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今日のお話は転倒されたある患者さんについてです。


● 転倒を繰り返している


Aさん(男性 70歳代:パーキンソン病)


Aさんは自宅でも転倒を繰り返していました。


今回はパーキンソン病気の増悪で歩行状態が悪くなりリハビリ目的で入院されました。


杖歩行をされていますが、杖は手に持っているだけで全然有効に使えていませんでした。


地面に付いてもいない、ただ持ってるだけ。


フラフラとよろけながら歩かれる姿は、見てて危なっかしい感じでした。


自宅で転倒を繰り返していた・・・このままだと入院中に転倒されるのは想像に難くない。


入院時カンファレンスを開き、理学療法士や主治医、看護師などが意見を言って転倒対策を考えました。


転倒対策として杖の使用方法の指導、付き添い歩きをするためにナースコールの指導をしていくことに。



● 指導してもなかなか上手くできない日々


リハビリで杖を使った歩行練習を開始。


杖だけではなく、歩行状態そのももにアプローチし、歩容を改善していくことにしました。


パーキンソン病は摺り足、無動、突進歩行など、独特の歩き方になってしまいます。


AさんはON・OFF現象がほとんど見られない方でしたので、OFF時のことを考慮しなくてすみました。


足を地面に擦って歩いていたため、ちょっとした段差でも躓いてします危険がありました。



リハビリが進んできて歩行状態が改善してきました。


まずまずの安定感を得られるようになってきました。


必要時にナースコールも押してくれます。


ある夜勤のとき、朝方にAさんが起床し洗面所で洗顔や歯磨きをしていました。


洗面所に椅子を用意し、Aさんは椅子に座って整容をしていました。



Aさんが椅子に座って整容をしているのは見ました。


数分後に前を通った時、椅子にAさんがいませんでした。


洗面所にいません。


「ナースコールせずに一人で部屋に帰ったか・・」


部屋に行くとAさんがベッドで寝ていました。『やはり一人で戻ったんだな・・』と思いました。


顔を手で押さえています。


「!!!、あっ!Aさん、その顔!!」


Aさんの右目の下が大きく腫れて出血しています。


Aさん:「どうもないですよ。どうもない。大丈夫です」



洗面所で椅子に座って整容をしていたとき、少し遠くに置いていた歯ブラシとコップを取ろうとしてAさんは手を伸ばした。おしりを椅子から浮かした。次の瞬間バランスを崩して洗面台に顔を強くぶつけたのです。


レントゲン検査で右頬骨を折る大事故になりました。



● 転倒リスクとどう付き合うか


歩行状態が改善し転倒リスクが減少してきたと安心していた矢先のことでした。


歩いている時ではなかったため、まったく想定外でした。


ちょっと手を伸ばせば届くところのコップを取るために、Aさんはナースコールを押さなかったのです。


「そんなことぐらいでナースコールなんて」


Aさんはそう言いました。



転倒リスクはどこにでもある。そう実感しました。


今回は骨折という大事故になってしました。


たとえ外傷がなくとも転倒は大問題です。


「そんなちょっとしたことでいちいちナースコールを押すなんて・・」

「看護師は忙しいから、わざわざそんなことで呼ぶなんて・・」


と考える方は大勢いらっしゃいます。


実際よくそう言われる患者さんに会います。


そう言われる患者さんの気持ちも分かります。


回復期リハビリテーション病棟ゆえに、できることは自分でやっていただくという基本的な方針もあり、どこまで付き添うかという問題がいつも頭を悩ませます。


安全に入院生活を送れるようにすることは大前提です。


そのために患者さんが不自由を感じたりすることがあるかもしれません。


転倒は絶対防ぎたい。


ガチガチに自由を奪うこともしたくない。



● 患者さんの能力を正確に評価することの大切さと難しさ


身体能力を測定するスケール(ものさし)はいろいろあります。


その中でどのスケールを選ぶか、


また、スケールの評価の結果がやるスタッフによって若干変わってくるものもあります。


患者さんの体調にもよるので、日によっては同じ検査をしても評価が違ってくることもあります。


患者さんの能力を評価して、どこまでスタッフが関与していくのか、


これからも模索して患者さんが安全にリハビリに集中して取り組めるように考えていきたいと思った事例でした。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年12月12日   更新日:2019年11月18日


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