samuel-JL-rxOrFk5Q-unsplash.jfif


Annals of internal Medicineに事例紹介が載っています。

この尿からアルコールが造られるという「自動醸造症候群」は非常にめずらしい病気です。

アメリカのある女性がこの自動醸造症候群だとわかりました。

生きている人間でこの病気があるのが分かったのは初めてです。


◆ 膀胱でアルコールがつくられた



この女性はアメリカの61歳の肝硬変と糖尿病をわずらっています。

肝臓移植の待機リストに載ることを希望していましたが、なかなか許可が下りませんでした。

というのは、彼女には「アルコール中毒」の疑いがかかっていたからです。

尿検査で繰り返しアルコールの陽性反応が出ていました。


しかし彼女は一貫して飲酒を否定。たしかに酔っている様子もありませんでした。


またアルコールの2つの代謝産物であるエチルグルクロニドと硫酸エチル反応は、陰性を示していました。この結果に、医者は首を傾げます。

飲酒をすると数日間は、これらの代謝物が尿中に存在するからです。


そこでさらなる詳細な尿の分析をしたところ、彼女の膀胱内でアルコールが醸造されたことが判明しました。


◆ なぜ尿からアルコールがつくられたのか?



アルコールは「糖分」を「酵母」で発酵させることで作られますが、彼女の膀胱でも同様の現象が起きていました。

原因は「カンジダ・グラブラタ」という名の天然酵母です。

これはもともと体内に存在する微生物の1つです。

通常の人には、わずかしか存在していない「カンジダ・グラブラタ」ですが、彼女の場合は、なぜか大量に存在していました。

もちろん「体内酵母」の量が多いだけではアルコールは発生しませんが、彼女の場合は、「糖」というもう1つの条件も偶然揃っていました。

彼女は糖尿病でした。

糖尿病を患ってしまうと、尿に糖が含まれるようになります。

膀胱内で「糖」と「酵母」が同時存在することにより、自然に発酵してアルコールが作られてしまったのです。

なんとも不思議な話ですが、これは同じような病気の人にはこの病気になるリスクがあるというわけではありません。

レア中の激レア例です。

なので普通はこれが起きることを心配する必要はまったくありません。


で、このあと医師たちは彼女の体内にある酵母を減らすことを試みましたが失敗したようです。

結局いろんな事情を考慮して彼女は肝臓移植をしたようです。

そのあとどうなったかは載っていません。


人体ってほんとうに不思議ですね。





それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

カテゴリ

タグ