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脳卒中の超基礎シリーズのカテゴリ記事一覧

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カテゴリ:脳卒中の超基礎シリーズ

脳卒中が多い県は東北に集まっている ⑵

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脳卒中死亡率が高い県は東北地方に多く、秋田県は以前から特に高い地域です。

さて、こうした事態に対して秋田県ではどのような対策をしているのでしょうか。

◆ 減塩キャンペーンを実施


秋田県では、高血圧を減らすために、県や医師会が中心となって減塩キャンペーンを実施しました。

時はまだ高度成長期前のことです。まだまだ今のような十分な知識や制度がなかった時代です。

その後、日本経済の発展にともなって栄養状態は改善され、さらに1961年にスタートした国民皆保険制度によって多くの人々が高血圧治療を受けられるようになりました。


こうした取り組みによって、総合的に、脳卒中の発症、とくに脳出血が減少しました。

これは秋田県で突出したのですが、日本全体にも当てはまり、脳卒中の死亡率を低下させました。


◆ これからも脳卒中発症状況は増えると推測されている。


日本の脳卒中死亡率は、1960年代中頃をピークに、その後大きく低下しました。

1980年ごろにはガンによる死亡率、1985年ごろには心臓病による死亡率が脳卒中よりも高くなりました。

現在は、肺炎が脳卒中を抜いています。

医療の発展と国民の意識の向上により、脳卒中死亡率は減少しています。


しかし、秋田県では、現在でも脳卒中による死亡率が心疾患よりも多い状態が続いています。


秋田県では、1973年から脳卒中の全県登録が開始され、1983年からはCTによる画像診断に基づいた登録が行われていますので、脳卒中の発症状況がかなり正確にとらえられています。

1990年代には横ばいになっていたものの、2000年代にはいって、むしろ発症数が増加している傾向があります。


これは人口に占める高齢者数が増加したためです。

2025年まで脳卒中発症は増加すると推計されています。


◆ 秋田県に限らず、日本は高齢化により脳卒中は減少しない

秋田県の高齢化率は全国でも二番目に高いため、こうした傾向が目立ちます。日本全体においても、これから高齢化がますます加速していくことは間違いありません。

今後しばらく、脳卒中発症は増えることがあっても減少することはありません。


しかも脳卒中は再発しやすい。

一度発症した方が、二度三度と発症するのをたくさん見てきました。

再発すればするほど、症状がひどくなります。


国民一人一人が発症および再発予防について、よく知っておく必要があります。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました





脳卒中が多い県は東北に集まっている ⑴

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「脳卒中の超基礎シリーズ」で今回はちょっと豆知識です。

全国都道府県で脳卒中になりやすい県とそうでない県があります。


脳卒中はどこの都道府県でも起こりますが、特に集中している地域があります。

それは、東北です。


福島県、青森県、岩手県、秋田県、とくに秋田県は昔から脳卒中が多い地域として知られています。

ではなぜ東北に脳卒中が多いのでしょうか。

◆ 特に秋田県では塩分摂取量が多い


東北地方は昔から、脳卒中死亡率が高い地域として知られています。そのなかでも秋田県が最も高いのです。それを研究するために1969年に秋田県立脳血管研究センターが設立されました。


秋田県は、塩分摂取量が非常に多く、1960年以前は1日の食塩摂取量は25gでした。

厚生労働省が2014年3月に発表した「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書によれば、18歳以上の男性は1日当たり8.0グラム未満、18歳以上の女性は1日当たり7.0グラム未満という目標量が定められています。

日本高血圧学会減塩委員会は、高血圧予防のために、1日6グラム未満という制限を勧めています。


2012年時点での日本の成人1日あたりの食塩平均摂取量は、男性で11.3グラム、女性で9.6グラムと発表されています。


こうしてみると、秋田県の25gはいかに多かったかが分かります。

現在でも秋田県の食塩摂取量は12gを超えており、まだまだ日本の基準を超えています。

これが高血圧の最大の原因となっていました。

◆ 秋田県は低コレステロールの人が多いため、血管が破れやすい。

また、当時の秋田県のもう一つの脳卒中危険因子は、低コレステロールです。

コレステロールはなんだか悪い者のような印象を持っている方がいるかもしれませんが、それは一方的な考えです。おそらく高コレステロールが目立ってメディアに出るからだと思いますが、たしかに高コレステロールは動脈硬化を促進します。

