今日は「徘徊」のお話です。


急性期であろうが回復期であろうが、高齢者の徘徊はあります。


最近はこの徘徊という言葉を忌み嫌うような風潮もあり、朝日新聞は今後「徘徊」という言葉を使わないと言っています。

辞書には「徘徊」とは、意味もなく歩き回るとかいうことらしいので、高齢者で認知症患者は、患者なりの意味があるのだから「徘徊」ではないというのです。


言葉の定義はさておき、この徘徊は僕たち看護師にとって、非常に困った問題の一つであることに変わりありません。


病棟から忽然と姿を消す認知症患者さん。

「いない!まさか!」と看護師が気づいたときはすでに遅し。

病院内で見つかればよいのですが、最悪は病院外に出てしまうことです。玄関近くで発見できればまだしも、辺りを探しても見つからないときは・・・・・


みんな冷や汗ものです。

大騒ぎです。

病院で働くスタッフの方なら、よく分かると思います。


さっきの言葉の定義うんぬんなんて、とっくにすっ飛んでます。

それどころではない、大変な事態です。


徘徊を100%防ぐことはできません。


ですから、徘徊したら、「早期に発見する方法」「死に至らない方法」をしっておくべきです。

早期に発見する方法として、一つはGPSがあります。

とっても便利ですが、問題点としてはGPSを搭載した機器を持ち歩かないといけないということです。

携帯電話などを持ち歩く習慣がなければダメです。

そこで靴にGPSをつけるという方法をとることもあります。


病院ではそこまでしません。

おそらく大抵の病院は、「お守り」の形をしたものを使っているのではないでしょうか。「お守り」の中身はセンサーです。

玄関などにセンサーがあり、そこに近づくと「お守り」センサーに反応してアラームでお知らせするものです。


ほかにも離院センサーはいろんな種類がありますので、病院や施設によってまちまちです。


さらに単純な方法としては「家の中・そして家から500m以内を徹底的に探す」ということです。

徘徊というと電車に乗って他の県に行ったなどというニュースやドラマもありますが、それは稀です。


死亡となってしまうような事件さえ、11人中8人が500m以内で発見されています。


つまり近場で見つかることがほとんどなのです。


「死に至らない」ためにも早期発見、早期の対処が必要になります。一度行方不明になると、3割の人が死亡してしまいます。死亡はけっして稀ではないのです。

そして、生存するためにはできれば翌日までに、最悪でも翌々日までに見つける必要があります。

実際に生存した人は7割が翌日に、残りの2割が翌々日までに見つかっていて、それ以降に見つかって生存している確率はかなり下がっています。


「家の中・そして家から500m以内を徹底的に探す」といっても、中には、病院からずっと遠くの自宅に帰っていたというケースもありますので、難しい問題です。


とにかく離院はご勘弁。

もうそれだけで、僕たちの通常業務ができなくなります。


そして徘徊している患者さんの身の安全も危なくなります。


僕たちも患者さんの気持ちに寄り添い、傾聴もしているのですが、こういう離院するような患者さんは何を言っても聞かないことが多いのです。


超人手不足の看護介護業界。一人のスタッフが付きっ切りという訳にはいかない。


しかもある程度の数のスタッフがいるのに、不思議とうまくすり抜けて病院から出ていきます。


監視社会もご勘弁ですが、行方不明になって死亡するといったことを防ぐためには、ある程度必要なのでしょうか。


それとも近い将来は、ドローンを飛ばして発見!!

AIロボットが捜索して見事発見!! なんて日が来るのかもしれませんね。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年10月30日   更新日:2019年11月17日

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