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今の医療は「早期離床、早期リハビリテーション開始」が主流です。

私が以前脳神経外科の救急病院に勤めていたときも、ラクナ梗塞では入院翌日からリハビリテーションを開始していました。

SCUという脳卒中専門集中治療室に配属されてからも、大きな手術をしたあと、なるべく早期にリハビリテーションを開始していました。


ここで早期離床、早期リハビリテーションを始めるにあたり、気を付けないといけないことがあります。

それは血圧です。

◆ 血圧の低下に気を付ける

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早期離床でもっとも気を付けることは、血圧です。

この血圧は大きな病気や脳の病気をしたあとは、低下しやすい状態になっています。

ベッドで寝ている状態では血圧は安定しているが、起こして座ると一気に血圧が低下するという恐ろしいことが起こる可能性があります。


ですから、何でもかんでも「早く起こそう」というわけにはいきません。

特に脳の病気、脳卒中になられている患者さんの場合は、特に慎重に起こす必要があります。




◆ 脳は血圧を一定に保とうとする

脳はうまくできていまして、脳に流れる血流を一定にしようとして血圧を保つ機能があります。

この機能は「交感神経」と「自動調節能」です。

まずは交感神経です。寝ている状態から起き上がると、脚に溜まった血を血管を縮めたり、心臓からの血流を増やしたりして全身の血圧を一定に安定させようとします。これは交感神経が働いているからです。

ですので、寝ていても起きていても基本的に血圧は一定なのです。


もう一つは自動調節能です。「機能」と書き間違えたのではありません。最後の文字は能で正しいです。

これは血圧が変動しても、脳の血流を一定に保とうとする機能です。

一般的に血圧が50~150㎜Hgくらいまでは脳血流を一定に保ちます。

この二つのバリアーのおかげで、脳は安定した血流を受けることができるのです。


ところが脳卒中になると自動調節機能が壊れてしまい、血圧の変動が直接脳の血流に影響を与えてしまいます。

たとえば寝ている状態での血圧と、起きた時の血圧が30%低下したとすると、脳血流も30%低下したと考えられます。


これが早期離床時、または早期リハビリテーションを実施するときに気を付けないといけない理由になります。


早期リハビリテーションは患者さんの回復を促すことになり、有効な手段です。

しかし、こうした身体の変化があることをよく理解して、観察を強化しながら早期リハビリテーションを実施していきましょう。


もしご家族さんのなかに脳卒中等で入院されていて、リハビリがゆっくりだなあと感じるのであれば、もしかしたら、こうした身体の変化に慎重になっている可能性があります。

個人差がありますが、急な変化に弱い状態になっているので、無理せずにその人にあったリハビリを行う必要があります。


◆ まとめ

・脳卒中等を発症すると脳血流を一定に保つ機能が壊れるため、急な動きに身体が対応できない可能性がある。

・早期離床、早期リハビリテーションは大切です。しかし、上記のように注意深く観察をする必要があります。

・その人にあったペースでリハビリをしていく。でも根底には早期にベッドから離れるようにアプローチをすることは大切です。


それではでは最後まで読んでくださってありがとうございました。



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