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失語という症状をご存知でしょうか。

失語は大きく二つに分かれます。

頭では分かっているけどうまく言葉が口から出てこない運動性失語。

まるで外国にいきなり瞬間移動したように言葉がわけわからんようになる感覚性失語。

タイプは違いますが、どちらも上手く対人コミュニケーションができなくなります。

多くは脳卒中によって起こる症状です。

このような患者さんのそばにいると失語という症状が患者に与える影響を考えさせられます。

ではどういう問題があるのでしょうか。




◆ 運動性失語では頭はしっかりしているのに、しゃべれない人と周りが敬遠する場合がある。

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このタイプの失語は、頭では相手の話す言葉は分かっていて理解もちゃんとしているのですが、自分が話すことが難しくなります。

「あ・・・、あ、あ、・・・・あのー、えー、あ・あ・」

というようにしゃべろうとするが言葉がなかなか出てこなくなります。

本人は一生懸命にしゃべろうしゃべろうとしますが、なかなか言葉が出てきません。

そのうち、あんまり出てこないもんで本人は話すのを止めてしまうこともあります。話すことがとても大変なので、諦めてしまうんです。

本当に気の毒です。


このように本人も話すことが大変でより一層話さなくなってしまうこともあります。さらに周りの人が勘違いして「この人は話すことができなくなった」と思って本人に話しかけることがなくなったり、「話すことができない」ということを「理解もできなくなった。頭も悪くなった」と勘違いして家事や散歩など何もかもやらせないようにしてしまうということがあります。


このタイプの失語では、ある程度はしゃべれるとか、まったくしゃべれないとか、人によって程度の差があります。

ですが、いづれにしても本人の中では今まで通り聞こえており理解しています。

このことを周りが理解することです。

できることまで取り上げないことです。


◆ 感覚性失語ではお互い会話が成り立たないことがあり、社会性が失われる場合がある。

このタイプの失語は本人から発せられる言葉がかみ合わないということです。

たとえばいきなりロシアに瞬間移動したような感じでしょうか。

ロシアに瞬間移動したあなたは日本語しか話せません。ですが周りはロシア語しか話せない人ばかり。文字もロシア語で書いてあるので読めません。

ロシア人もあなたが日本語しか話さないので何を言っているのか分かりません。

お互いしゃべっているのですが、双方が理解できないでいます。

流暢にしゃべるのですが、内容がさっぱり分からないのがこの失語の特徴です。


このタイプの失語では言葉だけでなく日常生活がうまくできなくなることも多い。

単に会話が成り立たないだけで日常生活が送れる人もいますが、会話だけでなく着替えるとかルールを守るとかエチケットを守るとかそういうことができなくなるパターンもあります。


感覚性失語では本人が話す内容がめちゃくちゃなことがあり、運動性失語よりも周りの評価が悪いことがあります。

実際にこういう症状の人と会話をしたことがある方ならお分かりと思いますが、本当に会話が噛み合いません。

私「おはようございます。今日の体調はいかがですか?」

本人「兄さんが行こうとして、今日は安いからよく寝て、帰りました」

このような会話になってしまいます。

まったく意味不明で噛み合いません。

これが感覚性失語です。


家に一人で置いておけないと家族から心配されるし、電話にも出られません。

近所の人がやってきても会話できませんし、むしろ「あの人は頭がおかしくなった」と思われて被害を被る可能性があります。宅急便や郵便の受け取りもできない可能性があります。


こうした社会性が失われてしまう可能性が非常に高いため、孤立する患者は多くいます。


◆ 働き盛りでは失職したり、再就職が難しい場合がある。

20代、30代と若い世代の人がこのような症状を持った場合、高齢者とは違った問題があります。

現役世代の中でも20代30代は介護保険が使えません。

障がい者として申請することになるでしょうが、生活の保障が手薄です。

高齢者のほうがむしろ手厚い保障制度になっています。

こうした問題は「谷間の障害」と呼ばれ、若い世代の社会福祉がいかに弱いかを物語っています。


私はこのような若い人がこうした症状になって家族が苦しんでいるのを見てきました。

30代の夫が脳卒中で失語になり、子どもが3人いて今後どうやって暮らしていこうか苦しんでいるのをみました。

まだまだ生きていかなくてはならない若い世代を支える制度を国民みんなが考えて創ってほしいと思います。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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