しかし、その反対に低コレステロールは血管の壁をもろくします。

コレステロールは血管の壁の材料となるからです。


さらにこの地方は酒どころで、日本酒の摂取量が多いこともあげられます。

ちなみにアルコール摂取量日本一は鹿児島県ですが、東北地方の県も非常にアルコール摂取量が多いのです。


こうした要素が重なって、脳卒中、特に脳出血が非常に多い地域になっています。

しかも脳出血は重症が多い。これが脳卒中死亡率を高めています。


では次回は、こうした事態に対して、どのような対策をしているのかを見ていきます。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました







谷間の障害と呼ばれる高次脳機能障害

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高次脳機能障害はそとから見えにくい障害です。

高次脳機能障害についてはこちら⇒ 「高次脳機能障害を分かりやすく書いてみました」


谷間とは、他の障害に比べて福祉の手から離れて、うまく救いの手が差し伸べられることが少なかったという意味です。

なぜ高次脳機能障害はこうした谷間の障害と呼ばれるようになってしまったのでしょうか。


◆ 高次脳機能障害は見た目では分からないことがある

何かをしてみて、何だか他の人と違うなあと思うことがあり、パッと見では症状があることが分からないことがあるのです。

病院では脳神経外科、神経内科も診ますが、精神科が主になって診ます。入院中も精神科へ他科受診をすることはよくあります。


たとえば高齢者でしたら、失礼ながら「もしかして認知症?」と勘づくことはあります。でもおかしな言動が必ずしも認知症とは限りません。高次脳機能障害かもしれないのです。

また20代、30代と若い人の場合、さすがに認知症だとは思わずに、発達障害者か精神病患者に勘違いされることもあります。

こうした誤解は実際にあります。

一般市民からみて高次脳機能障害を正しく判断することは大変難しいことです。

それゆえに福祉の手を借りることが遅くなったり、不快な言葉を浴びせられたりして、本人やご家族がつらい思いをされるのです。

高次脳機能障害の症状はほんとうに多肢にわたります。

そのバリエーションの多さから、100人高次脳機能障害者がいれば100通りの症状があるといわれるほどです。

高次脳機能障害は専門の医師でないと診断を誤ったり、適切な治療やリハビリができないほど専門性が高い領域といえます。

◆ 精神保健福祉手帳の申請ができることを知ってほしい

昔のCTやMRIがなかった時代には、脳卒中の後遺症である高次脳機能障害は精神の障害として扱われていました。

高次脳機能障害が精神保健福祉手帳の対象とされ続けていたため、急性期病院の医師たちにはこの手帳のことを周知できていませんでした。急性期では治療優先ということもあり、あとは回復期に任せるというような風潮もありました。


身体障碍者手帳が急性期の医師によって多く発行されたことに対して、精神保健福祉手帳は発行ができることすら急性期の医師に周知できず、制度が形骸化されていました。


したがって制度はあっても運用がされていないとして「谷間の障害」と呼ばれたのです。


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交通事故や転落事故等による高次脳機能障害はもっと深刻です。

介護保険制度がありますが、これは脳卒中などでは40歳以上から適応となります。

ということは、事故などの頭部外傷は65歳からでないと介護保険の適応ではありません。40歳が事故を起こして頭部外傷になったら?20歳がなったら?

そうです。もしそれが原因で介護が必要になっても、介護保険が受けられないということになります。

このように頭部外傷による若者の高次脳機能障害は、制度から取り残された状況になってしまいました。



厚生労働省はこのような状態を重く受け止め、「高次脳機能障害支援事業」を展開しました。

その結果、現在では高次脳機能障害者への精神保健福祉手帳を、救命医やリハビリテーション担当医でも記載・発行ができるようになりました。


しかし未だに多くの病院では高次脳機能障害に対して精神保健福祉手帳を発行していません。

脳卒中や頭部外傷で回復期リハビリテーション病院を選ぶ際には、高次脳機能障害の診断が可能か、精神保健福祉手帳への対応をしているか、ということを事前にお調べください。


