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人目もはばからず衣服を脱ぐ認知症患者さんがいます。

ふと目をやると服を脱ごうとしていて、職員から止められるという場面があります。こうした「服を脱ぐ」という行為は、周りの人からすると別に服が汚れているわけでもなく、暑いわけでもなく、着替えの時間でもなく、どうして服を脱ぐのか不思議に思うものです。こうした「服を脱ぐ」という行為はけっこうありまして、施設や病院ではけっこう目にする光景です。

家族さんはそんなことをするとは知らないことが多いので、「家ではそんなことしたことないのに…」とびっくりされることがあります。

「服を脱ぐ」という行為はどういうことで起こるのでしょうか。そうした場面ではどう対応したらいいのでしょうか。




◆ 原因はひとそれぞれ、とにかく観察して原因を特定します。

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このような「衣服を脱ぐ行為」をする認知症患者さんは、中等度以上の重い認知症を患っていることが多い。会話につじつまが合わなかったり、見当識障害といってここがどこなのか、今日は何月何日なのか、時間と場所が分からなくなっていることがあります。このような状態になっている方は、他の事も理解力が落ちていたり、判断能力がかなり低下していると考えてよろしかと思います。


つまり、今は服を脱ぐべき状況ではないから脱がないでおこうとか、他の人が見ているから脱ぐのはよくない、恥ずかしいなど一般的な判断ができなくなっていると考えられます。

正常な判断ができないのですが、本人はそれが正常だと思っています。別におかしなことをしているという自覚はないとされています。だから女性の患者さんでも服を脱ぎますし、人前でおっぱい丸出しでも恥ずかしがらないのです。

通常、人前で服を抜いて裸になるのはNG行為ですが、本人はそんなことはお構いなしに、本人の都合で脱ぎます。たとえば、服の繊維が肌に合わず痒いから、今が風呂の時間だと思っている、今がパジャマや部屋着に着替えるタイミングだと思っている、なんだか服を着ているのが気持ち悪いから、単に暑いから、…などその人のさまざまな理由で脱ぐのです。


なので、教科書的な画一的ケアでは解決しないことが多い。同じ人でもその時の状況で脱ぐ理由は変ります。その時の観察力で、なにが原因か探ることが防止につながります。


◆ 一旦スイッチが入ると止められないことが多い。

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一旦脱ぎ始めると、それを見ていたスタッフが止めに入りますが、止めたその時は脱ぐのをやめますが、すぐまた脱ぎ始めるものです。つまり一旦「脱ぐ」ということが始まると、静止しにくいのです。本人はすぐまた脱ぎますから、スタッフがその都度対応しますが、イタチごっこです。


夜間ですと、オムツ内に排尿や排便をしてしまい、それが気持ち悪くてオムツ外しが結構ありますが、その時に服も一緒に脱がれることがあります。巡視をしていて、ベッド上で全裸になっている患者もいます。これは特殊なことではなく、どこの病院や施設であることです。家族さんがこのことを知ると「そんなことをする人とは信じられない…」と驚かれますが、認知症になるとこういうことをする人がいるということは知っておいてください。


ちなみに全裸になったり、人前で服を脱ぐ行為を怒っても効果はありません。結局服を脱ぎます。

その人の原因を探るしか防ぐ方法はないので、スタッフはあれこれ考えながら観察をしています。しかし100%防ぐのはピタッと原因を探し当てた時くらいで、すぐには難しいです。

あと、一旦服を着替えてしまうと、そのあとはしばらく落ち着くということがありますので、服を脱ぎ始めたら自室へ誘導し、部屋のなかで存分に着替えてもらい、それで落ち着いてもらうという手段も有効です。


◆ その都度対応するしかないのか。

決め手となる方法は、あれこれ試行錯誤をして探っていくしかありませんから、認知症ケアは個別性が重要なのです。

家族さんはショックを受けることがありますが、誰でもそういう行為をする可能性はあります。


逆に「着替えをしたがらない」ということがあります。スタッフが「お着替えをしましょう」と言っても頑として拒否される。お風呂のときも服を脱がない。脱がそうとすると怒鳴り、怒り、スタッフに暴力を振るうということがあります。家族が面会に来た時に「どうしてウチの母は着替えていないんですか?」と不振に言ってこられることがありますが、別にスタッフが着替えをさせていないわけではありません。スタッフはちゃんと着替えをしてもらおうと関わっていますが、本人がかたくなに拒否をされるからです。


このように認知症の症状はひとそれぞれ、対応に苦慮することが多々あります。本人がなるべく落ち着いて生活ができるようにしていくのが理想です。あと、よほど周りに迷惑がかかっていないのなら、多少のことは目をつむる心の余裕も必要です。これはスタッフ、世間の人々、家族もそうです。

余裕がないと怒りますからね。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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