こんにちは、ピストンです。
噛む力は死亡率に影響を及ぼすという研究データです。
70歳時の最大咬合力は、日本人高齢男性における全死因死亡率と独立して関連することが、新潟大学の岩崎 正則氏らによる研究で明らかになった。この研究データは、口腔機能と高齢者の健康との関連についての追加エビデンスになりうる。Journal of oral rehabilitation誌オンライン版2016年4月15日号の報告。
高齢者における口腔機能が死亡率に及ぼす影響に関して、情報は限られている。そこで著者らは、口腔機能、最大咬合力の客観的尺度が高齢者の死亡率と関連しているかどうかを検証するため、13年間追跡する前向きコホート研究を行った。
対象は、ベースライン時に70歳であった日本人559人(男性282人、女性277人)。ベースライン時に健康診断・歯科検診・アンケート調査を行い、電子記録装置(Occlusal Force-Meter GM10)を用いて最大咬合力を測定した。その後、生命状態を確認するために13年間フォローアップ調査を行った。性別で層別化し、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、最大咬合力の三分位間で生存率を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・13年間で111人が死亡した(男性82人、女性29人)。
・単変量解析の結果、男性において最大咬合力の最低群は、最高群と比較して全死因死亡リスクが増加していた(ハザード比[HR] 1.94、95%CI:1.13~3.34)。この関連は、交絡因子の調整後も有意であった(調整HR 1.84、95%CI:1.07~3.19)。
・逆に、女性においては、最大咬合力と全死因死亡率との間に関連は認められなかった。
原著論文 M Iwasaki, A Yoshihara, N Sato, M Sato, G W Taylor, T Ansai, T Ono, H Miyazaki
引用 ケアネット
● 噛む力は予後に影響する
摂食嚥下のリハビリでは、舌圧も注目されます。
舌で口腔内の食べ物を押しつぶす力。口の中で転がして食べやすい大きさにしたり、喉の奥に送ったりする力です。
噛むことを、医療現場では咀嚼(そしゃく)といいます。
リハビリで咀嚼しにくい方のトレーニングをします。
発声練習、舌の運動、首や肩周りの運動、棒付きキャンディーを舐める、など他にもたくさんのメニューがあります。
噛む力は、そのまま食べる量にも影響します。
簡単にいうと噛む力が落ちると、食事摂取量も落ちる傾向にあります。
特に高齢者は、噛む力の衰えが進むと極端に食事摂取量が減って衰弱していく場合もあります。
入れ歯をしていても、噛めないと結局食べにくくなります。
病院や施設ですと噛めなくなってきたら、食事形態をもっと柔らかいものに変更していく。
ご家庭でもきっとそうするでしょう。
米飯からお粥になったり、おかずも豆腐や卵といった柔らかいものや小さく切ったものに変えたりします。
本人がそれで良ければまだいいのですが、病院や施設などでこのように食事形態を下げると、見た目もおいしくなさそうになりますし、歯ごたえがなくなり、水っぽくなって美味しさが減ってしまいます。
こういう食事は魚とか野菜などの原型をとどめていないことも多く、見た感じ「これ何?」と思ってしまいます。
認知症の方ですと「食べ物」「食事」ということが分からなくなって、目の前の原型をとどめていない食事を食事だと認識してくれないこともあります。
そうなると、ますます食べてもらうことが困難になります。
● 食事摂取量を増やすためには
高齢者に限って書きますと、
① 入れ歯を最適にする。
入れ歯は、素材によって味の感じ方が変わります。
レジンという素材(写真のようなピンク色の部分。自然な皮膚の色が出るプラスティックの一種)だと自然な色が出せるのですが、口の感覚も味の感じ方も落ちてしまします。
レジン素材の義歯。よく一般的に見かけます。安くて保険適応。ただし、熱伝導が悪く、熱いものや冷たいものをそのまま感じにくいのがデメリット。ごつくて装着しにくく付けた後も付けてる感が大きい。
味覚が感じにくくて困る場合は、もっと味が感じやすくなる金属製の入れ歯に買えるのも一つの方法です。
金属素材の義歯。薄くて装着感が良い。熱伝導が優れていて熱いものや冷たいものを感じられやすい。金属なので割れにくい。おいしく食事を食べたいのならこれ。ただし保険適応なし。高額。物によっては数十万するのがデメリット。
同じ金属でも、「トルティッシュ義歯」だと、より味を感じやすくなります。ただし、味を感じやすくするために細かい穴が開いているので、洗浄が面倒です。
トルティッシュ義歯。写真ではレモンの水滴が義歯を通して落ちています。食材の味をより感じられて美味しく食べられる。
嚙み合わせが悪くなっても、味覚を低下させます。その場合は歯科で再調整をしてもらいましょう。
② みんなと一緒に食べる
一人で食べる「孤食」が社会問題化していますが、一人で食べるほうが食事量は減ります。
誰かと食事をするのも、食を進ませるには効果的です。
他の人と食事をしているほうが、30%多く摂取できることがわかっています。
親が一人暮らししている場合は、周囲がたまに食事に誘うといいです。また、家族の写真を食卓に飾っておくだけでも効果的です。
③ 好物を入れる
全部好物にしなくても、食事の一部だけでも好物があると食べてくれる率があがります。
ついで食いを狙って入れておくものアリです。
高齢で、まったくといっていいほど食べなくなった方なら最低好物だけでも食べてカロリーを摂るというパターンもあります。
年齢の影響とあまり受けないのは、「甘味」と言われています。
かたや「塩味」は歳をとると若い時よりも感じにくくなります。高齢者は若い時よりも約12倍で同じ塩味を感じると言われています。高齢者は塩分の高めの食事を摂ることが多いのはそのためです。
甘味をうまく使うことで食べてくれる可能性があがります。
④ 器を考える
食事では、オレンジに見える電球色の下のほうがおいしく見えます。
光の映り具合を考えて、食器をうまく活用しておいしく見せることもできます
例えば米飯を入れるお茶碗は黒がいい。お米の白色が映えて美味しく見えます。
④ 亜鉛不足に注意する
一番大切な栄養素が亜鉛です。
亜鉛が足りていないと味覚が悪くなることがわかっています。治療としても使われるほどです。
亜鉛が多く含まれている食材は、
牡蠣・カニ・牛肉・レバー・卵・チーズなどです。
国民健康栄養調査によると1日あたりの亜鉛摂取量は、平成13年度8.5㎎だったのに、平成27年度は8.0㎎と減っています。
実際に亜鉛不足で食がおいしくなくなった患者さんがいました。亜鉛も大切です。
1日必要量は男9~10㎎、女7~8㎎です。
⑤ 味に強弱をつける
毎日の味付けでも味覚を強くすることができます。
濃い味付けを毎日繰り返してしまうと、どれも味の強弱がつかないために味を感じにくくなってしまいます。
味噌汁の濃さや、ソースをかけるなどが少ない日というのを設けておくと、味覚が鍛えられます。
微量の塩分でも感じることができるようになります。
いかがでしたか。
噛む力は死亡率に関係する。
食べることは生きることの根幹かもしれませんね。
いつまでも食事は美味しくいただきたいものです。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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