筋ジストロフィー患者への虐待について。ほんのちょっと手からずれるとナースコールが押せない患者が多い。ほんの数ミリが患者にとっては大事なのだ。しかし、その数ミリを叶え続けるためには、看護師は圧倒的に足りない。https://t.co/vLR92tmJJA
— ふるたによしひさ@看護師×医療Webメディア (@yoshihisanurse) March 28, 2022
筋ジストロフィー患者への虐待についてのレポートがあります。
結果は虐待はけっこうある、ということです。
◆ 【病棟】筋ジストロフィー患者への看護介護はこんな感じです
筋ジストロフィーは、筋肉が壊れていく病気で難病です。
現在の医学では治す方法はありません。
全身の筋肉が壊れていきますので、やがて日常生活が送れなくなります。
全身の筋肉がなくなってきて、ガリガリになります。
指がかろうじてほんの少し動かせる人は多いです。
口や喉の筋肉も壊れていきますので、誤嚥もしやすくなります。
ボクは看護学生のとき、筋ジストロフィー病棟に行きました。
そこの病棟の筋ジストロフィー患者さんたちは、寝たきりでした。
パソコンを自宅から持ってきて、寝ながら、わずかに動く指で特殊なマウスを操作して、パソコンで動画などを楽しんでいました。
その手の位置が、ほんの数ミリずれると操作ができなくなります。
ほんの数ミリです。
患者さんにとっては、その数ミリの位置の修正が非常に大事なのです。
1~2ミリ動かしては、
「これでどうですか?」「もうちょっと」
「これでどうですか?」「もうちょっと右」
「これでどうですか?」「もうちょっと右」
「これでどうですか?」「ちょっと戻して」
「これでどうですか?」「ちょっと右」
「これでどうですか?」「うーん、うん。これで」
という感じです。
看護師が患者の手を動かす幅は1~2ミリずつです。
ミリ単位での体位変換が必要なのです。
これで本人にとってはマウス操作がしやすい位置に手を置けました。
片手だけでこういうやりとりをします。
これを両手両足でやります。
首の位置もそうです。
おむつ交換のとき、
お風呂のあと、
着替えのとき、
食事のとき、
食事のあと、
歯磨きのとき、
寝ているときの体位変換のとき、
なにかで体が少し動いたら、数ミリ単位で体位の修正をおこないます。
本人がもっとも安楽な姿勢をキープするためです。
本人は指ぐらいしか動かせないからです。
どうですか?
患者本人も大変ですが、
看護介護をする側も多大な労力が必要になります。
◆ 【病棟】筋ジストロフィー患者への虐待、なぜ?
上記ツイートリンク先の報告によりますと、
「殴るとか、口に粘着テープを貼られたとか」、これは論外ですね。
あとは、「言葉の暴力」が多いそうです。
「ナースコールを押してもすぐに来てくれなかった」とかもあります。
暴言暴力は論外です。
「ナースコールを押してもすぐに来てくれなかった」というのは、うーん、難しいですね。
看護師もナースコールが鳴ったらすぐに行こうとします。
行かなくっちゃいけない、と叩き込まれています。
鳴ると自然と反応します。
しかし、すぐに行けないことが多々あります。
他の患者のおむつ交換をしている時とか、行けません。
着替えているときも、行けません。
他の患者の対応をしているときは、基本的に行けません。
その対応が終ってから、
「そういえばあの部屋が鳴っていたな」
と思い出して、行くことはあります。
これは筋ジストロフィー病棟に限ったことではありませんが、行けないことはあります。
でも、後で行くようにします。
看護師の数は少ないので、どうしてもこういう場面はよくあります。
特に筋ジストロフィー患者のケアは通常よりも時間がかかるので、ナースコールが鳴っても行けないことは多いです。
ボクは実際に筋ジストロフィー病棟にいたから分かります。
無理な場面がほんとうに多かったです。
だって、マジで骨が折れそうなんです!
関節が固まっていて、ガリガリの細い細い体なんです。
シャツ1着を着るだけでも、そうとうな緊張とテクニックが必要です。
だからケアに時間がかかります。
それでナースコールがジャンジャン鳴ると、イライラするのでしょう。
それじゃあいけないのでしょうけど、
現実にはもっとスタッフを増やすしか、改善は期待できないのかもしれません。
◆ 異性介助で泣いた
女性の筋ジストロフィー患者で「男性の介助スタッフが来て、泣いた」というのがあります。
女性患者だから、介助をするスタッフは「女性スタッフ」でやってほしかったということです。
これは筋ジストロフィー病棟にかぎらず、どこの病棟でもあります。
「男性スタッフ禁止」
いわゆる「男禁」というものです。
これは、ねえ。
分かりますよ、特に若い女性なら、そう思うでしょう。
しかし、スタッフがいないときはどうしようもないです。
本当に人手不足なので、男性スタッフしかいない時はあります。
分かりますよ。
分かりますけど、逆にどうしたらいいんでしょう?
今回のお風呂のときだけ、家族に病院に来てもらってやってもらうとか?
男性スタッフのときは、お風呂をあきらめるとか?着替えをあきらめるとか?
まぁそういう女性患者さんもいますけど…。ねえ。
やはり医療介護の人手不足を解消するしかないのかもしれません。
それでは最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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