにみえても、内心は動揺しているものです。「急性期病院だけで終わりじゃないんだ…」「まだまだ帰れないんだ…」「今後、どうしよう。今の仕事は…」など不安な内容は人それぞれ違うでしょうが、事の重大さは医療を知らない方でもなんとなく感じるものです。

脳卒中になった方は症状は人それぞれ違います。同じ脳梗塞でも患者によって症状は全然違います。

脳のダメージで頭がシャキッとしなかったり、見当識障害といってここがどこか分からなくなったり、今の自分の置かれている状況が理解できなくなったりすることがあります。

自分がどういう状況なのか、社会の中でどういう立ち位置なのか、患者自身の思いは?そしてこれらが理解しずらい状況に置かれた患者さんに、医療はどう向き合えばいいのでしょうか。




◆ 「帰りたい」その一心で病院から出ようとされるある患者さん。
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ある高齢女性、脳梗塞を発症して急性期病院から回復期病院に入院してきました。

彼女はたどたどしい言葉しか話すことができなくなりました。しかも高次脳機能障害もあり、自分の置かれている状況や病気について理解ができていません。どうしてここ(病院)にいるのか、どうして家じゃないところに毎日毎日いなければならないのか、理解できていません。食べたり、歩いたりすることはできます。


彼女は「帰りたい」と強く思っています。


何度も病院を出ようとします。でも勝手に病院を抜け出したり、退院をすることはできません。

退院した後の生活をどうするのかを決めておかないと退院はしませんから。しかも後遺症の高次脳機能障害や麻痺があり、片手が使えない状態です。だからリハビリをしに回復期病院に転院してきました。


「帰りたい」と涙を流す彼女の気持ちを考えると、荷物を袋に詰めて身支度をして勝手に帰ろうとする彼女を見ていると、人情が沸いてきます。「もう帰らせてあげたい」「訳が分からないまま病院にいるんだもんな。元の生活の場に戻りたいよな」本当は帰らせてあげたいんです、医療者も。

でも先ほど言ったように障がいがあるので、安心して退院できるようにサポート体制を整えてから退院しないと、後あと大変なことになるから、それが整うまで帰れない。。。


結局いつもスタッフになだめられて、病室へ戻されます。

当たり前といえばそうかもしれませんが、彼女にしてみれば、理不尽なことなのでしょう。


◆ 独居、身寄りがない、突然の病、これからの生活をどうするか。
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問題は「退院後の生活をどうするか?」に尽きます。

タイトルのような患者さんは、退院後、安心して暮らしていける場所はどこか?家族や病院スタッフ、福祉スタッフ等でカンファレンスをして意見を出し合います。

家族といっても、いなかったり、遠方であったり、実質面識がなく疎遠な関係で家族とは言えないような家族もいます。

司法書士や弁護士が後見人に選任される場合があります。


症状にもよりますが、施設に行くことになり、結局家に帰れない場合があります。


そうしたとき、「帰りたい!」と強く願っている患者の心とは逆の結果になります。


それでいいのか?!と思いますが、安全を優先した結果だからです。


患者の気持ちと現実を考えると、本当に心苦しく思います。私は本当は患者の気持ちを優先させたいんです。でも大人の事情でできない。いつも考えさせられることです。


◆ 本当ははやく退院させてあげたいんです。

病院は仮の場所。

その人にとってのホームに早く帰ることがなによりです。

しかし何度も言うように、もう戻れないこともたくさんあります。


本人が願ってもです。


病気がそうさせているのか、社会がそうさせているのか。

これで良かったのか、悪かったのか。


ハッピーエンドで退院できればそれでよし。

そうでない退院は複雑な気持ちになります。


みんなが治ればいいのですが。


病でなくても、老化があります。健康でもいつかは歩けなくなります。食べられなくなります。

長生きしたくないと思っていても、ぽっくり逝きたいと思っていても、救急搬送されて救急病院に入院したらもうそれで願いはかないません。延命します。家族が「もういいです」とならない限り延命します。人工呼吸器をつけられたりしたら、家族が「もういいです」といっても取りません。必ずしも「はい、これでもうまったくなにも医療行為をしません」というわけにもいきません。


患者ファーストといっても、患者の思いをそのまま現実の医療福祉に当てはめることはないということです。

本当は家に帰してあげたいと私は思いますが、こうした現実があるということです。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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左側半側空間無視という症状について。聞いたことありますか?

