今日のお話は、「道で倒れている人を見つけたら」というお話です。
◆ 事故の瞬間に立ち会った時の話
昼頃だったと思います。
バス停のあるロータリーに道路からバスが入ろうとしたとき、歩道を歩いている中年女性をバスが跳ねました。
その女性は道路に仰向けに倒れていました。
たまたま近くにいた僕はその女性のところに駆け寄りました。
「大丈夫ですか⁈!」と声をかけると、
女性ははっきりとした声で「当たったあ」と言いました。
バスは女性を跳ねたところで停車しています。うしろは大渋滞です。
しかし、バスの前は跳ねた女性がいますから、前に行くこともできず、後ろは後続車でバックできず、その場に停まったままです。
運転手はすぐに降りてきて女性に駆け寄り、「すみません!大丈夫ですか?」と声をかけて、すぐに電話をかけました。
女性ははっきりした声でこちらの質問に答えることができ、開眼しています。
両手両足を動かすことができて特に痛がる様子もありません。
「大丈夫、大丈夫」と言えています。
僕は内心「これは、きっと大丈夫。おそらく大したことはなさそうだ」と直感しました。
ほどなく救急車がやってきて、女性を搬送していきました。
警察も来ました。
ほぼ同時にバスの職員もやってきて、バスの移動と交通整理に協力していました。
女性が救急車で搬送されていくのを見届けて僕はその場を離れました。
◆ 事故を目撃したらまずどうするのか
目撃したほうもかなりビックリしますが、まずは被害者に駆け寄り「大丈夫ですか?!」と大声をかけてください。
そこで開眼をせず返答もないようでしたら、かなり危ない状態だと推測してください。
声掛けをして眼を開けるようでしたら、そこまで緊急でもない可能性があるが、病院で検査は必ずしてください。
声掛けをして眼を開けるし、きちんと返答できるようでしたら、とりあえずはただちに命にかかわることはなさそうだと思ってもいいでしょう。ただし、病院受診は必ずしてください。
いずれの場合でも病院受診は必ずしなければいけません。
今のお話は緊急度の話ですので、「あ、これは安心していいから病院へ行かなくてもいいんだ」とは決して思わないようにお願いします。
大声を出して人手を集めます。
AED(除細動器)を持ってきてもらったり、救急車を呼んでもらったりします。
赤の他人であっても、頼むのに遠慮はいりません。
集まった人が年上であろうと遠慮はいりません。
緊急事態なのですから。
あと、人手が集まると被害者を安全な場所へ移動します。よほどのことがない限り、安全な場所へ移動させます。
道路に寝たままだと二次被害が発生するリスクがあるからです。
安全確保をしてからAEDを使用してください。
これは日本ACLS協会のBLS(一次救命処置)のプログラムにもあります。
AEDの使い方はこちらの記事をみてください↓
イメージ 写真:レスポンス
◆ 声掛けをして相手の反応から何が分かるのか?
声掛けをして眼を開けない場合、
もしくは声掛けをしても身体を叩いたり痛みを加えても眼を開けない場合は、
頭の緊急手術をしても予後が悪いことが多いのです。
要は何をしても眼を開けない場合は、緊急手術をしても良くならない可能性が高くなるということです。
事故でよく起こるのが、「急性硬膜下血腫」です。
眼を開けるか開けないかは、「急性硬膜下血腫」の手術をする際の判断材料になるのです。
何をしても眼を開けない場合は、頭に血が出て溜まっている状態を改善しようと、溜まっている血を抜く手術「血種除去術」をしても、良くならない可能性が高いのです。
逆に、声掛けや刺激で眼を開ける場合は、
これは手術をしたら改善できる可能性があるということで、手術適応なのです。
◆ ジャパン・コーマ・スケール(JCS)というものさしで意識レベルを判断します。
「ジャパン・コーマ・スケール」は通称「JCS(じぇいしーえす)」と言います。
TVドラマや映画などでよく出てくるフレーズです。
「コードブルー」のドラマでもよく出ていました。
看護師さんなど医療職の間では、JCS(じぇいしーえす)と呼ぶのが一般的です。
さっきの刺激に応じて一時的に開眼することを確認していたのは、
このジャパン・コーマ・スケール(JCS)を使って被害者の状態をみていたのです。
ジャパン・コーマ・スケールのコーマとは、
「昏睡」の意味です。
これは日本が考え出した「昏睡」の状態を測るものさしなのです。
そして、本来、頭部外傷や脳血管障害の急性期=脳ヘルニアの進行の評価に使うものです。
先ほどの「急性硬膜下血腫」の手術適応例であげたように、
「開眼するかしないか」
に重点を置いたものさしなのです。
「コーマ」という「昏睡」の言葉が使われているように、意識レベルがどのレベルなのかを判断するためのもので、先ほども言いましたように、開眼するかしないかに重点を置いたスケールのため、適応として不適切な病気や事例があるのが欠点です。
ちょっと難しい話になりましたが、
JCSは日本の医療現場に広く浸透しているスケールです。
多くの医療ドラマにも出てきますし、一般市民の方でも知っている方が多い。
「これを知らない看護師は看護師にあらず」、
と看護学校の先生から言われて、必死で覚えた記憶があります。
今思えば必死になって覚えるほどのものではなかったと思いますが、ピストンの看護学校時代は必死だったのです。
なんせ中年おっさんで学生をしていましたから。。覚えが悪かったんです。。。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
初出掲載:2018年11月26日 更新日:2019年11月17日
私の妻子が火災で、子供はJCS300、妻は心肺停止でしたよ。
ピストンさん おはようございます。
咄嗟(とっさ)のことがあると、なかなか的確に動けないので、事前にイメージを待っているといいですね。
数年前に地域の集まりで救命講習を受けて修了証をもらいました。時間が経つと忘れてきますが、一度も経験したことが無いよりも、ましかもしれません。
いっぷくさん >>ブログ拝読しております。自作の箸などご長男様に合った工夫をされていて感服しました。これからも陰ながらリハビリを応援しています。
SORIさん >>そういう現場では慣れていないとなかなか動けないものです。普段の訓練がものを言うのですが、それでもなかなか難しいですね。