こんにちは、ピストンです。


今回は、患者さんのリハビリが進んできてそれに伴い移動形態を変えようとするときの病院ルールはどうなっているのかというお話です。


たとえば脳卒中を発症し急性期病院で治療を受けた患者さん。症状が落ち着きリハビリ効果を見込んで次は回復期病院に転院して来られます。

急性期病院でのリハビリ時間は回復期よりもずっと少ないので、まだ身体も麻痺などで動きがとても悪いのが一般的です。


回復期病院に転院して来られた当初は、移動形態を車いすから開始したり、ベッド上から開始したりすることがあります。


この移動形態を車いすから歩行器に、歩行器から杖にといったように独歩に近い形態にアップしていきます。


アップするときに主治医の許可が必要になります。病棟師長の許可が必要になり、受け持ち担当看護師の許可が必要になったりします。さらに担当リハビリスタッフの上司の許可も必要になります。

受け持ち担当看護師というのは患者さんの実質的な担当で、シフトでたまたま部屋を持った看護師ということではありません。


ざっとこれだけの許可を得て、ようやく患者さんは車いすから歩行器歩行が可能になってくるのです。


はっきり言って無駄なルールです。


まったく患者さんのことを考えていません。


このようなルールだとタイムリーに移動形態に変えられないのです。


主治医が休みの土日は変えれず現状のままになります。来週になります。

受け持ち看護師がシフトで休みなら次に出勤してくる日まで話しができないですし、その看護師の出勤日には、今度は受け持ちリハスタッフが休みかもしれません。

早く歩く練習をしたいのに「今日はあの担当が休みだから、また今度いる時に話をしてOKをもらおう」と、また今度今度になります。


担当するスタッフがそろっている日でも金曜日だと「もし土日に何かあったら困るから」と月曜日から新しい形態を開始しようとします。


ずるずると遅れていきます。今の患者さんに合ったリハビリメニューが。


歩行器や杖、独歩といった移動形態だけではなく、食べるリハビリも同じことです。

嚥下障害のある患者さんが、お粥からやわらかい食事へ、または普通の米飯へ。とろみ付きからとろみ無しへ。こうした食事形態の変化も同様にずるずると遅れていきます。


こうしたように、現在の患者さんの能力に応じたリハビリが遅れるどうなるのかと言いますと、

「患者さんが最適なリハビリをする機会を奪われる」ことになるのです。


1日移動形態や食事形態を現状のままにしていたら、その分「できる」リハビリ訓練をする機会が失われてしまう。

歩行器歩行が可能なのに来週からとなると、それまでの歩行器歩行をする機会を失います。 米飯が食べられるのにお粥のままだと、普通飯を食べるという訓練をする機会を失います。


経鼻経管栄養チューブが入っていて注入食の患者さんが、口から食べてみようというときも同じです。1日開始が遅れると、「食べる」というリハビリをする機会を失います。

これは、患者さんにとって大変なデメリットです。失礼なことだと思います。


食べる高齢者ベッド上 イメージ.jpg

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我々は専門職です。

特にリハビリスタッフはその分野の専門家です。

看護師も患者の能力について評価もできます。観察力もあります。

専門家たちが「よし、大丈夫。この患者さんならできる」「トライしてみる価値がある」と判断したのなら、すぐにやってみるべきです。


僕が職場のスタッフに言いたいのは、あなたたちは一人一人が専門家なのだということです。だったらもっと自分の評価に自信を持ってほしいのです。誰かがいないからとか、今日は休みだからとかではなく、今からでも新しいリハビリメニューをすることが患者さんにとって最適だと判断したのなら、やるべきです。

病院ですから患者さん一人で居るわけでなのです。いつも周りにスタッフがいます。「これは危ないな」と思ったらいつでも中止できるし、変更できます。


ちなみに前に勤めていた病院では、もっとタイムリーにスピーディーに患者さんに合った形態に変えることができていました。


看護師がその日のうちに変更したり、リハスタッフが変更したりしていました。もちろん、変更したことは周知していました。

患者さんの能力に合わせてリハビリをする機会を逃さないようにしていました。

食べられると判断したら食事形態を考えて今から食事を出しました。

とろみが必要と判断したら、とろみを付けました。

逆にムセが酷かったり、覚醒が悪いのが続くと誤嚥予防にその場の判断で経鼻経管チューブを入れました。

そうした現場のすばやい判断と行動で患者さんの現在の能力に合ったケアができていました。

また看護師やリハスタッフも、こういうことをしていると、見る目が養われていきます。

観察力が鍛えられますし、最適に素早く判断するという訓練になり、専門性も上がります。


食べる高齢者 イメージ.png

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担当医もすべてを見ているわけではありませんし、一人の医師が何人もの患者を担当しています。リハスタッフも医師からリハビリを包括的に依頼されているのですから、細かなことは専門家として判断していくべきです。

看護師も看護は医師の指示なくできるのですから、細かなことは専門家として判断していくべきです。

もちろん医師や他のスタッフと相談するなというわけではありません。相談や意見は大切です。しかし、一番は患者さんのことを考えることですから、患者さんの大切なリハビリ時間を失うことは避けたいです。


もしあなたの大切な家族やあなた自身が患者だったら、 歩けるのに「まだ歩くな」とされると嫌ですし不信感を持つでしょう? 食べられるのに「食べるな」とされるとどうでしょうか。 食べる能力がないのなら、まだ分かりますよ。 でも食べる能力があるのに、ずっと経鼻経管栄養チューブのままだったら・・・


回復期リハビリテーション病棟は急性期と違って月単位で入院していることがありますから、たった1日遅れたくらいと思うかもしれません。

しかし、患者さんにとって1日は大切です。1日食べることを延ばすと、「食べる」というリハビリを1日しないことになります。リハビリをする機会を奪っているのです。


僕たちは一人一人が専門家です。プロフェッショナルとして、誰のためのリハビリなのかを考えていきたいと思います。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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