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脳は体のありとあらゆることをコントロールしています。

脳は外部からの刺激、感覚をキャッチしてそれが何であるのかを瞬時に判断します。

たとえば皮膚に針をチクッと刺すと、刺された皮膚から痛みの刺激が神経を通って瞬時に脳に届きます。針で刺された刺激は脳で「これは痛い!まるで針で刺されたかのような痛みだ」とどのような感覚なのかを判断します。

ここまで1秒もかかりません。

どのような感覚なのかは、過去の経験、知識から引っ張り出して「うん、これによる刺激だろう」と脳はどんな刺激かを判断します。

皮膚からの情報だけでなく、もちろん目からの情報も脳はそれが何かを瞬時に判断しています。

でもその判断をする箇所が壊れてしまったら…

目から入ってきたモノが判断できない、分からないということになります。

今回は「半側空間無視」という症状についてのお話です。




◆ 見えているが、それを脳が処理できないから結局見えていない。

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脳にダメージがあると、こんな不思議な症状が起きることがあります。

「空間無視」は、見たものを「無視」します。

これは右側、左側というように、見た空間の半分を「無視」します。


視覚というのは、目から入ってきた映像を後頭部にある後頭葉という脳の場所で処理します。

後頭葉は海馬や頭頂葉など他の脳部位にある経験や知識と結びついて、それが一体何なのかを判断します。

こわい蛇ならすぐに逃げなくっちゃいけませんし、車が猛スピードでこっちに向かってきていたら危険に備えてすぐに逃げれるように構えないといけません。

このように脳はただ単に物だけを認識しているだけでなく、もっと深く分析をして、それが安全なものか危険なものかなども同時に瞬時に判断しています。


そして空間無視は視力が悪くなって見えないのではなく、ちゃんと見えています。

目から視覚情報が脳にちゃんと届いています。視神経も通常問題ありません。

が、しかし。

視覚情報が届いた先の脳がダメージを受けているために、映像処理ができない。そのため、あたかも「見えていないように」なってしまっています。そして見えていないゆえに、無視しているかのような態度をとってしまいます。

この空間無視は圧倒的に左側が多いです。

それは右側の脳は左側しか認識しないためです。

ちょっとややこしいのですが、脳は中で神経がクロス(交差)していますので、右目からの視覚情報は左の脳、左目からの視覚情報は右の脳が担当します。

右の脳にダメージがあれば左目からの情報が処理できず、左側半側空間無視になります。

左の脳にダメージがあれば右目からの情報が処理できず、右側半側空間無視になりそうですが、ならないことが多い。これは左の脳は左右両方の視覚情報を処理できるからとされています。右目からの情報も弱いながらも処理して認識できる。だから、右側半側空間無視は少ないのです。あっても無視の程度は弱いことが多い。


というわけで、半側空間無視は圧倒的に左側が多いのです。


◆ 歩いたりすると頭をぶつけたりして危険なことも。

左側が見えないので、しかも注意がいかないので、もし左側に看板があるとか、物が置いてあるとかだとぶつかって危ないことがあります。

実際に左の額をぶつけてケガをした患者さんがいます。

なので、建物の中でも危ないのですが、外の世界はもっと危ない。

とにかく左側に注意がいきませんし、見えない状態ですから、溝にはまる、人にぶつかる、自転車に当たる、物に当たるなど、危険は家の中の比ではありません。


自動車の運転はやめた方がいいでしょう。


移動時の危険だけではなく、日常生活のいろんな場面で困ったことに遭遇します。

料理をしてて、左にある食材や調理器具に気付かない。(これも危ない)

ご飯を食べている時、左側に置いてある皿に気付かずそれだけ食べない。

普段から左手がどうなっているのか、いまどんな場所にあってどんな姿なのか、なかなか気にしないので左手を怪我するリスクがある。

左手に持ったカバンや袋を、すぐに落としてしまう。


というように、とにかく左側が無視されまくります。


◆ 周囲の理解があれば生きやすくなります。

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「そんなの本人が左側を気にしていればいいんじゃない?」

「常に本人が左側を意識するようにクセをつければいいんじゃない?」


と思うかもしれませんが、ことはそんなに簡単ではありません。

空間無視はなかなか手強い症状です。

注意障害でどうしても左側への注意がいきません。人によりますが、左側半側空間無視があり、頭脳はしっかりしている麻痺のない患者さんがいました。

しかし本人はなかなか左側へ注意がいきません。左にある物にぶつかったりします。

本人は「私は左が見えない。左側に注意がいかない。だからいつも左側へわざと大きく振り向いて注意しないといけない」と分かっていても、左側を無視します。

まるで左を無視するクセがついてしまったかのようです。


なので本人の努力もさることながら、周りの人の理解とサポートがあればより安全に暮らすことができます。

半側空間無視は、見た目では分かりにくい。

でもそういう症状があります。

ちょっとお皿を右側に寄せてあげるとかすれば、お皿に気付いてちゃんと食べられます。


その人の症状の程度を周りが理解すれば、本人はきっと暮らしやすくなるはずです。

このような症状があるんだということを、ぜひ知っておいてください。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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脳卒中リハビリテーションに必要なもの-時間とリラクゼーションと栄養について。

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脳卒中リハビリテーションに必要なことはたくさんあります。