こちらの記事もご参考に⇒ 「高次脳機能障害と認知症の違い」


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


分かりやすい脳梗塞の治療 ⑵

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「分かりやすい脳梗塞の治療」第二弾です。

今回はt-PAという薬をつかった治療法です。

それでは始めます。

◆t-PAという血栓を溶かす治療薬

最近よく聞く治療法として、t-PAという薬をつかった血栓溶解療法があります。血栓を溶かしてしまう治療です。

脳の血管に詰まった血栓が溶ければ、血流が戻っていかにも治りそうな治療です。


t-PAは血栓を溶かすplasminという分子を活性化させる薬で血栓を溶かしてしまいます。


脳の血管が詰まると、その先の脳神経細胞への血流が途絶えて細胞はダメージを受けます。このダメージは程度があります。完全に血流が途絶えた神経細胞はものの数分で死にますが、ほかの血管から血流が若干残っている神経細胞は死には至らず、機能を停止しているまるで冬眠のような状態になります。これを「ペナンブラ」といいます。

ペナンブラは死にそうでまだ死んでいない脳の部分です。数時間以内に血流が戻れば生き残ることができます。もちろん長時間の血流が途絶えるとそのまま死んでしまいます。

t-PAの血栓溶解療法の目的は、このペナンブラを救うことなのです。


◆ 発症から4.5時間以内の治療が有効です

以前は発症してから3時間以内とされていましたが、いまでは4.5時間以内なら有効とされています。

t-PAのしおう使用までに与えられた4.5時間という時間は、長いように聞こえるかもしれませんが、現実はとても厳しいのです。


t-PAは血栓を溶かしますが、脳出血を起こすこともある、実はとてもリスクの大きい治療です。

うまくいったときのメリットは大きいのですが、とても危険を伴う治療となりますから、開始までに本人や家族に充分な説明をして、同意をもらわなければなりません。

またこの薬を使用できない病気や今飲んでいる薬の種類など、適応の除外基準がいろいろあるため、それらをしっかりと情報収集して評価し、確認をするのに1時間以上かかることがあります。

そうすると発症後3.5時間以内には病院に搬送されないと間に合わなくなります。

倒れているのを発見された場合、いつが発症か分かりません。いつ倒れたのかもわからないからです。


日本では脳梗塞全体の2~3%です。もしかしたら最新のデータではもう少し高いかもしれません。

t-PAは高度な技術がある脳外科の病院で行われるので、脳外科がある病院ならどこでもやってくれるというわけではありません。


もう一度言いますが、t-PAは脳出血を起こす可能性が高いため、とてもリスクのある治療です。

適応基準も厳しく、すべての脳梗塞患者さんに使えるというわけではありません。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

分かりやすい脳梗塞の治療 ⑴

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「分かりやすい脳梗塞」の続編で、今回は脳梗塞の治療についてです。

