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「分かりやすい脳梗塞の治療」第二弾です。

今回はt-PAという薬をつかった治療法です。

それでは始めます。

◆t-PAという血栓を溶かす治療薬

最近よく聞く治療法として、t-PAという薬をつかった血栓溶解療法があります。血栓を溶かしてしまう治療です。

脳の血管に詰まった血栓が溶ければ、血流が戻っていかにも治りそうな治療です。


t-PAは血栓を溶かすplasminという分子を活性化させる薬で血栓を溶かしてしまいます。


脳の血管が詰まると、その先の脳神経細胞への血流が途絶えて細胞はダメージを受けます。このダメージは程度があります。完全に血流が途絶えた神経細胞はものの数分で死にますが、ほかの血管から血流が若干残っている神経細胞は死には至らず、機能を停止しているまるで冬眠のような状態になります。これを「ペナンブラ」といいます。

ペナンブラは死にそうでまだ死んでいない脳の部分です。数時間以内に血流が戻れば生き残ることができます。もちろん長時間の血流が途絶えるとそのまま死んでしまいます。

t-PAの血栓溶解療法の目的は、このペナンブラを救うことなのです。


◆ 発症から4.5時間以内の治療が有効です

以前は発症してから3時間以内とされていましたが、いまでは4.5時間以内なら有効とされています。

t-PAのしおう使用までに与えられた4.5時間という時間は、長いように聞こえるかもしれませんが、現実はとても厳しいのです。


t-PAは血栓を溶かしますが、脳出血を起こすこともある、実はとてもリスクの大きい治療です。

うまくいったときのメリットは大きいのですが、とても危険を伴う治療となりますから、開始までに本人や家族に充分な説明をして、同意をもらわなければなりません。

またこの薬を使用できない病気や今飲んでいる薬の種類など、適応の除外基準がいろいろあるため、それらをしっかりと情報収集して評価し、確認をするのに1時間以上かかることがあります。

そうすると発症後3.5時間以内には病院に搬送されないと間に合わなくなります。

倒れているのを発見された場合、いつが発症か分かりません。いつ倒れたのかもわからないからです。


日本では脳梗塞全体の2~3%です。もしかしたら最新のデータではもう少し高いかもしれません。

t-PAは高度な技術がある脳外科の病院で行われるので、脳外科がある病院ならどこでもやってくれるというわけではありません。


もう一度言いますが、t-PAは脳出血を起こす可能性が高いため、とてもリスクのある治療です。

適応基準も厳しく、すべての脳梗塞患者さんに使えるというわけではありません。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。