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「地域包括ケアシステム」を聞いたことがありますか?

医療や介護に関係している方なら聞いたことはあると思います。

この地域包括ケアシステムというのは、実は医療関係者や介護福祉関係者のなかでも、ちゃんと理解できていない人がけっこういます。なんとなくは分かるのですが、うまく説明できない…。

ちょっと厚生労働省の言葉を見てみましょう。


地域包括ケアシステムとは?厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。 (厚生労働省のHPより引用)


うーん、やっぱりよく分からない…。

でもこれを国は進めているんですよね。じゃあ国民としてちゃんと知っておくべきだ、というわけで自分の勉強も兼ねてもう一度おさらいとしてみます。

ちょっとかたい話になりそうですが、噛み砕いて書いてみます。



◆ もうお金がすごくかかるからできるだけ在宅で介護をしてほしい、というのが国の本音。

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病院や施設で看病や介護をしているのと、自宅でホームヘルパーに来てもらって在宅介護をするの、どちらが安くつくでしょうか。それは「在宅介護」です。


ホームヘルパーや訪問看護を使っても、在宅介護のほうが安くつく。

国は現在、在宅介護、訪問看護を推進し在宅で看ることを勧めているのはお金が大きな要因です。


高齢者は増えるいっぽう、それに伴い病気も増えるいっぽう。医療費は右肩上がり。健康保険も立ち行かなくなると言われています。


そこで国はもっともっと地域連携を強くして、できだけ自宅で生活ができるようにしてほしいという考えが生まれました。

地域連携は今までもありました。

じゃあどう違うのか?


認知症や疾患を抱えている方で誰かの手が必要な場合、誰が第一に手を差し伸べますか。おそらく同居している家族でしょう。でも家族だって学校や仕事があるので、24時間付きっ切りでお世話をするということは難しい。ではホームヘルパーに来てもらってケアをしてもらおうとします。もし病気になったらかかりつけ医に診てもらう。入院が必要ならかかりつけ医から紹介をしたもらう。退院したらまたかかりつけ医にフォローしてもらう。こうしてぐるぐる巡りながら自宅で生活を続けてもらおうというネットワークを強化するということです。


病院、施設、自宅、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ、ケアマネージャー、などなど、いろんなネットワークが高齢者、疾病者を支えていく。

都会ならこういう社会資源がそろっていますが、田舎では無い資源があります。そこで市町村は実務者レベルの地域ケア会議というのを開いてヒアリングをしています。

この地域ケア会議によって地域の課題や要望を市町村が共有し改善へ向かうようにしていくのです。


◆ 一番の違いは「本人の意思を今までよりも大事にする」ということ。

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今までもかかりつけ医や急性期病院はありました。介護の仕事もありました。入退院を繰り返している方もいました。

この地域包括ケアシステムは「本人が」どうありたいのか?を重視しようという考えです。

「その人らしい」を重視する。

これはどういうことでしょうか?ズバリ言うと「自宅で最後まで生活したい」ということです。いやいや、人それぞれでしょう?という意見があるのは知っていますが、多くの高齢者は「家に帰りたい」んです。つまり自宅がいいのです。

だから多くの人の支えが必要になります。だって、独居老人、高齢夫婦二人暮らしはとても多いのです。とても離れて住んでいる家族だけではお世話はできない。


もちろん施設や病院での療養を余儀なくされる場合があります。そうした場合でもケアマネジャーやかかりつけ医などが連携してその人に合うタイプの入院先を探します。


本人が「できるだけ家で住みたい」と願うなら、訪問を増やしてケアを増やすか、小規模多機能を利用して在宅を継続するか、いろんな方法があります。これはひと昔前にはなかったことです。


まだまだな面も多々ありますが、地域ネットワークは確実に昔に比べて強化されつつあります。


◆ 支えてくれる人たちが増えれば、たとえ認知症や疾患を抱えていても自宅で生きていける。

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たとえ認知症で徘徊をしても、道が分からなくなって迷子になっても、地域の見守りがあれば大きな事故を予防できるんじゃないか。そういう考えも含まれています。

「いやいや、そんなにうまくいくかなぁー」「ただでさえ今は地域のコミュニティが薄くなってきているのに」

という声が聞こえてきますが、たしかにそうです。だからまだ完璧ではありません。


こうした自宅生活を支える要が、「訪問介護」でしょう。ホームヘルパーさんの力は大きい。

でも絶対数が少なすぎます。ホームヘルパーになる人がいない。それが原因で倒産した事業所はたくさんあります。国が在宅をすすめているのに、現状は真逆です。


結城康博氏は、「ヘルパーの公務員化」を提言しています。

いままでヘルパーの賃上げ加算をしてきましたが、まったく不十分です。賃金はとても低い。仕事の大変さと賃金が合っていない。成り手がいない。もう公務員化するしかない…。

結城康博氏の意見はひとつの問題提起として考えられます。


まとめると、

①今までよりももっと地域の医療介護福祉のネットワークを強化する。

②本人の意思を尊重した余生を送れるようにする。

③できるだけ病院や施設ではなく、可能な限り在宅で看ていこう。

ということです。

国は地域包括ケアシステムを、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて改定しながらすすめていきます。この流れはしばらく続くでしょうから、自分のこととして広く知っていただきたいと思います。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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