たくさんありますが、今回は時間とリラクゼーションと栄養の3つについての話です。




◆ 回復には時間がかかるもの。だから待ちましょう。

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脳は神秘な臓器です。

以前は一度壊れた脳は修復しないと言われていました。ある機能をつかさどる部位にダメージが起きると、その機能は永遠に失われるという。

しかし最近の研究では、脳はダメージを負ってもなんとかしようとあれこれ方法をとろうとすることが分かってきました。


脳卒中リハビリテーションを行っている患者さんで何年かリハビリを継続している方なら、実感する人がいると思います。

去年の自分より今年の自分のほうが少しではあるけど回復していると。


脳がダメージを負うと、脳は「こりゃ大変だ!!」とパニックになりますが、段々と落ち着きを取り戻してきます。そして今までなかった新しい血管を作って伸ばしていき、新しい脳細胞を構築して失った機能の代わりを作ろうとします。


実際に、脳卒中で言語障害が出たにもかかわらず、時間が経過して、急にしゃべり始めるという例があります。その人の脳を画像診断すると、脳卒中でダメージを負った方の脳(言葉をつかさどる左脳)とは反対側の、右脳の中に新しい血管ができて血液の供給を受ける新しい組織が誕生し、言語刺激に反応して血流が増えるということがあったそうです。


脳は時間の経過とともに修復しようとします。修復できないようなダメージは、別の脳細胞がその代わりをしようとします。

これは個人差があり、どう変わっていくのかは確定的なことはいえません。

脳の血管には側副血行路というのがありまして、脳細胞につながる主たる血管がダメでも、別の細い血管がつながっていてそこから血液の供給を受けることができるようになっていきます。

脳画像で半分の脳がダメージを負う大きな脳梗塞を起こした患者さんなのに、不思議とちゃんと歩けるしこちらの言っていることが分かったり、ご飯もちゃんと食べられたりする方に会ったことがあります。

これほど大きな脳梗塞を起こしたにもかかわらずこのように意外と軽い?症状なのは、おそらく側副血行路がよく発達した方なのだろうと推測されます。ダメージの周りの毛細血管が発達して、うまく血液の供給がされているのでしょう。私は脳画像と症状がこんなにも合わないことに非常に驚いたものです。


リハビリは時間がかかります。

その長い時間をかけたリハビリはきっと成果がでるはずです。ただダラダラとリハビリをするよりも、目的意識を持って、まるでアスリートのように自分の高い目標を持って「必ず勝つんだ。メダルを取るんだ」という自分の課題がちゃんと分かっている方は、そうでない方よりも成果が出やすいです。

脳は自分で修復しようとがんばっていますが、それをより強化しようとするならリハビリを頑張るしかありません。


だから病院にもいます。ただ単にリハビリ入院をしてきた患者さん。何年も集中リハビリ目的で何度も何度も入院してきますが、一向に成果が出ない人がいます。

そういう人にはある共通した特徴があります。


自分でできるのに、自分でやらない人です。

自主トレをしない人です。

集中リハ目的で入院しているのに、空いている時間、歩けるのにずっと車いすやベッドの上にいてTVを見て、自主トレをしない人です。


◆ リラクゼーションと脳卒中

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脳卒中後は、筋肉の過緊張が起こりやすい。

たとえば足が異常に突っ張るとか、腕が固まってしまって肩が上がらないとか。

こうしたことから解放させるために、リラクゼーションが大切です。


リハビリを受けたことがある方ならよくお分かりと思いますが、セラピストは運動をする前に患者さんの関節を動かしたり筋肉等のマッサージをします。

脳卒中リハでは特にこうした緊張をほぐすということが大切です。


患者さんの筋のこわばり具合にもよりますが、立っているけど自分がしっかり立てているか分からないことがあります。また、何もないのに突然よろめくことがあります。次の動作をしたときにどういう危険な状況になるのか予測ができず怖くて一歩を踏み出せないことがあります。

こういうことがあると、よけい筋が緊張して硬くなってしまいます。


だからリラクゼーションは重要です。

傍目には気持ちいい事をしてもらっている「あん摩」のように見えるかも知れませんが、リハビリをする上で大切なことです。


◆ 脳の修復に栄養が必要です。

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ダメージを負った脳は修復のために栄養を欲しています。

栄養のあるバランスのとれた食事をしっかりとりましょう。


壊れた脳を修復するには、たんぱく質、糖分、脂肪、カルシウムが必要です。たっぷりとりましょう。


食が細いと筋肉の付きが悪くなります。私は元ボディビルダーでありますので、運動する人はしっかり食べることが大切であるといつも言っています。


それと興味深い話があります。

「脳卒中後うつ」というのがありまして、脳卒中になった後うつになりやすい傾向があります。脳卒中になった方の約30%がなるという報告があります。

そして、「肉を食べてトリプトファンを摂れ」という話です。

トリプトファンは精神安定作用のセロトニンの材料です。

肉、魚、乳製品、ブラックチョコレート、豆類、玄米、ブロッコリー、大根などトリプトファンを豊富に含む食材を食べることが、うつの予防になるというのです。


突然脳卒中になり、今までの自分の身体と違ってしまうことは精神的にも大きなダメージになります。

病気を受け入れられず鬱傾向にある方には、ぜひこうした食品を多く食べてもらいたいと思います。



時間・リラクゼーション・栄養

これらは脳卒中リハビリに大切なことです。

あせらず、でも着実に継続していきましょう。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。



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うまく話せないとはどういうことか。失語患者の傍にいて思うこと。

