患者さんのケアをする上で大切なことはたくさんありますが、「丁寧にする」というのは間違いないと考えます。
もし入院している家族が「丁寧」にされなかったら。
もし入院している自分が「丁寧」にされなかったら。
病棟スタッフたちは毎日毎日交代しながら24時間、患者さんのために働いています。
けっして手抜きしようなんてことは考えていないと信じています。
でも、こんなことがあったんです。
フケです。。。
入浴しているんですよ。ちゃんと。でも、フケが…
◆ ある女性患者の頭にフケがいっぱい…なんでこんなことになるの⁈
ある女性患者Aさん。脳梗塞、ほとんど話せず指示も入りにくい。寝たきり。いつもぼやーとした意識状態。ベッドで寝ていることが多い。
Aさんは脳梗塞で外減圧術をしました。この外減圧術は、頭蓋骨の一部をはずす手術です。
つまり今現在、Aさんの頭蓋骨は一部がはずしてある状態で、そこだけ触ると皮膚だけです。骨がないので柔らかくて触るとぷにぷにしててちょっとへこみます。
「えーーー!?頭蓋骨が無いって…」
ご存知ない方は驚かれますが、そういう手術があるんです。脳神経外科ではよくあります。
脳は脳梗塞などでダメージを負うと腫れることがあります。しかもけっこう腫れることがある。でも脳の周りは硬い頭蓋骨でおおわれているので、腫れても外に行くことができないので脳は自分で自分を押してしまう。そうすると脳は圧迫されて、時に死に至ることがあります。
これを防ぐために、あえて頭蓋骨の一部を切り取って柔らかい皮膚だけにしてぷくーーっと外へ腫れさせる。そう、圧を外へ逃がしてあげるのです。これが外減圧術といいます。脳は約二ヵ月くらいで腫れが引いてきて元の大きさにもどりますから、その時に冷凍保存していた頭蓋骨の一部を再びはめるということをします。
Aさんはまだ頭蓋骨の一部を元に戻す手術はまだです。なので頭蓋骨の一部が無い状態ですので、そこだけ脳を守るものがないので皮膚だけでおおわれています。触ると脳が皮膚の下に直接ありますので、転倒など衝撃に気を付けないといけません。
こういう患者さんであってもちゃんと支えがあれば座れますし、目も開けてますし、こっちを見たりします。個人差がありますが、立って歩く人もいますよ。頭蓋骨の一部はない状態です。人間てすごいですね。
前置きが長くなりましたが、このAさん。頭がフケだらけということに気付きました。
よくよく髪の毛を見ると、細かな白いもやもやが付いている…フケじゃないか!
しかも、もっとよく見ると頭皮に白いフケがびっしり付いている!
「なんじゃこりゃーー!」
と松田優作なみに叫んでしまいました。
そんなバカな、、、ちゃんとお風呂に入って洗髪もしているんだろ?
私の職場は入院患者さんの入浴は「介護士」さん達の仕事です。Aさんも入院してからずっと介護士さんが複数人で入浴介助をしていました。
私は介護士さんに話を聞くと、大量のフケの原因が分かりました。
◆ 原因は頭の傷にビビったから。なんとも恥ずかしい原因。
原因は「洗髪をするとき、脳を傷めないか心配でビビってしまい、しっかり洗髪をしていなかった」ということでした。
なるほど。そういうことか。
たしかに脳を守る頭蓋骨の一部がない状態で洗髪をするのは、慣れていないと怖いでしょう。
だったら私に聞いてくださいよ。私は前は脳神経外科急性期で働いていて脳卒中が専門だって、今の職場で言いふらしているんですから。みんな知っているでしょ?私が脳の専門ってことを。
外減圧術の患者さんの洗髪なんて、前の病院でいっぱい経験しましたから。私はできます。
私も気づくのが遅くて、これが本当に残念でした。
フケだらけの頭皮。
しゃべられない患者さん、意識障害がある患者さんだから文句は言ってこないということではありません。
もう、ケアをするチームメンバーとして恥ずかしい失態。
患者さんの頭皮がフケだらけって、、、、本当に申し訳ないことでした。
当然後で洗髪してフケはすべて洗い流しました。私と介護士さんとで。
◆ 外減圧術の患者さんの洗髪はこうします。
これはかなりよくない失態でしたが、これからどうするかを考えました。
今回は外減圧術の患者さんに慣れていない、知識がちょっと足りない状態のスタッフだけで洗髪をしていた。
これからも同じ状態の患者さんは入院してくるだろうと考え、スタッフ向けに勉強会をすることにしました。
洗髪をしていた介護士さんと話すと、彼は「ちゃんと洗わないといけないことは認識していたけど、骨がないんでやっぱりなんか怖くて。しっかり洗えなかったんです」と話してくれました。
彼らはしっかりフケなんか出ないように洗髪をしないといけないと思っているのですが、怖くてできなかったんです。
外減圧術の患者さんの洗髪は、頭蓋骨のある硬い箇所は別にゴシゴシ洗っても構いません。骨がない箇所はゴシゴシは禁止。手のひらを使ってやさしくやさしく押さえないように洗うやり方をします。頭をあまり激しく振らないようにします。
たしかに頭蓋骨がない人の洗髪は怖いと思うでしょうが、正しいやり方をすれば大丈夫です。
これからも患者さんのケアの質向上にむけてスタッフ一同精進していきます。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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頭蓋骨の一部を外す治療があるなんてびっくりでやす。
いろんな手術・治療法があるのでやすね。
ぼんぼちぼちぼちさん>>私も初めて知った時はびっくりしたものです。すごいですよね。
親戚がその手術をしました。聞いた時には、頭蓋骨がない状態というのを想像したら怖くて仕方がありませんでした。骨がなくなった皮膚の状態(ペコペコする)を洗えるなんて、今またびっくりしています。生まれたての赤ちゃんも頭蓋骨の隙間がある間はペコペコしていて「むやみに触らない」と言われましたが、知らない人はやはり怖かったのでしょうね。とにかく、フケがなくなってよかったです。患者さんも言葉は発することがなくても、すっきりされて喜んでおられると思います。
ようこくん さん>>こういう患者さんの最初の洗髪は、ほんとうにドキドキしたものです。
とにかくフケをとってキレイにできてよかったです(#^^#)