「脳卒中になった方の約30%がうつになる」
このような研究データがあります。
脳卒中後になんだか気分が晴れない、どうもやる気が出ない、自分なんて死んでしまえばいい、、、こういう気持ちになる方は、けっこうな数がいることが分かっています。
「一般に脳卒中では33%(18~62%)にうつ(うつ状態)を合併し、大うつは23~34%、小うつは14 ~26%に認められる」
(脳卒中治療ガイドライン2015より)
脳卒中を発症した後にうつになる可能性があります。
約1/3がうつになるなんて、すごく高い確率だと思いませんか。
こうした脳卒中後うつに対して、医療はどういうアプローチをするのでしょうか?
◆ 脳卒中後うつは、「死にたい」と思うのが2倍になる。
「脳卒中後うつは、希死念慮の出現や自殺の頻度が2倍になることとの関連が強い」
(脳卒中治療ガイドライン2015より)
脳卒中後うつになると、「死にたい」と思う率が上がります。
「なんだかやる気がでない」「何をするにもしんどい」「消えてしまいたい」
こうした気持ちの表れはうつのサインです。
脳卒中で脳にダメージがあると、脳の機能的にやる気がなくなることがあります。中にはまったくやる気がなくて、ダラダラしているように見える方もいます。
また、脳卒中の後遺症として麻痺などがあると、日常生活上のストレスや環境、身体の変化からうつを発症することもあります。
職場復帰をしても、以前と違う部署に配属されたり、思うように成果が出なくなってしまったり、そもそも会社に行くのが嫌になって終いには引きこもったりという例も。
こうしたことで脳卒中後うつを発症してしまうと考えられていますが、まだまだよく分かっていないことも多いのです。
いづれにしても、日常生活に支障が出てくる場合があります。
◆ 脳卒中後うつは、リハビリ効果を減退させる。
「うつを合併すると、認知機能が障害され、ADLの回復が悪く、死亡率も3倍高いとされる」
「うつが改善すると認知機能やADLも改善する」
(脳卒中治療ガイドライン2015より)
生活面やリハビリに支障が出てくるため、適切な治療を早めに開始したほうがよいということになります。
どういう治療かというと、「薬物治療」です。
医師の診察を受けて、適切な抗うつ剤は処方してもらいます。
きちんと治療をすることで、生活面やリハビリへの支障を回避します。
私の経験で、ある脳卒中後うつになった女性患者さんがいて、やはりリハビリには積極性がなく、いつも「早く死にたい」ばかり言っていました。
◆ 脳卒中後うつは、ほっとかないでちゃんと治療が必要です。
「抗うつ薬の効果を検討した研究では、うつや身体機能の改善効果が認められている」
(脳卒中治療ガイドライン2015より)
脳卒中後うつは放っておかないで、きちんと治療をすることが大切です。
本人もさることながら、家族もちょっと気にかけてあげてください。もう本当にやる気がなくなったり、うつでしんどくなって動けない人もいます。症状が進む前に適切な治療を受けるほうがいいと思います。
ちなみに、脳卒中後うつになる前、まだ元気なころに予防として抗うつ薬を投薬することは、予防効果にならないとする研究があります。
「抗うつ薬投与によるうつ発症の明らかな予防効果は認められていない」
(脳卒中治療ガイドライン2015より)
脳卒中後うつは脳卒中後の身体面、精神面、社会面においてのストレスから発症すると考えられていますが、さまざまな要因が合わさって発症するとも言われています。
脳卒中になった方の約30%が発症するので、このことはもっと広く知っていただきたいと思います。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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私の父も脳梗塞発症後、半身不随になり、利き手が使えなくなったり歩けなくなったことで、病院で「もう(人生)終わりにしたい」と口に出すようになり、娘としてその言葉に衝撃を受けました。やはり、言葉がうまく出なくなったこと、ひとりで歩けなくなったこと、文字を書いたり食事を食べたりといった日常生活がままならなくなったことで、生きる気力、リハビリをする気力を失ったのだろうと想像していました。
周りも気を付けないといけないですね。
ようこくんさん>>お父様がそう思われたのは自然なことです。突然やってくるのが脳卒中です。しかし周りがどう言おうが本人に降りかかったことはつらい現実です。周りが支えつつ少しずつ乗り越えていく、または病気の後遺症とともに生きていく。何ができるのか、模索しながら進んでいくしかないですよね。