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失語という症状をご存知でしょうか。

失語は大きく二つに分かれます。

頭では分かっているけどうまく言葉が口から出てこない運動性失語。

まるで外国にいきなり瞬間移動したように言葉がわけわからんようになる感覚性失語。

タイプは違いますが、どちらも上手く対人コミュニケーションができなくなります。

多くは脳卒中によって起こる症状です。

このような患者さんのそばにいると失語という症状が患者に与える影響を考えさせられます。

ではどういう問題があるのでしょうか。




◆ 運動性失語では頭はしっかりしているのに、しゃべれない人と周りが敬遠する場合がある。

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このタイプの失語は、頭では相手の話す言葉は分かっていて理解もちゃんとしているのですが、自分が話すことが難しくなります。

「あ・・・、あ、あ、・・・・あのー、えー、あ・あ・」

というようにしゃべろうとするが言葉がなかなか出てこなくなります。

本人は一生懸命にしゃべろうしゃべろうとしますが、なかなか言葉が出てきません。

そのうち、あんまり出てこないもんで本人は話すのを止めてしまうこともあります。話すことがとても大変なので、諦めてしまうんです。

本当に気の毒です。


このように本人も話すことが大変でより一層話さなくなってしまうこともあります。さらに周りの人が勘違いして「この人は話すことができなくなった」と思って本人に話しかけることがなくなったり、「話すことができない」ということを「理解もできなくなった。頭も悪くなった」と勘違いして家事や散歩など何もかもやらせないようにしてしまうということがあります。


このタイプの失語では、ある程度はしゃべれるとか、まったくしゃべれないとか、人によって程度の差があります。

ですが、いづれにしても本人の中では今まで通り聞こえており理解しています。

このことを周りが理解することです。

できることまで取り上げないことです。


◆ 感覚性失語ではお互い会話が成り立たないことがあり、社会性が失われる場合がある。

このタイプの失語は本人から発せられる言葉がかみ合わないということです。

たとえばいきなりロシアに瞬間移動したような感じでしょうか。

ロシアに瞬間移動したあなたは日本語しか話せません。ですが周りはロシア語しか話せない人ばかり。文字もロシア語で書いてあるので読めません。

ロシア人もあなたが日本語しか話さないので何を言っているのか分かりません。

お互いしゃべっているのですが、双方が理解できないでいます。

流暢にしゃべるのですが、内容がさっぱり分からないのがこの失語の特徴です。


このタイプの失語では言葉だけでなく日常生活がうまくできなくなることも多い。

単に会話が成り立たないだけで日常生活が送れる人もいますが、会話だけでなく着替えるとかルールを守るとかエチケットを守るとかそういうことができなくなるパターンもあります。


感覚性失語では本人が話す内容がめちゃくちゃなことがあり、運動性失語よりも周りの評価が悪いことがあります。

実際にこういう症状の人と会話をしたことがある方ならお分かりと思いますが、本当に会話が噛み合いません。

私「おはようございます。今日の体調はいかがですか?」

本人「兄さんが行こうとして、今日は安いからよく寝て、帰りました」

このような会話になってしまいます。

まったく意味不明で噛み合いません。

これが感覚性失語です。


家に一人で置いておけないと家族から心配されるし、電話にも出られません。

近所の人がやってきても会話できませんし、むしろ「あの人は頭がおかしくなった」と思われて被害を被る可能性があります。宅急便や郵便の受け取りもできない可能性があります。


こうした社会性が失われてしまう可能性が非常に高いため、孤立する患者は多くいます。


◆ 働き盛りでは失職したり、再就職が難しい場合がある。

20代、30代と若い世代の人がこのような症状を持った場合、高齢者とは違った問題があります。

現役世代の中でも20代30代は介護保険が使えません。

障がい者として申請することになるでしょうが、生活の保障が手薄です。

高齢者のほうがむしろ手厚い保障制度になっています。

こうした問題は「谷間の障害」と呼ばれ、若い世代の社会福祉がいかに弱いかを物語っています。


私はこのような若い人がこうした症状になって家族が苦しんでいるのを見てきました。

30代の夫が脳卒中で失語になり、子どもが3人いて今後どうやって暮らしていこうか苦しんでいるのをみました。

まだまだ生きていかなくてはならない若い世代を支える制度を国民みんなが考えて創ってほしいと思います。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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ストレスと脳卒中の関係 - うまくストレスと付き合うには。

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「ストレスは体によくない」これは昔からよく言われていることです。

ストレスは多くの疾患の要因とされていますが、脳卒中の発症にも関係していると言われています。

これはストレスによって交感神経を刺激され、高血圧になる危険因子というわけです。

でもストレスが身体によくないとは分かっていても、生活していくうえでストレスをまったく無くすことは不可能でしょう。

ではストレスとどう付き合っていくのがよいのでしょうか。




◆ ストレスはいろんな生活習慣に影響を与える。
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ストレスがたまるとどうなりますか?

