アルツハイマー型認知症は、世界中に患者がいて、その数は年々増えています。
でもまだよく分からないことが多く、世界中の研究者がその予防や治療に日々研究をしています。
そもそも、昔はアルツハイマー病の診断自体があいまいで、病名を断定できない患者がかなりいました。今では病気の実態が分かってきたので、国際基準に従って診断ができるようになりました。
今回は、アルツハイマー病の今後の展望についてです。
◆ アルツハイマー病の脳には「βアミロイド(ベータアミロイド)」という悪い物質が溜まっている。
アルツハイマー病は脳に「β(ベータ)アミロイド」という物質が溜まることによって生じます。この「β(ベータ)アミロイド」はいわば毒です、毒。でもじつは健康な脳にも存在します。若い人にもあります。この毒をうまく駆除できないのが長年にわたり続くと、脳に蓄積していき、結果として、脳が委縮するなど認知症の症状が現れます。
「長年」というのは、「何十年」という時間です。
「β(ベータ)アミロイド」は、40歳くらいから脳内に溜まりはじめます。早い人なら、30歳くらいから溜まり始めると言われています。
80歳で発症した人は、そうとう前から溜まり続けていたという事ですから、かなりの量の「β(ベータ)アミロイド」が脳内に溜まっていることになります。そうなると、認知症を治療する=βアミロイドを取り除く、ということが難しい。90歳だと、ほぼすべての人に何らかの認知症があると言われていますから、それはこういう毒が脳内にかなり溜まっていることから分かります。
この「βアミロイド」は、神経細胞を破壊するくらい強い「毒性」を持っているのです。
そして年齢とともに脳内に蓄積されていくということです。もう一度いいます。健康な人にもあります。
◆ 「βアミロイド」をやっつける最新の研究とは。
アルツハイマー病の原因が「βアミロイド」だろうと言われているのは、
①「βアミロイド」が年齢とともに脳内に溜まってくること
②それが神経細胞を殺すほどの強い毒性を持っていること
③βアミロイドを過剰にする遺伝子を動物に導入すると、その動物が認知症によく似た症状を示すこと
これらのことが根拠となっているからです。
では肝心の研究ですが、その一。
「βアミロイドを、そもそも作られないようにする作戦」
βアミロイドを作る「γセクレターゼ」という酵素をブロックすることで、βアミロイドの蓄積を防せごうという作戦です。
現在、「γセクレターゼ阻害薬」という薬が開発中です。
ただし、γセクレターゼは、βアミロイドを作るだけではなくて、ほかにもいろいろな役割があるので、副作用がどう出るかが問題です。これからまだ研究を続けないと安全性がわかりません。
つぎに、「βアミロイドを分解する酵素を発見したので、それを使う作戦」
その酵素は「ネプリライシン」といいます。最近発見されました。
βアミロイドの毒を取り除いてくれる酵素です。この酵素をなんとか活性化して使えば、薬にできるのではないかという研究がされています。
最後に、「ワクチンを作る作戦」
βアミロイドが蓄積しているネズミの脳に、さらにβアミロイドを体外から投与すると、βアミロイドが減ることが分かりました。βアミロイドを与えると、βアミロイドに対する「抗体」ができるのではないかと考えられています。βアミロイドは、それ自体が毒ですから、免疫細胞が抗体を作り、脳からβアミロイドを駆逐するのだろうと考えられています。実際に、βアミロイドそのものではなく、βアミロイドに対する抗体を注射しても、βアミロイドは減ることが分かっています。
しかし、髄膜脳炎などの副作用があり、今後の研究が待たれます。
◆ 未来はもしかしたら、アルツハイマー病はなくなるかも。
この「ワクチン」はβアミロイドを駆逐できるだけでなく、認知症の症状もしっかりと回復することができるのが、実験で分かっています。
まだ副作用やいろいろ問題は残っていますが、もしかしたら、近いうちにアルツハイマー病はなくなるかもしれませんね。
ただ、現在は予防も治療もできないというのが正直なところで、認知症薬は治すのではなく、進行をゆるやかにするだけです。また、暴言暴力などの症状に対して、対処療法をしているにすぎず、抜本的な治療はありません。結局、一度認知症になったら、あとは進む一方なのです。
しかも、その進み具合がゆっくりなため、何年も介護が必要になるケースがあります。介護をする家族の負担は計り知れません。実際に介護をされたことがある方なら分かると思いますが、一人、たった一人の人間を介護するだけでも非常に大変なことなのです。
いまも世界中で認知症の研究はされています。早く治療法が確立できればいいなと思います。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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