こんにちは、ピストンです。


今日のお話は「医療施設のリスクマネジメント」です。


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● 検査や治療・処置の際に患者が検査台から転落


日本医療機能評価機構は、医療機関での検査や治療・処置の際に患者が検査台から転落したケースの報告が2014年1月から18年6月までに9件あったことを明らかにした。転落によって患者が大腿骨頚部骨折や、くも膜下出血などを起こした事例があったことから、転落の危険性がある検査の場合は患者にそのことを説明した上で、身体をしっかり固定するよう求めている。 (記事:ナースプラス)


回復期リハビリテーション病棟に入院している患者さんも、検査を受けることがあります。

CTやレントゲン、心電図などの検査を受ける際、検査台に寝てもらうことになります。


通常は検査台の周りに誰かしら医療スタッフがいるので、寝ている患者さんに危険なことが起こらないように注意をしています。

このニュースのように検査台から転落するケースは、医療現場で働いている者としては考えられないことです。


でも起きたんですよね。


医療現場は時として予想外の出来事が起こります。


多くの入院患者さんが一つのフロアで寝泊まりしています。個性もそれぞれ。疾患もそれぞれ。


最近は医療の高度化、入院患者の高齢化などの医療環境が変化しているために、患者さんの安全確保が重要なリスクマネジメントになっています。


あっ、危ない!!という場面は確かにあります。



● 【ケース1 頭部MRI検査で検査台から転落】


頭部MRI検査のために看護師と診療放射線技師が患者を検査台へ移動したが、看護師は「患者が認知症」と診療放射線技師に伝えなかった。診療放射線技師はその患者と意思の疎通ができていると思ったため、患者の身体を固定しなかった。

撮影が始まって10分後、診療放射線技師は患者が検査台にいないことに気付き、検査室に入ると、患者が検査台の下の床にうずくまっているのを発見。その後、X線撮影をしたところ、右大腿骨頚部外側骨折を確認した。

(記事:ナースプラス)


頭部MRI検査は所用時間が20分~30分程度かかります。


検査中は「ガーン!ガーン!ガガガガガッ!」と、かなりうるさい音が鳴ります。


MRIやCT検査中は動いてはいけません。動くと画像が乱れてしまいはっきりと写りません。

せっかく撮ったのに画像診断に使えない場合もあります。


検査中に気分が悪くなったりする患者さんがいます。

閉所恐怖症や大音響に耐えられなくなり、途中でリタイアされる方もいます。



そのため絶対患者さんから眼を離してはいけないのです。


途中で何が起こるか分からないから、ガラス越しの操作ルームで放射線技師や付き添いの看護師等が見守っています。


今回の事例は記事を読む限りでは、病院側の過失を問われるケースになると考えます。



 【ケース2 頭部MRI検査で検査台から転落】


心臓カテーテル検査の際に患者は鎮静された状態だった。看護師が物を取りに行くため検査室を出て、戻ってきた時、患者は転落していた。

転落までの間、医師は患者に背中を向けて作業していたほか、臨床工学技士は機器の操作中で、診療放射線技師は画像を確認するなど、誰も患者の様子を見ていなかった。転落後に頭部をCT撮影した結果、患者が外傷性くも膜下出血を発症していることが分かった。

(記事:ナースプラス)


このケースも何だか不可解です。


病院によるのかもしれませんが、カテーテル検査時は結構なスタッフが揃っているのです。

2~3人とかではなく、少なくとも4~5人くらいはいるはずです。


カテーテル検査の場所は透視ができる個室で行います。


放射線を使用する場所なので、通常の壁よりも


特殊にできています。

そのため、遮音性も高い。

僕も部屋に入ったことがありますが、結構静かです。


もし患者さんが検査台から転落したら、その音で瞬時に気付くはず。

外傷性くも膜下出血を起こすほどの衝撃なら絶対何らかの音がしたはず。


もう一つ、放射線技師はガラス越しの操作ルームで操作しているのですが、医師がいる診察台とはマイクで音声が聞こえるようになっています。
音声を拾うだけでなく、カチャカチャと物を触っている処置の音も聞こえてきます。


それなのに「戻ってきた時、患者は転落していた」って、誰も気付かんかったんかーい。



鎮静しても患者さんが動くことってあるんです。


全身麻酔のオペ中でも、時として何らかの動きが出ることがあります。

実際、僕は全身麻酔のオペ中に少し動いた患者さんを見たことがあります。


検査中はそこまで麻酔がかかっているわけではないでしょうが、尚更動く可能性があると考えます。



なぜ誰も転落に気付かなかったのか不思議です。


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● リスクを知ってコントロールする


よく「医療安全」と呼ばれますが、これは日本と少数の国の言い方で世界は違います。


WHOを含めて多くの国では、「患者安全」と言います。


医療安全というと、患者の安全だけでなくすべての医療従事者を含めた広い意味で使われます。



リスクマネジメントは、4段階から成り立ちます。


① リスク識別(リスクを特定する)

業務の中でどのようなリスクがあるか、起こり得るリスクも考えられるだけ挙げます。

過去に起こった事例を含めて挙げます。


② リスク評価 

リスクの発生頻度と重大性を評価します。


③ リスク対応(リスクの発生を減らすかゼロにする)

リスク評価とリスク対応、それぞれのリスクを発生頻度と重大性によって、大きく4つのグループに分けます。


A:リスクを移転する(滅多にないことに対しては、保険の掛け金を払って対応する)

B:リスクを回避する(その業務からの撤退を考える)

C:リスクは保有する(リスクを保有していて、もし発生したらその都度支払いを考える)

D:リスクを最適化する(リスク因子を分けて、保有か移転する)


④ リスク費用算定

4つのグループをまとめて、リスク管理の費用は全部でどのくらいかを全体の活動のバランスを考えて算定する。



いままではリスク管理をするのは地位の高い人がやるものでした。

しかし最近は個人レベルのリスクマネジメントが重要になっています。


企業として責任を負うだけでなく、個人の医師や看護師のリスクマネジメントが問われているのです。

僕も看護師の医療事故の保険に加入しています。

もし、医療事故訴訟になったときの賠償責任金、訴訟費用などに備える看護師対象の保険です。

これは病院に入職した時に病院側から看護師に薦められる保険です。強制ではありませんが、結構多くの医師や看護師が加入しているはずです。


事故を起こそうとして起こしたわけではなくても、患者安全に絶対はない。


職場で誰に相談したらいいのかを明確にし、一人一人がリスクマネジメントを考えて行動していかなくてはいけません。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。









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