どういう治療をおこなうのかを知るいい機会にできればと思います。

ではさっそく始めましょう。


◆ 基本は薬物治療

基本的に脳梗塞は点滴および内服の薬物治療が主役となります。

どういう薬を使うかというと、抗血小板薬、抗凝固薬、脳保護薬とよばれる薬を使います。

このほかにもたくさんの種類の薬がありますが、まずはこれくらいでいいと思います。「超基礎シリーズ」ですからね。

脳梗塞ですから、血管が詰まっているんですね。またはものすごく血液が通りにくい状態です。血液を通してやらないといけません。

抗血小板薬と抗凝固薬の違いは、これまた細かく言うと難しくなるのですが、簡単にいうと血の固まり、血栓というのが血管内にできて血管が詰まります。

この血栓は大きく2種類あります。固まりの成分が違うと思ってください。成分が違うので、溶かす薬の種類も違うというわけです。

この抗血小板薬と抗凝固薬を使うことで、血を固まりにくくします。

固まりにくくすることで血栓が大きくならないようにするのが基本的な作用です。さらに血管を開いて血流を増やす効果も持つものもあります。


脳保護薬は、神経の毒となる『フリーラジカル』という物質を抑制して、脳の保護に働くといわれています。

フリーラジカルは脳を酸性にします。この薬は抗酸化作用があるということです。


脳保護薬は入院中だけ、抗血小板薬は退院してからもずっと飲み続けることになります。


◆ これ以上悪くならないようにするための治療

脳細胞は死んでしまうとそれはもう復活しません。つまり脳梗塞が起こり脳細胞が死んでしまった箇所は、そこの部分の復活はないのです。

通常の脳梗塞の薬物治療は、症状を改善するというより、これ以上さらに悪化するのを防ぐための治療になります。

集中治療室に入っているとき、たくさんの点滴や内服薬があり、いろんな検査もしますが、結局のところ、脳梗塞を「治す」治療はしていません。していそうに感じるかもしれませんが、していません。

しているのは、「これ以上悪くならないように」しているのです。


脳梗塞の治療について知ることは、ご本人やご家族に脳梗塞の方がいらっしゃったら、病院でどのような治療をされていたのかを知る機会になります。

発症直後は動揺し、医師の話があまり頭に残らないことも多いですから、振り返ることができればと思います。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

分かりやすい脳の基本 ⑶

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さて今回も脳の神秘に触れていきましょう。

「分かりやすい脳の基本」、第3弾です。


◆ 脳はとても贅沢な器官

脳は体のなかでもっとも血流が豊富な器官の一つです。体重のわずか1.5~2%程度の重さにもかかわらず、脳は全身へ流れる血液のおよそ15%をも必要としています。

全身で消費する酸素の20%ほどを脳が使っています。

ブドウ糖は80%が消費されています。

これほどの大量のエネルギーを必要としているのは、非常に多くの神経細胞やグリア細胞が集まっているからです。

(神経細胞・グリア細胞)→「分かりやすい脳の基本 ⑴」

大きさの割にはものすごい量の燃料を必要とし、非常に燃費の悪い器官といえます。


常に大量のエネルギーを必要としている脳は、補給が途絶えるとすぐに死んでしまいます。

エネルギー消費が非常に多く、ものすごい贅沢な組織ですよね。

それだけのエネルギーを脳は貯めておくことができません。そうです、スタミナがないのです。

◆ 脳は食わず嫌い

たとえば血流が完全に途絶えて補給が断たれると、ものの数分で脳の細胞は死んでしまいます。およそ20秒前後で酸素が底をつき、5分ほどで糖などのエネルギー源も底をつくからです。心臓が止まったときなるべく早く心臓マッサージをはじめないと助からないのはこのためです。


このスタミナのなさの大きな要因は、脳の神経細胞が食わず嫌いな性質を持っていることです。

脳がエネルギーとして使えるのはブドウ糖だけです。

体の細胞のエネルギー源として最も一般的なのはブドウ糖などの糖類で、他にも脂肪やアミノ酸などもエネルギーにできます。

しかし脳はブドウ糖しか食べません。とっても食わず嫌い王なのです。

◆ 脳は薬剤などが入ってくるのを選ぶ

脳はブドウ糖しか消費しない、つまり脳細胞のなかに入ってこないと言いました。

これはブドウ糖に限らず、薬剤などあらゆる物質についてもそうです。

脳には「血液脳関門」というバリアーがあって、血管から脳へと物が通行するのに制限をかけています。

大きさや性質によってはこのバリアーを通れません。

脳はさまざまな化学物質から保護しているんですね。

でも通れる物質もありますから、なんでもブロックしているわけではありません。

◆ 一度死んでしまった脳神経細胞は、基本的にはもう元に戻りません

脳への酸素やエネルギーの供給が断たれ、一度死んでしまった神経細胞は、基本的にはもう元に戻りません。

幼い小児の場合には、特別に脳のほかの部分が埋め合わせをするような形で回復することもありますが、大人で脳の一部が死んでしまった場合、それによって失った機能が回復することはまずありません。