ある人は過食に走る。

ある人はイライラして怒りっぽくなる。

ある人はお酒に走る。

・・・・・

ちなみに私は過食に走ります(´Д`)

身体に悪いと分かっちゃいるけど、ストレスが溜まるとついつい食べ過ぎてしまいます。


このようにストレスは生活習慣に影響を与えます。

タバコの本数が増えるとかが分かりやすいかもしれません。

こうした悪い生活習慣をしやすくなってしまうことで、健康被害のリスクが高くなります。

糖尿病や高血圧や心疾患、そのなかに脳卒中もあるということです。


ですから、直接脳卒中になるというよりかは、過度のストレスによって生活習慣が悪くなり、それが長年続くことによって脳卒中などを引き起こすと考えられます。

ストレスは免疫系にも作用します。ストレスによって免疫が下がり、普段なら罹らない病気になってしまうこともあります。


なので脳卒中も怖いのですが、他のいろいろな病気を引き起こすリスクもあることを知っておいてください。


◆ やりたいことをやるのが本当は一番ストレスになりにくい。
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これができればすごいことです。

私たちはやりたくないことや出来れば避けたいことを日々やっているでしょう。

私は看護師になる前はビジネスマンでしたから、毎日顧客からのクレームや無理難題と格闘していました。

嫌なこともしないといけません。


しかし、ストレスは悪い事ばかりではありません。

適度なストレスは脳を刺激します。ストレスに強いのは、脳の前頭葉の強さでもあります。

ストレスに耐えて乗り越えたら、耐性がつきます。

たとえば上司や顧客から怒られたとします。その時はへこみます。そりゃそうですよね。

でも耐性がつくと、たとえへこんでも回復するのが早くなります。

へこんでも早く頭を切り替えることができるようになります。


日々のストレスから身を守るのは、やはりやりたいことをやるに限ります。

休日はできれば家でゴロゴロするのではなく、外に出て好きなことをするのが理想です。

「家でゴロゴロするのが趣味なんです」と言われれば私は何と答えていいか分かりませんが。


笑いもいいです。

笑いの効果は広く認められるようになりました。

笑いはストレスを解消し、免疫を高めると言われています。

近年は「笑い療法士」という資格まであります。



生きがいがある人はハツラツとしていますし、誰かの役に立っているとやりがいを感じている人もハツラツとしています。


ストレスをゼロにすることは難しいですが、できるだけ溜め込まないように、うまく付き合っていきたいものですね。





それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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梅雨の時期、くも膜下出血が多くなるという報告があります。

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くも膜下出血の特徴として、「トンカチで頭を殴られたような超激しい頭痛がある」というのがあります。

これはとっても有名な症状です。

とにかく、くも膜下出血はおそろしい病気です。

なぜなら死亡する可能性が非常に高いからです。仮に生き残ったとしても重度の後遺症が残る可能性が高く、なんとも怖い病気です。

ところでこのくも膜下出血は梅雨のこの時期、発症することが多くなるという報告があります。また秋口の台風の時期にも増えてきます。

怖い話ですが、無視できない話です。




◆ 血管にできた瘤(コブ)が破裂するのに気圧が関与している?

脳の血管のあるところに、まるでこぶとり爺さんのこぶのように、ぷくっと膨らんでコブができることがあります。そう、血管はこぶのように膨らむんです。

あちこちにしょっちゅうできるというわけではありません。

コブができないまま一生を終える人のほうが多い。できても、1個とか、それくらいです。たまに複数のコブが出来る人がいます。

このコブが破裂すると「くも膜下出血」となります。


いくらコブがあっても破裂していなければ、くも膜下出血とはいいませんし、違います。


コブはコブなので、少しずつ大きく成長してきます。いづれ大きさに耐え切れずに破裂して大出血を起こす可能性があります。この瞬間に、くも膜下出血となります。


冗談なしで本当に恐ろしい病気です。

多くの方が亡くなります。亡くなる場合は、多くの場合病院にたどり着く前に死亡します。

そうです。ほぼ即死です。


「あーー、なんか・・頭が痛い・・いたたたたあ!」

そのまま意識不明で倒れ込み、周りの人がびっくりして救急車を呼んでくれましたが、病院に着く前にすでに死亡ということはよくあることです。

このコブの破裂は確率論で予想しますが、難しいです。コブがあってもそのまま破裂せずに一生を終えることもよくあります。しかし破裂をしたら、死ぬ可能性があり、生き残っても重度の後遺症が残る可能性もあり、手術をしてコブをやっつけるかどうか、悩ましい問題です。

結局、主治医とよくよく話し合って決めることになりますが、こんな怖いものが知らぬうちに自分の頭の中にあるなんて、不気味な気持ちになります。


このコブ=脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)は通常自覚症状がなく、脳の血管を調べないと分かりません。時に、視力がおかしくなるということがあります、急に片方の視力が無くなるとか。

