脳卒中患者さんは、座位(座る姿勢)ができにくく、立位(立っている姿勢)のほうがとりやすい。
ということを前回、お話をしました。
今回は「人はそもそも座ることに適した仕様になっていない」というお話です。
◆ 人間はもともと直立二足歩行の仕様になっている。
そもそも人間は座ることに不向きな体の構造になっています。
立つとき、つまり直立の姿勢をとっているとき、骨盤は垂直に「立った」状態になるのですが、座っている姿勢ではどんなにがんばっても70°にしかなりません。
また、座位姿勢では「座骨結節」(おしりの骨)で体重を支えますが、この座骨結節の構造が特徴的です。
座骨結節は非常に狭い支持面積になっています。しかし平らで安定したものではなく、丸い構造になっています。
つまり、座っている姿勢では骨盤の角度や座骨結節の形状から、骨盤は簡単に後ろへ傾いてしまう傾向があります。
そのため、私たちが座るためには、骨盤を前傾させる運動をしないといけません。腰椎を前の方に曲げるようにする動きが必要になります。かつ、後ろに倒れないようにするために「股関節屈筋」(大腰筋)も重要な役割を担っています。
まとめると、
座位姿勢には、
・腰椎前弯と、後方へ傾くのを防ぐ股関節屈筋(大腰筋)が必要で、これが重要になります。
ただ何度も申し上げますように、脳卒中患者さんは、腹筋に力が入りにくくなりがちで、前のほうへ屈むことができにくくなります。しかし背部の筋肉は活動がしやすいため、どうしても座っていると後ろへ倒れそうになりやすいのです。
◆ 座るためには骨盤をまっすぐに立てる必要がある。
そもそも人間は座ることより立つことの方が自然であるということをお話しました。
座る姿勢をとるとき、私たちは座骨結節という非常に狭い支持面積で体重を支えるからです。
では安定した座位をとるためにはどうしたらいいのでしょうか。
それは、「骨盤を安定させる」ことです。
各筋肉の微妙な働き、バランス、脳卒中患者さんはこれらができにくくなります。それを補うのにクッションをうまく使用します。
リハビリが進んでくると、筋肉が付いてきて発症初期に比べて、いろんな動作ができるようになってきます。
そうすると、クッションを再び調整していくことになります。
いずれにしても骨盤のアンバランスを補うために、クッションを使い姿勢を安定させます。
このクッションは各メーカーから多種多様なものがあり、セラピストがよきアドバイザーとなってくれます。
◆ 麻痺側の体幹、股関節の機能を高めていく。
クッションを使って骨盤のアンバランスを補うということをお話しました。
リハビリはそれでおしまいという訳ではなく、もっと安定して座ることができるように調整をしていきます。
安定して座るためには、麻痺がない側(健側)だけでなく、麻痺がある側(麻痺測)の動きを高めていく必要があります。
麻痺がある側でも、体重を支えなくてはいけません。
そのために麻痺側へ使える筋肉にアプローチをして、できるだけ体重を支えられるように調整をしていきます。
人間の各部位にはたくさんの筋肉と神経があり、メインの動きとなる筋肉は周りの筋肉たちと絶妙なバランスをとりながら動いています。
一つの筋肉だけで動作ができているのではなく、体の中ではいろんな筋肉がそれぞれうまく関わって、まるで一つの筋肉で動いているように見えるのです。
座る。普段は考えながらその動作をしないと思います。人間の体は無意識のうちに必要な動作をしてくれます。
再学習をするには、もう一度筋肉に「お前さんの動きはこういうときにするんだよ」「こう動くんだよ」と教えていくことから始まります。
うまくいかないことの方が多いでしょう。
長い練習時間が必要です。
しかし、発症から何年経ってもリハビリの効果はでます。
諦めずにやっていきましょう。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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