また、失われた脳の神経細胞を再生させるという壮大な治療法の研究は進んでいますが、いまだに実用化への道は遠いようです。

脳は実にもろく、かけがえのないものです。

◆ 脳のダメージによる機能回復について

以前は、機能の回復は数か月から半年が限度で、そのあとはピークに達し、それ以上の回復は得られないと考えられていました。

ところが、脳の可塑性が機能回復に影響していることがわかり、半年以上経っても機能回復の可能性が期待できることが分かってきています。


脳は極端な食わず嫌いで、スタミナが無く、一度死んだ細胞は元に戻りません。

しかし、リハビリテーションにより長期的な継続をすることで、機能回復する可能性があることが分かっています。「脳卒中が発症してから6ヶ月だ・・・もうリハビリやっても無駄だろう。」というのは昔の話です。勉強不足です。いまは違います。だからあきらめずにリハビリを継続することが大切なのです。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

分かりやすい脳の基本 ⑵

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前回のお話では、脳はかけがえのない、神秘的な臓器と言いました。

分かりやすい脳の基本についての話、第二弾を進めていきます。


◆ 脳はそうとう柔らかい

脳はよく豆腐かプリンのようだと例えられるように、そうとう柔らかいのです。それくらい柔らかいので当然もろい。脳外科の医師の言うには、少しとがったもので押せばズブズブと中に入ってしまうほどだそうです。

こんなに重要な臓器がなぜこれほどまでにもろいのか、とても不思議ですよね。

逆にとても頑丈ならよかったのにと思うのは私だけでしょうか。


生きた人間の脳に実際に触れられるのは脳外科医ですが、実は私は亡くなった方の脳を触ったことがあります。

某超有名大学医学部に研修にいきまして、そこで「検体」の脳を持たせていただいたことがあります。

なんとも不思議な感じがして、あまりにそっと持ったのでどれほど柔らかいのか分かりませんでしたが、あのときの神秘的で緊張した感じは今も覚えています。

◆ 脳は水のなかにいる

脳の周りはとても硬い頭蓋骨でおおわれています。脳はとても柔らかいので、直接この硬い頭蓋骨の中にはいっていると脳が傷ついてしまいます。ではどうするか?

実は脳は頭蓋骨のなかで水に浮いたようになっています。

頭蓋骨の内側には硬膜(こうまく)といって硬い膜があります。そのなかに充満している髄液(ずいえき)の中に脳が浮いているのです。

水に浮かせることで衝撃から脳を守っている構造になっています。

ちょうどお豆腐が水のなかで浮いているようなものです。お豆腐屋さんにいくとありますよね。またはスーパーのお豆腐もパックの水のなかに入っていますよね。あれも柔らかいお豆腐を衝撃から守って形を保つために、ああやっているのです。水に浮かせることで衝撃を吸収できるようになっているのです。

それでもあまりに強い衝撃が加わるとひとたまりもありませんが。

◆ 脳は三つの膜で覆われている

脳を守っているのは、硬い頭蓋骨、髄液だけではありません。

脳は3つの膜で覆われているのです。

この膜は外側から、「硬膜」「くも膜」「軟膜」です。「軟膜」が一番脳に近く密着している撒くです。

くも膜下出血の「くも膜」は三つの膜の真ん中にあります。

この膜たちも脳を守っています。

髄液は硬膜の内側にあります。


このように脳はとても脆い存在ゆえに、何重にも保護されています。それならもともと頑丈な構造であればよかったのにと、またしても思うわけですが、脆いゆえに大切にしないといけないのです。

脳卒中や頭部外傷では、こうした脳の脆さが如実に現れて深刻な事態を招きます。


また、脳のこのような構造を知ることで、どうして自然界は水に浮かすと守ることに繋がるとしてそのような構造に造られたのかと不思議に思います。

こちらの記事もおすすめ「分かりやすい脳の基本 ⑴」


まだまだ脳の基本的なことは続きます。

それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


分かりやすい脳の基本 ⑴

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脳卒中について理解をしようとすると、脳についての知識も不可欠です。