なので、脳ドックとか脳の別の病気を発症したときに、たまたま見つかったということが多いです。

それくらい普通の人は、自分の脳にあるのかないのか分からないものです。


このコブが破裂をする原因はまだはっきりと分かっていません。

ですが、いろいろと「これだろう」と考えられる要因があります。

一番は「高血圧」です。

その他に「遺伝」があります。家族にくも膜下出血を起こした人がいる場合、破裂する確率が高くなるというデータがあります。


そして季節(気圧)です。


梅雨のこの時期、くも膜下出血が増えるという報告があります。

あと秋口から増えてきます。


これはおそらく気圧が関係していると予想されています。

ちょうどこの時期は南の海で台風が多く発生してくる時期です。

そして低気圧が発生しやすい。この低気圧が関与しているのではないかと考えられています。


◆ 比較的冬に多いが、年間を通じて発症します。

私が前の職場、脳神経外科病院に勤めていた時、10月中旬ごろだったか脳外科の医師がつぶやきました。

「そろそろSAHの季節だなあ」

そうです。秋口からだんだんくも膜下出血が増えてきます。SAHはくも膜下出血のことです。


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この病気は、女性のほうが男性よりも発症数が多いことが分かっています。


また脳卒中のなかで、家族性がはっきりしているのがくも膜下出血です。

二親等内にくも膜下出血の患者さんがいると、そうした家族がない人に比べて、脳動脈瘤が2倍~3倍の高頻度で見つかるということがはっきりしています。

ですから、もし二親等内の家族にくも膜下出血の方がいらっしゃるのなら、ちょっと気になりますね。


◆ 「三分の一の法則」 - なぜくも膜下出血は恐ろしいのか。

くも膜下出血には「三分の一の法則」があります。

発症した、

三分の一が「死亡」

三分の一が「重度の障がいで社会復帰ができない」

三分の一が「社会復帰ができる」

という法則です。


「死亡」の三分の一に関していいますと、ほとんどの死亡は病院にたどり着く前に死亡してしまいます。つまり即死です。

死亡率は30~40%です。


もし生きて病院にたどり着けたら、しかも脳外科の手術ができる病院にたどり着けたらかなりの確率で「死亡は免れる」かもしれません。

とにかく「生きて」脳外の手術ができる病院にたどり着くことです。


とにかく常に「死」が付きまとう恐ろしい病気です。助かるには手術しかありません。しかも一刻も早く。

コブが破裂しても、その直後は脳圧が高くなり一旦出血は止まります。かろうじてかさぶたで止まっている状態です。いつまた再破裂するか分からない非常に不安定な状態です。一刻も早く手術でコブを塞ぐかして再破裂が起きないようにする必要があります。再破裂すればするほど、死にどんどん近づきます。

くも膜下出血は脳動脈瘤(コブ)が破裂して起こる病気ですが、手術をしてコブの再破裂を防ぐことを施しても、まだまだ越えなければならない山があります。脳血管攣縮、水頭症・・・

本当に恐ろしく、ややこしい病気です。奥深いなあといつも思います。

それゆえ、私はくも膜下出血が大好き(語弊があるかもしれませんが、とてもとても興味深いという意味です)で、医師とともに一人でも多くの患者さんを助けたいと思い、日々勉強に努めています。

回復期リハビリテーションに移った今は、そのような急患に接することはなくなりましたが、今までの経験はとても貴重だと感じています。

いつ、どこで、このような方に遭遇するか分かりません。

いつでも動ける自分でありたいと思っています。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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脳卒中患者さんは、座ることより「立つこと」のほうがやりやすい。その2

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脳卒中患者さんは、座位(座る姿勢)ができにくく、立位(立っている姿勢)のほうがとりやすい。

ということを前回、お話をしました。

今回は「人はそもそも座ることに適した仕様になっていない」というお話です。




◆ 人間はもともと直立二足歩行の仕様になっている。

そもそも人間は座ることに不向きな体の構造になっています。

立つとき、つまり直立の姿勢をとっているとき、骨盤は垂直に「立った」状態になるのですが、座っている姿勢ではどんなにがんばっても70°にしかなりません。

また、座位姿勢では「座骨結節」(おしりの骨)で体重を支えますが、この座骨結節の構造が特徴的です。

座骨結節は非常に狭い支持面積になっています。しかし平らで安定したものではなく、丸い構造になっています。

つまり、座っている姿勢では骨盤の角度や座骨結節の形状から、骨盤は簡単に後ろへ傾いてしまう傾向があります。

そのため、私たちが座るためには、骨盤を前傾させる運動をしないといけません。腰椎を前の方に曲げるようにする動きが必要になります。かつ、後ろに倒れないようにするために「股関節屈筋」(大腰筋)も重要な役割を担っています。


まとめると、

座位姿勢には、

・腰椎前弯と、後方へ傾くのを防ぐ股関節屈筋(大腰筋)が必要で、これが重要になります。


ただ何度も申し上げますように、脳卒中患者さんは、腹筋に力が入りにくくなりがちで、前のほうへ屈むことができにくくなります。しかし背部の筋肉は活動がしやすいため、どうしても座っていると後ろへ倒れそうになりやすいのです。


