さて今回も脳の神秘に触れていきましょう。
「分かりやすい脳の基本」、第3弾です。
◆ 脳はとても贅沢な器官
脳は体のなかでもっとも血流が豊富な器官の一つです。体重のわずか1.5~2%程度の重さにもかかわらず、脳は全身へ流れる血液のおよそ15%をも必要としています。
全身で消費する酸素の20%ほどを脳が使っています。
ブドウ糖は80%が消費されています。
これほどの大量のエネルギーを必要としているのは、非常に多くの神経細胞やグリア細胞が集まっているからです。
(神経細胞・グリア細胞)→「分かりやすい脳の基本 ⑴」
大きさの割にはものすごい量の燃料を必要とし、非常に燃費の悪い器官といえます。
常に大量のエネルギーを必要としている脳は、補給が途絶えるとすぐに死んでしまいます。
エネルギー消費が非常に多く、ものすごい贅沢な組織ですよね。
それだけのエネルギーを脳は貯めておくことができません。そうです、スタミナがないのです。
◆ 脳は食わず嫌い
たとえば血流が完全に途絶えて補給が断たれると、ものの数分で脳の細胞は死んでしまいます。およそ20秒前後で酸素が底をつき、5分ほどで糖などのエネルギー源も底をつくからです。心臓が止まったときなるべく早く心臓マッサージをはじめないと助からないのはこのためです。
このスタミナのなさの大きな要因は、脳の神経細胞が食わず嫌いな性質を持っていることです。
脳がエネルギーとして使えるのはブドウ糖だけです。
体の細胞のエネルギー源として最も一般的なのはブドウ糖などの糖類で、他にも脂肪やアミノ酸などもエネルギーにできます。
しかし脳はブドウ糖しか食べません。とっても食わず嫌い王なのです。
◆ 脳は薬剤などが入ってくるのを選ぶ
脳はブドウ糖しか消費しない、つまり脳細胞のなかに入ってこないと言いました。
これはブドウ糖に限らず、薬剤などあらゆる物質についてもそうです。
脳には「血液脳関門」というバリアーがあって、血管から脳へと物が通行するのに制限をかけています。
大きさや性質によってはこのバリアーを通れません。
脳はさまざまな化学物質から保護しているんですね。
でも通れる物質もありますから、なんでもブロックしているわけではありません。
◆ 一度死んでしまった脳神経細胞は、基本的にはもう元に戻りません
脳への酸素やエネルギーの供給が断たれ、一度死んでしまった神経細胞は、基本的にはもう元に戻りません。
幼い小児の場合には、特別に脳のほかの部分が埋め合わせをするような形で回復することもありますが、大人で脳の一部が死んでしまった場合、それによって失った機能が回復することはまずありません。
また、失われた脳の神経細胞を再生させるという壮大な治療法の研究は進んでいますが、いまだに実用化への道は遠いようです。
脳は実にもろく、かけがえのないものです。
◆ 脳のダメージによる機能回復について
以前は、機能の回復は数か月から半年が限度で、そのあとはピークに達し、それ以上の回復は得られないと考えられていました。
ところが、脳の可塑性が機能回復に影響していることがわかり、半年以上経っても機能回復の可能性が期待できることが分かってきています。
脳は極端な食わず嫌いで、スタミナが無く、一度死んだ細胞は元に戻りません。
しかし、リハビリテーションにより長期的な継続をすることで、機能回復する可能性があることが分かっています。「脳卒中が発症してから6ヶ月だ・・・もうリハビリやっても無駄だろう。」というのは昔の話です。勉強不足です。いまは違います。だからあきらめずにリハビリを継続することが大切なのです。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
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