脳はとても神秘深くかけがえのないものです。

脳について未だによく分かっていないことも多くあり、いろいろな情報が世の中に流れているのが現状ですが、大まかに脳についてイメージしてもらおうと思います。


◆ あなた以外あなたじゃないの

なんだかどこかの歌詞にあったような・・・

人間が動いたり、考えたりするのは脳の働きです。反射はちょっと置いておいて、嬉しい悲しいという感情があるのも記憶があるのも脳の働きのおかげです。

単なるモノとして脳をみるのと、「その人そのもの」という概念で脳をみるのとでは違った見え方をします。

あなたが死ぬと、脳の蓄積されている長年の知識、ノウハウ、記憶、思考、ことば等が消えます。

脳の中には膨大なかけがえいのない情報や思いがあるのです。

こう考えると、本当に脳はその人をあらわしている臓器だなあと思います。

◆ アインシュタインの脳の重さは1,230g ちょっと小さめ

では脳をモノとして見るとどうでしょうか。

大きさは性別や体格によって少し変わってくるのですが、男性は1,500g未満というところです。ネズミの脳が1.5g、サルの脳が904gですから、ずいぶんと大きいですね。ただマッコウクジラの脳は9Kgもあるそうですし、単に大きければ知能が高くなるという比例はないようです。

事実、ノーベル物理学賞を受賞した一般相対性理論のアインシュタインの脳は1,230gで、男性としてはちょっと小さめといえます。


脳の中には1千数百億を超えるともいわれる神経細胞があって、それぞれが複雑なネットワークを作っています。神経細胞が数万ものほかの神経細胞とつながり合い、その長さをすべて足すと100万キロメートルを越えるとも言われています。

驚きですよね。これが頭の中にあるなんて。

◆ 脳は神経の固まり

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「脳は神経細胞の固まり」とよく言われますし、聞くと思いますが、この神経細胞は数のうえでは脳の細胞全体のわずか10%ほどを占めるだけです。残りの90%は、「グリア細胞」というものです。このグリア細胞は、主に神経細胞を補助する働きがあると考えられていますが、まだまだ十分に解明されていません。こうしたことから、「脳は神経細胞の固まり」というはちょっと違うんですね、神経の固まりと言えば正しいのです。ちょっと細かいですが。


脳は生命をつかさどる臓器ですが、同時にその人を形成している不思議で奥深い臓器です。

脳の魅力をこれからも学んでいきましょう。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


分かりやすい くも膜下出血 ⑴

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「脳卒中の超基礎シリーズ」、これまで脳梗塞と脳出血についてお話をしてきました。

脳梗塞や脳出血の話はこれでおしまいという訳ではなく、追記はするつもりでいますので、後日記事を書いていきます。


今回は「くも膜下出血」です。

といっても、どう話を進めていこうか考えていました。

皆さんも病名くらいは聞いたことがあると思いますが、この「くも膜下出血」という病気は、大変奥が深くて恐ろしい病気です。

奥が深い病気だらけですが、脳卒中に限って言いますと、くも膜下出血の恐ろしさは別格です。

内容も難しいことになりがちですし、おそらく長いシリーズ化しないと書けないほどボリュームがあると思います。


できるだけ医療職の人でなくても分かりやすく話を進めていこうと考えています。

なんといっても「超基礎シリーズ」ですから。

一話の内容な基礎的なことです。長い話にはせずやや短めの話をつなげていこうと考えています。

では始めます。

◆ 頭のなかで小型爆弾が爆発する ‐ これが「くも膜下出血」

血管は通常「管 くだ」のようにホース状に伸びていますが、このホース状の血管にコブができます。

血管にできた瘤が動脈瘤(どうみゃくりゅう)といいます。
この動脈瘤が小型爆弾です。
コブ(瘤)は「こぶとり爺さん」のこぶをイメージしてください。そのコブが大きくなってやがて破裂します。

この瘤の破裂が爆発です。

つまり脳の血管に瘤ができます。その瘤が破裂するのが「くも膜下出血」です。

小型爆弾の爆発と表現したのは、それくらい強烈なダメージが身体にくるからです。

◆ 死亡率は約30~40%とものすごく高い

くも膜下出血には「3分の1の法則」というのがあります。

動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、平均すると社会復帰率が3分の1の恐ろしい病気なのです。

動脈瘤が破裂すると、


3分の1が死亡。

3分の1が重度の障害で社会復帰ができない

3分の1が社会復帰ができるくらい軽くて済む


どこの3分の1に入るかで、運命が決まります。

◆ 積極的に見つけようとしないと、動脈瘤は見つからない

多くの場合、頭の中に動脈瘤があっても気づかないのです。

これは脳ドッグでもしないとわかりません。

瘤が大きく成長すると視力に影響が出る場合がありますが、通常は動脈瘤が出来ていても分かりません。脳ドッグで発見されるか、たまたま頭部の血管撮影をしたときでないと、気がつきません。


いかがでしたか?

