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2019年8月26日に日刊SAP!が「看護師たちを困らせるモンスター患者『あっちの患者より優しくしろ!」という記事を載せました。

無茶な要求をしてくる、または暴言暴力をふるう困った患者のことを「モンスター患者」と呼んでいます。

これ自体は私のブログにも何度か記事を書きましたが、どこの病院でもあります。老健や特養などの老人施設でもあります。毎日というとちょっと言いすぎですが、それに近いくらいしょっちゅう遭遇します。

私が以前医療機器販売会社の営業マンで毎日毎日病院に出入りしていた頃、病院内で大声を出して騒いでいる患者やその家族を何度も見ました。看護師になって病院内にいると営業マンの時は横目で見ていた大声を出す患者に向き合うことになりますが、本当に頻繁にモンスター患者に遭遇します。以前から存在を知っていましたが、いざ病院スタッフになると「こんなにいるんだ」と思うほどです。そして困ったことにこういう人は「自分がモンスターとは思っていない」ということです。

こうしたモンスター患者が来た場合、病院内ではどういう動きがあるのでしょうか。





◆ 病院ってどういうところですか? ここはホテルではありません。

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日刊SPA!の記事のなかには結構ひどいモンスターぶりが紹介されています。

たとえば、「共同風呂に入っていて、シャンプーと間違えて置いてあったクレンザーで頭を洗って、後で眼が炎症したとナースステーションに怒鳴り込んできた男性患者。クレンザーをシャンプーと間違えたのは患者本人なのですが、『そんなところに置くのが悪い』といって引かない。『治療費を払え』とさえ言ってくる」

または、

「廊下に響くほどの大音響でイヤホンをせずにTVをみる」

「深夜救急で来た患者が入院するほどではなく帰ってもらうことになった。深夜で電車がもうない時間帯なのでタクシー等で帰ってもらうしかない。そうすると『こんな時間になったのは病院の診察のせいだ。タクシー代を払え!』と言ってくる。」


私が経験した膨大なクレームの中には、こういうものあります。

「大部屋で、ある患者は『エアコンが寒い』ある患者は『暑い、エアコンをきつくしろ』とそれぞれが主張を曲げない」

「ナースコールを押しても、すぐに来てくれない」

「全然痰がからんでいないし、喉もゴロゴロ言っていないのに、『母が痰で苦しんでいます。早く吸引してください』と言ってくる」

など、ほんとにまだまだいっぱいあります。


ちなみに、「ナースコールを押しても、すぐに来てくれない」のは、そういう時もありますから。で、そういうことを言う人はまったく緊急性がないので。多くは、ナースコールがめちゃくちゃ多い患者で、看護師から嫌がられている患者です。もうこっちは分かっています、緊急性がないことを。自分でできるのにしないとか。さっきの時に一緒に言ってくれたらいいことを、わざわざ何回もナースコールを押してくる患者。これはいけません。大人の常識がない。飲食店でも、一度にまとめて言わずに小出しをしながら注文すると嫌がられるのと一緒です。「一つ、一つ、一個、一個、ナースコールを押して!さっき行った時にまとめて言えや!なんなのさ!」と裏で看護師たちは言っています。確実に言っています。そういう患者は損をしています。

こういう患者に対して「まあまあ、高齢で寂しいんだよ。だから来てほしくて何回もコールを押すんじゃない?」っていう人がいますが、そういう意見には真向から否定されます。頻コールを受けている側からすると、まったくかわいくないし、微笑ましくは思わないということです。


あと、「痰がからんでいないのに、吸引してと言ってくる家族」ですが、こちらはちゃんと吸引が必要かどうかを判断してから吸引します。なんでもかんでも吸引はしません。必要な時にするのです。吸引はそれ自体が患者にはしんどいものなのです。私は自分で自分に実験でやってみたことがありますから、分かります。だから別に大丈夫なときは、あえてする必要はありません。必要時にするものですから、そういう家族には私は「いまは必要ない」とはっきり言います。まあ、これはクレームとはちょっと違いますね。