◆ 座るためには骨盤をまっすぐに立てる必要がある。

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そもそも人間は座ることより立つことの方が自然であるということをお話しました。

座る姿勢をとるとき、私たちは座骨結節という非常に狭い支持面積で体重を支えるからです。


では安定した座位をとるためにはどうしたらいいのでしょうか。

それは、「骨盤を安定させる」ことです。

各筋肉の微妙な働き、バランス、脳卒中患者さんはこれらができにくくなります。それを補うのにクッションをうまく使用します。

リハビリが進んでくると、筋肉が付いてきて発症初期に比べて、いろんな動作ができるようになってきます。

そうすると、クッションを再び調整していくことになります。

いずれにしても骨盤のアンバランスを補うために、クッションを使い姿勢を安定させます。


このクッションは各メーカーから多種多様なものがあり、セラピストがよきアドバイザーとなってくれます。


◆ 麻痺側の体幹、股関節の機能を高めていく。

クッションを使って骨盤のアンバランスを補うということをお話しました。

リハビリはそれでおしまいという訳ではなく、もっと安定して座ることができるように調整をしていきます。


安定して座るためには、麻痺がない側(健側)だけでなく、麻痺がある側(麻痺測)の動きを高めていく必要があります。

麻痺がある側でも、体重を支えなくてはいけません。

そのために麻痺側へ使える筋肉にアプローチをして、できるだけ体重を支えられるように調整をしていきます。

人間の各部位にはたくさんの筋肉と神経があり、メインの動きとなる筋肉は周りの筋肉たちと絶妙なバランスをとりながら動いています。

一つの筋肉だけで動作ができているのではなく、体の中ではいろんな筋肉がそれぞれうまく関わって、まるで一つの筋肉で動いているように見えるのです。


座る。普段は考えながらその動作をしないと思います。人間の体は無意識のうちに必要な動作をしてくれます。

再学習をするには、もう一度筋肉に「お前さんの動きはこういうときにするんだよ」「こう動くんだよ」と教えていくことから始まります。

うまくいかないことの方が多いでしょう。

長い練習時間が必要です。

しかし、発症から何年経ってもリハビリの効果はでます。

諦めずにやっていきましょう。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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脳卒中患者さんは、座ることより「立つこと」のほうがやりやすい。その1

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「脳卒中患者は、座ることはできにくいが立つことはできる」

これは、人によっては意外と思うかもしれませんが、脳卒中患者は座ることが難しいのです。

脳卒中患者にとって「座る」ことは、想像以上に難しい課題であります。立つことはできてもうまく座ることができない患者がいるほどです。

では、脳卒中患者にとって、「座る」こと「立つ」こととはどういうからくりなのか見ていきましょう。




◆ 座っている状態でおじぎをすると、前に倒れ込んでしまう。

寝ている状態から移動する(歩く)までの流れは、


①寝返り・起き上がり→②座る(座位)→③立つ(立位)→④移乗・歩行


となります。それぞれの動作の難易度はバラバラです。


私たちは「立つ」までにはたくさんの動作をしています。

どれか一つでもうまくできないと、転倒するリスクが高まります。

リハビリは、もう一度自分の動作の再学習です。

普段、まったく気に留めなかった何気ない動きを、マニアックに一つ一つ確認しながら動かしていく。

そういうめんどくさいことをやって、うまく再学習ができます。

患者としてリハビリスタッフに接したことがある方なら、セラピストから自分の動作を一つずつ修正しながら訓練をいていたことでしょう。

最初はなんでこんなに事細かに言われなくっちゃいけないんだと思ったかもしれませんが、麻痺があるとつい変なクセがついてしまうことがあります。

それを防ぐ為にセラピストは口うるさく言っています。


ただ、やみくもにできていないことばかりを指摘するセラピストもいます。

これはリハビリ学というより、コミュニケーション学、心理学、脳科学、教育学に関わる勉強不足といえます。

できないことをいろいろ指摘しても、そればかりじゃあいけません。

むしろやる気をなくし、回復のゴールから遠ざかってしまいます。

やはり、できたことを褒めて、共感し、次の小さな目標に向かっていくのが理想です。


◆ 振り子のようにバランスだけで座っている。

脳卒中患者さんはなんとか座ることができても、お辞儀をするとたちまち前に倒れ込んでしまいます。

これは、

脳卒中患者さんは、腹部の筋緊張が低くなることが多いです。

その結果として胸郭が挙上してしまいます。

反対に、背中の筋肉は重度の片麻痺患者さんであっても活動させることができます。


腹部の筋肉が十分に働かず、背中の筋肉だけが作用すると後ろに倒れてしまいます。

それを防ぐために骨盤を後傾させ、背中を丸めています。


つまり、「やじろべえ」のようにバランスをとっているのです。


◆ 単に体幹が弱いと思わないで。

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座っていてバランスを崩したり、座位保持が難しい患者さんに対して「体幹が弱い」と言われたことはありませんか。