くも膜下出血はこのように突然死亡することがあるくらい恐ろしい病気です。

まだまだ奥が深い病気です。

今回のお話はこれまでです。

それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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ラクナ梗塞のBADタイプとは?看護は?

「分かりやすい脳梗塞」シリーズ


今回は脳梗塞のなかの「ラクナ梗塞」で「BAD」(バッドと読みます)と呼ばれるタイプの


ラクナ梗塞についてのお話です。



ラクナ梗塞には種類があるのです。


それが「BADタイプ」と呼ばれるラクナ梗塞です。


BADと聞いて「あー、悪いからBadね。Goodの反対だからか」という看護師もいますが、


それだめーーーー!


良い悪いのBadではありませんから。



◆ BADタイプの基礎



BAD(Branch atherromatous disease)はラクナ梗塞のなかでも症状が徐々に悪化していくため、


ラクナ梗塞よりも重症になります。



ラクナ梗塞では穿通枝という細い動脈が詰まることで起こります。


この穿通枝は脳出血や脳梗塞の好発部位です。


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大きな血管から出ている細い血管が「穿通枝」(せんつうし)と呼ばれる血管です。


この穿通枝はいきなり細いまま大血管から伸びているわけではありません。


穿通枝の根本、生え際というのがいいかもしれませんが、


そこはまだ太いのです。


最初から最後まで細い血管ではありません。


太い血管との接続部は穿通枝も太い。



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穿通枝の根本が詰まるとその血管の全体が詰まることになります。


ラクナ梗塞は穿通枝の奥の方が詰まることが多いですが、


BADは穿通枝の根本が詰まるのでその血管全部が詰まることになります。


それゆえに、通常のラクナ梗塞なら軽度ですんだのに、BADタイプだと麻痺や失語が強く出ます。


最初はそれほど麻痺が強くなかったのに、徐々に症状が悪化していきます。


僕は何人もBADの患者さんを看てきましたが、ラクナ梗塞とは違って麻痺や失語がかなりきつく出ます。


でもラクナ梗塞のように意識はしっかりしています。知能は変わりません。


それゆえ患者さんのショックは相当なものです。


家族もそうです。


急性期の治療が終われば、あとはリハビリを頑張るしかありません。


どこまで回復するかは個人差がありますが、それでも麻痺はついてくることが多い、とても


重症な梗塞といえます。



◆ BADタイプの脳梗塞の看護は?


脳梗塞が完成されると麻痺はそれ以上悪くなりません。


しかし麻痺は強く出るので、拘縮や肩関節の亜脱臼などに注意が必要です。


下肢の麻痺が強ければ転倒リスクもあります。



BADは脳梗塞のなかでも高血圧などが関連しているといわれています。


高血圧を長い間ほったらかしにしていたために発症した事例もあります。


「大丈夫だろう・・」と放っておくとあとで大変なことになることがあります。


入院中は降圧剤を投与しているでしょうし、看護師もいるのでしっかりと血圧管理を


しています。


こういう長年高血圧でいる人は、食生活の乱れや仕事のストレスが酷いことがあります。


普段の生活スタイルを聞いて問題点を見つけることも大切です。


退院して自宅に帰ったら、油っこい食べ物や塩分の多いものを食べるのを控えたり、


血圧管理をしっかりとしていくこと。


入院中から血圧手帳を渡して、記録をつけていく癖をつけていくこともいいでしょう。


いままで自分の健康にあまり関心を持ってこなかった人が多いので、


これを機会に自分の健康を見つめなおすことです。


脳卒中は再発しやすい病気です。


詰まった血管以外の血管も、ボロボロになっている可能性もあります。


第二、第三の脳梗塞や出血が起こることも考えられます。


もう二度と脳卒中にならないように、再発予防も忘れずに。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。





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