タイトルにもあるように、この本は非行少年たちのことを書いています。

著者の宮口幸治氏は精神科医です。

公立精神科病院勤務のあと、医療少年院で働くことになり、著者は犯罪を犯した少年たちに関わっていきます。

そこで衝撃の経験をすることになるのです。

私も読んで、衝撃を受けました。


◆ 【感想】『ケーキの切れない非行少年たち』は、読めば衝撃の内容だった



今まで私はおすすめ本をご紹介しましたが、どれもネタばれしないように注意しながら紹介をしてきました。

しかし、この本は衝撃すぎて、書いているとネタばれしそうで怖い…。


ある少年に模写をしてもらいます。一つの複雑図形を見ながら手元の紙に写すという課題です。


彼はすんなりと課題に一生懸命とりくんでくれたのですが、そこで生涯忘れ得ない衝撃的な体験をしました。


彼が模写した図形は、元の図形と全く違うゆがんだ図形を書きました。


これを見た時のショックはいまだに忘れられません。中略:このように歪んで見えるということは、”世の中のこと全てが歪んで見えている可能性がある”ということなのです。




そして見る力がこれだけ弱いとおそらく聞く力もかなり弱くて、我々大人のいう事がほとんど聞き取れないか、聞き取れてもゆがんで聞こえている可能性があるのです。



宮口氏は”ひょっとしたら、これが彼の非行の原因になっているのではないか”と直感したというのです。

これは彼が今まで、どれほど生きにくい生活をしていたのかを示唆しています。

これを何とかしないと彼の再非行は防げない、と宮口氏は言っています。


非行少年のなかで何が起きているのか?

気づかずに「不真面目だ」「やる気がない」と厳しい指導をしていても、かえって悪くなるだけ。



凶悪犯罪をおこなった少年に、なぜそんなことをおこなったのかと尋ねても、難しすぎてその理由を答えられないという子がかなりいたのです。




更生のためには、自分のやった非行としっかりと向き合うこと、被害者のことも考えて内省すること、自己洞察などが必要ですが、そもそもその力がないのです。
つまり、「反省以前の問題」なのです。



これでは被害者も浮かばれませんよね。


◆ 非行少年に共通する特徴がある。



簡単な足し算や引き算ができない。

漢字が読めない。

簡単な図形を写せない。

短い文章すら復唱できない。


こうした少年が医療少年院に多くいます。



見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで勉強が苦手というだけでなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗したり、イジメに遭ったりしていたんです。
それが非行の原因にもなっている。



日本地図をみて、「自分の住んでいるところはどこ?」と聞いても分からない。

「今の総理大臣は誰?」と聞いても、分からない。

でも、そのような彼らに、”苦手なことは?”と聞くと、みんな口をそろえて

「勉強」「人と話すこと」

と答えるそうです。


しかし、このような非行少年たちは小学校では「厄介な子」として扱われるだけで、支援が必要であっても気づかれることはほとんどない。


学校で「厄介な子」としてだけ扱われた少年たちが、そのまま社会に出てさらに高度なことを求められるが、結局できない。

後先のことを想像する力もないので、盗むとか殴るとか、簡単にできることをやる。

そして反省する力がないので、周りからみるとまるで反省していないかのように見える。


これは本当に難しい問題です。

学校の先生も親も、気付かないんです。

支援なしに、そのまま社会に出してしまう。

宮口氏は勉強ができないとされる彼らも、実は勉強に飢えていると言います。

でも「できない子」として適切な支援なしに、そのまま脱落していくのです。


◆ 子どもへの社会面、学習面、身体面の三支援を。



通常、非行少年の面接では、

「なぜ非行をやったのか」

「被害者に対してどう思っているのか」

ということをメインに聞くことが多いのですが、実はそういうことを聞いても更生にはあまり役に立たないことが分ってきたそうです。


非行少年たちには三支援が必要です。


もう、目から鱗。


そうだったのか…


私も知らないことだらけ。とても勉強になりました。


勉強は受験のためだけではなく、設問の意味するところを読み取る能力や、想像力をフル回転してどの漢字や単語を当てはめるのか、要約する能力、どの公式を使えば解けるのか、これを鍛えることで「人間形成」をしているんです。


教育の大切さがよく分かりますし、自己への気づきと自己評価の向上がカギなのですね。


まだ読まれていない方はぜひその衝撃を感じてください。

薄い本ですので、サクッと読めます。

そして単に勉強ができない子ということでは解決しないし、単に反省を求めてもダメという難しい現実があることを知ることになります。本著には”対策”も書いてあります。

教育に携わる方だけでなく、子どもの教育に関心がある方にぜひ読んでいただきたい一冊です。





本著『ケーキの切れない非行少年たち』のなかに出てくる故・岡本茂樹氏の著書です。
タイトルが、これまた衝撃的。あわせて読みたい!




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。