「体幹が弱い」というのはざっくりとした言い方で、使いようによっては便利な言葉です。


お辞儀をすると「やじろべえ」のようにバランスをとっていたのが崩れ、倒れてしまいます。

一方で、背中の筋肉は活動させやすいので、手すりや介助者につかまれば、体幹を伸ばして立つ姿勢をとることができます。


立位はお腹や背中などの筋肉を複雑に使います。


まずはどの部位の力が弱いのか、修正が必要かを考えてリハビリをしていくことになります。

次回は座ると立つということに、もっと迫っていきます。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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CTとMRIの違い。脳を見るときの使い分けはこうする。

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分かっているようで、よく分かっていない。

CTとMRIの違い。そしてその使い分け。

・・・・・いや、いいです。なんだか難しそう。


・・まあ、そう言わずに。

大丈夫です。難しいことは言いません。

むしろこの超基本だけでも知っていると、知らないよりはるかに物知りです。




◆ CTは放射線を使う。MRIは磁気を使う。

CTはレントゲンのように放射線を使って体の中を調べます。

MRIは磁石の力を使います。

詳しい原理はここではパス。

まずは使うものが違うので、それぞれ注意しないといけないことがあるということです。


CTは放射線を使うので妊婦さんは絶対だめです。

CTは撮影時間が早く、大抵はあっという間に撮影が終わります。

音も静かです。


MRIは磁気の力がめちゃくちゃ強いので、金属製の入れ歯さえも必ず取ってから撮影です。

MRIは撮影時間がCTよりも長くだいたい15分~30分かかります。

その間は「ガンガン!キーン!キーン!」とまるで工事現場にいるような大きな音がします。

なので患者さんが途中で「もう無理。耐えられない!」と断念することもあります。


◆ 脳出血に強いのがCT。脳梗塞に強いのがMRI。

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CTは出血を写しだすことが得意です。

出血があればすぐに分かるのです。

なので、脳卒中を疑うときはまず頭のCT画像を撮ります。しかもCTは撮影時間がとても短く済みます。

CTでも脳梗塞が分かるのですが、これはある程度時間が経たないと写りません。

脳梗塞を発症したてのときは、まったく写りません。それこそ正常の脳画像として見えるほどです。

ちなみにCTで脳梗塞は黒く写ります。

先ほど述べたように、CTは出血を判断するのが得意なのです。

事故で頭を打ったとか、脳卒中疑いとかでまず頭のCTを撮る。それで白く写っているのがなければ、とりあえず脳出血はないな、ということになります。


脳梗塞と脳出血、見え方の違いCT→脳梗塞は黒く見える(但し超急性期は何も異常は写らない)。脳出血は白く見える。要は血は白く見える。
MRI→脳梗塞は白く見える(但し超急性期の時だけ)時間の経過とともに黒くなっていく。脳出血は黒く見える(DWEというモードで)


かたやMRIは発症したての超急性期の脳梗塞の判断を得意とします。

脳梗塞で救急搬送されてきた患者さんの頭のMRIを見ると、はっきりと白い箇所が分かります。

この白い箇所が脳梗塞です。

時間が経つと脳梗塞を起こしている箇所の白いのがだんだん薄くなってきて、最後は黒い穴があいているように見えます。

こうなってしまうと、ここの脳梗塞は完成されたものとなっている証拠です。

発症したての超急性期の脳梗塞だと、t-PAという薬を使うともしかしたら血流が再開して大事に至らずに済むかもしれません。


MRIのすごいところは、ただ単に刀でスパッと切ったような断面の画像だけじゃなく、いろいろな角度から体の中を見ることができるのと、いろんなモードがあって強調して見たいことを見れるということです。


◆ CTは頭蓋骨が写る。MRIは脳そのものが写る。

QLIFEさんのサイトから引用しています。https://www.qlife.jp/dictionary/item/i_080102000/

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CTとMRIの違いがよくわかります。

→の先に白くなっているところが脳梗塞です。

かたやCT画像では何も変な所は見られません。先ほど述べたように、超急性期の脳梗塞はCTでは何も写らないのです。正常な脳のように見えるというわけです。

ここではMRIが得意分野です。

超急性期の脳梗塞はMRIでは白くはっきりと写ります。これは分かりやすいですね。


それとCTでは周りに頭蓋骨がはっきりと白く写っています。

MRIは頭蓋骨はあまり分からず、脳そのものだけを写して出しています。

これもCTとMRIの違いです。

これを知っていると、この頭の画像がCTなのかMRIなのかが一目瞭然と判断がつきます。


CTとMRIはそれぞれ得意分野があります。

これを知っているとなぜ今CTなのか、MRIなのかがよく理解できますし、画像を見た時に異常を見つけやすくなります。

今や脳画像が読めるようになるのは、看護師やセラピストなども必須といえるでしょう。

もやは画像と看護、リハビリは避けて通れないようになってきました。


どうでしたか。

それほど難しくなかったでしょ?


それではではでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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