もし脳卒中になって後遺症が残ったら、体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。
脳は神秘的でとても大切な臓器です。
もしそこにダメージが発生すると、身体にさまざまな影響を及ぼします。
脳卒中の医療的研究は日本のみならず、世界中でたくさんあります。その論文を読むよりも、実際に脳卒中になった患者さんの生の声のほうが、「脳卒中になるとどうなるのか?」がよく分かります。
本書は実際の医師である山田規畝子さんが、自身の脳卒中体験を書いた、脳卒中のリアルです。
自身が経験された脳卒中で、何が起こったのか?
包み隠さず発信されている内容は、大変貴重な資料といえます。
◆ リアルその①:脳出血を2回起こし、何ができなくなったのか?
失った最大のものは、整形外科医という職業。
著者は脳出血を3回起こしています。
脳卒中は再発しやすい病気です。しかも再発すればするほど、予後が悪くなります。また、麻痺などの後遺症も強く残るようになります。
脳卒中を3回も起こすと、なんらかの後遺症はまず残ると思っていい。
詳しい症状は本書の記するところに任せるとして、働き盛りの方が脳卒中になって重い後遺症が残ると、仕事をどうしするのかという問題に直面します。
◆リアルその②:麻痺や高次脳機能障害がある人が考えていること。
やさしくない街。世間の冷たい風を感じる。
患者のやる気をそがないで。
患者のやる気をそがないで。
著者も述べているように、健常者には気付かないバリアが街にはいっぱいあります。
障がい者になったからこそ、不便さがよく分かる。
また、障がい者用の対策があるのに、それが機能していないことがあります。
たとえば、点字ブロックの上に平気で立っている人とか。できないことに対する、世間の冷たい対応とか。
リハビリ職は専門職として患者に的確な指導やアドバイスをするものですが、心無い言葉を発してしまうスタッフが少なからずいると言います。
「それじゃできませんよ」
「そんなことじゃあ、やっていけない」
など、患者のやる気をそいでしまう対応をするスタッフがいるとのこと。
本書はリハビリ職の方にとっても、どういうことを留意して患者に接したらいいのかというヒントがあります。リハビリ職は自分のやり方が本当に患者の想いに沿ったものなのかという自問に駆られるでしょう。
もしリハビリ職の方で、患者とどういう対応をしていくのがよいのか悩んでいる方は、本書がいいお手本となるはずです。
◆リアルその③:周りの人の想像力が大事。障がい者と共に生きる社会へ。
普通の暮らしが最高のリハビリ
これは本当にそう思います。
病院でのリハビリ期間は約六ヶ月です。
ところが、例えば「失語」で二年以上のリハビリが必要と言われています。
たかが六ヶ月ではまだスタートしたばかりなのです。
なので、退院してからの工夫が大切というのが、読むとよく分かります。
これは多くの患者さんや、医療者にも知っておいてほしいことです。
退院して終わりじゃないんですね。
なので「がんばらないこと」を念頭に置いて、地道にリハビリを継続していくことが大切とあります。
著者の山田規畝子氏は本書のなかで、「何ができて、何ができない」のかカミングアウトしています。日常生活でも「これはできない」とはっきり言うことが大切と書いています。
できなくなったことを恥ずかしがる必要はないんですね。
医師の立場から、そして一人の脳出血患者の立場から、貴重なエピソードがあり、読み応えがあります。
脳卒中の解説も、素人が読んでも十分理解できるくらい平易に書いてありますので、安心して読み進めます。
とくに、脳卒中の方がいるご家族、看護師やリハビリ職といった脳卒中に関わる医療スタッフに読んでいただきたい本です。
きっと、患者の症状と思いが、もっとよく理解できようになります。この本はそのお手伝いをしてくれます。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。