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「脳卒中患者は、座ることはできにくいが立つことはできる」

これは、人によっては意外と思うかもしれませんが、脳卒中患者は座ることが難しいのです。

脳卒中患者にとって「座る」ことは、想像以上に難しい課題であります。立つことはできてもうまく座ることができない患者がいるほどです。

では、脳卒中患者にとって、「座る」こと「立つ」こととはどういうからくりなのか見ていきましょう。




◆ 座っている状態でおじぎをすると、前に倒れ込んでしまう。

寝ている状態から移動する(歩く)までの流れは、


①寝返り・起き上がり→②座る(座位)→③立つ(立位)→④移乗・歩行


となります。それぞれの動作の難易度はバラバラです。


私たちは「立つ」までにはたくさんの動作をしています。

どれか一つでもうまくできないと、転倒するリスクが高まります。

リハビリは、もう一度自分の動作の再学習です。

普段、まったく気に留めなかった何気ない動きを、マニアックに一つ一つ確認しながら動かしていく。

そういうめんどくさいことをやって、うまく再学習ができます。

患者としてリハビリスタッフに接したことがある方なら、セラピストから自分の動作を一つずつ修正しながら訓練をいていたことでしょう。

最初はなんでこんなに事細かに言われなくっちゃいけないんだと思ったかもしれませんが、麻痺があるとつい変なクセがついてしまうことがあります。

それを防ぐ為にセラピストは口うるさく言っています。


ただ、やみくもにできていないことばかりを指摘するセラピストもいます。

これはリハビリ学というより、コミュニケーション学、心理学、脳科学、教育学に関わる勉強不足といえます。

できないことをいろいろ指摘しても、そればかりじゃあいけません。

むしろやる気をなくし、回復のゴールから遠ざかってしまいます。

やはり、できたことを褒めて、共感し、次の小さな目標に向かっていくのが理想です。


◆ 振り子のようにバランスだけで座っている。

脳卒中患者さんはなんとか座ることができても、お辞儀をするとたちまち前に倒れ込んでしまいます。

これは、

脳卒中患者さんは、腹部の筋緊張が低くなることが多いです。

その結果として胸郭が挙上してしまいます。

反対に、背中の筋肉は重度の片麻痺患者さんであっても活動させることができます。


腹部の筋肉が十分に働かず、背中の筋肉だけが作用すると後ろに倒れてしまいます。

それを防ぐために骨盤を後傾させ、背中を丸めています。


つまり、「やじろべえ」のようにバランスをとっているのです。


◆ 単に体幹が弱いと思わないで。

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座っていてバランスを崩したり、座位保持が難しい患者さんに対して「体幹が弱い」と言われたことはありませんか。

「体幹が弱い」というのはざっくりとした言い方で、使いようによっては便利な言葉です。


お辞儀をすると「やじろべえ」のようにバランスをとっていたのが崩れ、倒れてしまいます。

一方で、背中の筋肉は活動させやすいので、手すりや介助者につかまれば、体幹を伸ばして立つ姿勢をとることができます。


立位はお腹や背中などの筋肉を複雑に使います。


まずはどの部位の力が弱いのか、修正が必要かを考えてリハビリをしていくことになります。

次回は座ると立つということに、もっと迫っていきます。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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