誰でも褒められるとうれしいですし、叱られると悲しいものです。
ずっと褒められるといいのですが、そうもいきません。
やる気と根気という言葉がありますが、仕事や勉強に限らず、リハビリをする患者さんに持っていただきたいマインドです。
しかし、年中やる気に満ちているということは難しく、時には怠け心が出ますし、どうもやる気が出ない日もあるでしょう。
今日のリハビリスタッフが気に食わないということもあるかも知れません。
これが一時的ならまだいいのですが、やる気がなくなって無気力になると、話しが難しくなります。
無気力になると、何でもないことすら、やらなくなってしまうからです。
無気力について興味深い実験があります。
◆ 「カマス理論」という「諦め」の実験。
カマスという魚をご存知でしょうか。
人を襲うこともあるという気性の荒い魚で、小魚などを餌として食べています。
水槽にカマスを入れ、その中に小魚を入れるとカマスは食べようと襲い掛かります。
ではその水槽に透明の板で間仕切りをして、カマスと小魚を別々に分けます。そうするとカマスは小魚を食べようと何度も何度も透明の間仕切り板に当たります。でも何度も体当たりしても食べることができないので、結局カマスは食べることを諦めてしまい、間仕切り板を外しても小魚を食べようとしなくなります。
食べようと思えば食べることができるのに、食べようとしない。
カマスは何度も食べようとしましたが、結局すべて失敗に終わり自分の力では食べることができないと分かると、できるのにしなくなるのです。
もう一つ、興味深い実験があります。
◆ 「セリグマンの犬」と呼ばれる実験
アメリカの心理学者:セリグマンの行った実験です。
壁が高い部屋に犬を入れて、床に電流を流します。すると犬はびっくりして電流から逃げようと飛び上がります。しかし、これを何回も続けていくと、飛び上がっても壁が高くてここから逃げられないと学習した犬は、飛び上がらなくなります。
これを学習したあとに、壁がとても低い部屋に犬を移して電流を流します。今度は壁がとても低く飛び越えられるにもかかわらず、逃げられないことを学習した犬は飛び上がろうとしません。逃げられる環境にも関わらず、逃げることを諦めたのです。「どうせ逃げられない」と。
これを「学習性無力症」といいます。
失敗が続くと、挑戦したり今度こそ成功しようとして行動する気力すらなくなり、無気力になります。
セリグマンは、
「回避不能な嫌悪な刺激にさらされ続けると、その刺激から逃れようとする自発的な行動が起こらなくなる」
としています。
これは私たちの生活にも当てはまります。
ブラック企業や社畜といわれる状況に置かれている人は、これに当てはまりそうです。
「ブラック企業なら、自殺するまで働かずに辞めたらいいのに」
と言う人がいますが、強烈なストレスにさらされていると、自ら逃げようとしなくなる。
また、少しの努力でこの劣悪な環境から逃げられるのに、自ら行動を起こさなくなる。
これはまさに、今までの経過から、逃げたくても逃げられないと刷り込まされた結果、逃げることを諦めてしまったのです。
虐待もそうです。
職場でいろいろ提案しても、一向に採用されないと「どうせまた提案してもダメに決まっている」と提案すること自体を諦めてしまうようになってしまいます。
これはいろんな場面で起こり得ることです。
◆ だからこそ、成功体験は大切にしたい。
このように、やってもやっても失敗ばかりだと、そのうち「やってもどうせ逃げられない」「また失敗するに決まっている」と、しなくなるんです。
無気力になります。
これは上記の実験例にあげたように、有名なことです。
これを避けるには、成功体験をさせてあげることです。
リハビリでも同じことがいえます。
具体的には、自分の限界をほんのちょっとだけ超えるようにサポートする。
10mを歩くのに、今まで90秒かかっていたとします。
今度は10mを88秒で歩けました。
これをしっかり褒めましょう。
今までの限界を突破するとドーパミンを出してそれが前頭葉に行き、やっていたことが強化されます。
この例でいうと、10mを88秒で歩けたということが強化され、次もまたこの感動を味わいたいと思い、脳がそのときと同じ指令を出します。
成功したとき、脳はドーパミンをドパッと出します。
これは報酬系とよばれる物質で、ドーパミンがでると「うれしい」とか「楽しい」とかの気持ちになります。
そして、脳はその時やっていた行動を強化します。
たとえば、好きな人が自分を見てほほ笑んでくれた。そしたら私の脳はドーパミンを出します。だからまたあの人に会いたいと思うのです。またほほ笑んでもらおうと行動するのです。
こうした心理学、脳科学をうまく利用することで、相手のモチベーションを下げずに関わることができるようになります。
心理学とか脳科学というと、なんだか難しそうに思いますが、実は私たちの生活にとっても身近な学問なのです。
小難しいことはさておき、失敗ばかりを指摘していると、相手は「セリグマンの犬」のように無気力になってしまうかもしれません。
要はコミュニケーションを大切にしているかどうかです。
一歩的に自分の考えを相手に押し付けていないか。
相手のやっていることをけなしてばかりいないか。
コミュニケーションは双方の意見や考え、思いを投げて受け取る、キャッチボールのようなものです。
ボールを適切に投げないと、悪意しか相手に伝わりません。
リハビリにモチベーションは大切です。
仕事や勉強もそうですよね。
相手のモチベーションをあげられるのは自分の言葉なんだと思って、継続可能なリハビリを目指していきたいですね。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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私もリハビリ室で最も違和感を感じてきたのがこれです。セラピストからは欠点の指摘が大半です。が、患者同士はいい所見つけて褒め合うということ結構やるのです。コミュニケーションをとって励まし合てるわけですね。
meganesaru707さん>>ただでさえ患者さんは突然の体の変化に戸惑い、動揺しているのに、気遣いが大切になると考えます。
リハビリはできたことが純粋にうれしいものです。そこを大切に伸ばしていきたいですね。