「布団をかけて」

「置時計をこっちに向けて」

「いま何時ですか?」

「冷蔵庫のお茶をとって」

「カーテンをもうちょっと閉めて」

こういうナースコールってものすごく多いんです。

しかも、自分でできるにも関わらずです。

できないのなら、わかりますよ。そりゃあ分かります。でも、自分でできるんです。

特に回復期リハビリテーション病棟に入院している患者さんでも、自分でできるのにこういう内容のコールはとても多いのです。なんのためのリハビリ入院なのか。

もう一度いいますよ。自分でできない、もしくは自分でやろうとしたら転倒などで危ない患者ならまだ分かります。できる患者がこういう内容のコールを頻回に押してくるので、スタッフは消耗するのです。


病院はサービス業だと誰かが言っていましたが、サービスを履き違えている患者が多いと実感します。

なんでも言えばいいんだ、こっちは患者様なんだ、という昔の「お客様は神様だ」という考えに支配されているのでしょうか。

元営業マンの私ですら、「これはちょっとひどいなぁ」というケースが多いと実感します。


◆ 入院する前から分かっているのにどうしてなの?

さっきの「大部屋で、ある患者は『エアコンが寒い』ある患者は『暑い、エアコンをきつくしろ』とそれぞれが主張を曲げない」というケースでは、「そこは大人なんだから」と思います。

これは前にも記事に書きましたが、大人の対応を一人一人がしてもらいたいと思います。

ちょっと寒ければもう一枚掛け布団をかけますし、暑ければアイスノンを貸します。もうちょっと大人の知恵で乗り越えて欲しいです。ここは自分の家ではないし、個室ではないのですから。一つの部屋に4人が泊っているんです。そんなの大部屋を選んだ時点でいろんな他人と一緒に生活をすることは分かり切っていることですから。そりゃあ100%自分の思い通りにいきませんよ。文句があるなら、個室を申し込んでください。

特に神経質な性格の人は、それこそ入院前から分かっているんですから、音が気になるなら個室を申し込むか、イヤホン等を持ってきて自己対策をするなりしていただきたいと思います。やっている人はちゃんとやっています。


◆ 裏ではすぐに看護師や主治医から目を付けられています。

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いわゆる「クレーマー」や「モンスター患者」はすぐに主治医や看護師に目を付けられます。もうね、「警戒すべき人物」としてロックオンされます。

私も何回も患者から怒鳴られたことがあります。

そこで思ったのが、どうも怒りの沸点が低い方が多いように感じます。「えっ、そこで怒るか」というケースが非常に多い。本人はめちゃくちゃ怒っているんですが、冷静になれば「こんなことでどうしてそこまで怒り狂ったのだろう?」ということがあります。これは怒りが収まったあとで患者本人に話をすると、こう言われることがよくあるからです。

あとで「あの時はすまんかった」と謝ってくる方も非常に多くいらっしゃいます。


実は「若い人よりも中高年のほうがクレームを言う」ということがあります。歳をとると「気分を害された」ということでキレる人が多くなります。とにかく「上司を出せ!」系が多い。「どなり声から始まる」人が多い。逆に若い人は「どうしてこうなったのかが知りたい」系が多い。だからきちんとなぜこうなったのかを説明すれば納得する人が多いし、改善策を提示すれば収まることが多い。


年配の人ほど「バカにされた」と思ってキレる人が多いのが現場の実感です。逆に若い人はきちんと論理的に納得しようと理由を聞いてきます。どっちが大人なんでしょうか。


病院から目を付けられると次回から入院を拒否されることがあります。

実際にそういう患者は何人もいます。

どこの病院にも「ブラックリスト」はあります。

以前勤めていた急性期病院にも「ブラックリスト」はありましたよ。

それくらい滅茶苦茶なことを言ってくる患者や家族はどこでもいるということです。本人は滅茶苦茶だと思っていないから余計話が噛み合わないんです。昔、接客販売業時代もこういう客はいましたけどね。

患者vs病院という図式になってしまうと、信頼関係が築けませんし、治療もうまくできなくなってしまいます。

入院中は毎日顔を合わす患者と医療スタッフだからこそ、こんな争いは嫌だなぁと思う今日頃頃でした。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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