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◆ 高齢者がリハビリを嫌がられることがある

リハビリで入院されている高齢患者さんで、リハビリを拒否されることがあります。

毎回拒否されるわけではなく、ときに拒否されることがあります。

私も何回もそういうことに遭遇しました。

リハビリスタッフが来て「いまからリハビリですよ」と言うと、「行かん。リハビリなんかせん!絶対しない」と拒否されることを何度も見てきました。

これはリハスタッフからするとけっこう心がへこむんです。

しかしそうは言っても拒否されるのは何か理由があるから

患者さんの気持ちを理解することは、いつも意識して持つようにしないといけません。


実際にリハビリを拒否されている患者さんに直接聞いてみた

これは私が実際にリハビリを拒否されている患者さんに直接聞いたことです。

リハビリを拒否するといって興奮していた後、患者さんが落ち着いたときに聞いてみました。

結構な数の患者さんに聞いたところ、

拒否される理由は

①ここがどういうところかわかっていない。

②リハビリをすることの意味をわかっていない。自分が病人だと認識していない。

③体調不良

④はやく家に帰ることしか頭にない。リハビリをすると入院を受け入れたことになるから意地になっている。


①②は認知症(軽度を含む)の方が多い。③④は認知症の診断はないがちょっとあやしい方。それと認知機能がしっかりしている方が多い。

拒否されるのが多いのは、①②の方が③④に比べて多い。①②>③④


◆ 経験上、認知が落ちている人は拒否されやすい

認知症は中核症状といって記憶障害があります。

特に最近のことは忘れやすいのです。昔のことは比較的覚えているものです。

20歳前後くらいの記憶が残りやすいと言われています。だから、高齢者って戦争の話をよくしませんか?あれはちょうどそのあたりの歳だったから。もちろん、強烈に脳裏に焼き付いているのでしょうが、あれくらいの歳は記憶に残りやすいからということもあります。


でも短期記憶は苦手です。

昨日の晩御飯は何を食べましたか?と聞いてみてください。

答えられないと思います。

場所や目的もそうです。

いま入院している病院の名前が言えないと思います。絶対に前の病院から、家族から、本人に知らされています。「次は〇〇病院。リハビリをしっかりやって、また戻ってこれるようにがんばろう」と言われているはずです。

家族とともに前病院からリハビリ病院に転院してきますからね。


認知能力が落ちている方は入院中に、「家族を呼べー!!帰る!家族が心配している。こんなところにいることを知らせないと!」と自分は家族の知らないうちに変なところに連れてこられたと思っている方はたくさんいます。

看護師、介護士さんなら誰でも経験があるはずです。それくらいこのパターンは多いのです。。


◆ 対応としては「信頼と根気」で関わっていく

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あんまり激しく拒否されるし、嫌な言い方で拒否されるし、怒鳴られるし、蹴られるし、スタッフがイライラしてつい「帰れない!入院しているんだから!」と売り言葉に買い言葉になったりするのを遭遇したことがあります。しかし例え真実であってもビシッと言うとかえってよくありません。相手はケンカした、嫌はことを怒鳴られたという記憶がずっと残ります。このスタッフはなんか嫌なやつだということだけが残ります。

もっというと、「ここにいるスタッフは全部敵だ」という感覚が残ります。

イライラしても後々のことを考えると、まずはその人の言葉をよく聞くこと。

できれば別の静かな場所で二人きりで話を聞いてあげること。「この人は味方のようだ」と思ってもらえたら、あとの対応が楽になります。

それと笑顔。笑顔は大事です。

高齢者の特徴で難聴の方は非常に多いのです。私たち若い者では想像できないくらい耳が遠い高齢者は多いのです。そんな高齢者は話していることが分からないから孤独で不安です。若い人の言っている言い方も分からないことがあります。最近の言葉も分かりません。流行語大賞に出てくる言葉はまず分からない。

でも笑顔は分かります。相手が笑顔で自分に話しかけてくれているのなら、悪いことを言っているのではないと本能でわかります。怒るようなことではないと分かります。悪い気分にもなりません。ですから、笑顔で接することは非常に大切なのです。認知症の方は、笑顔で接するとうれしいものなのです。

イライラするのも分かりますが、そこはグッとこらえて、後々のことを考えて笑顔で余裕のある態度で接するようにしましょう。


このようにリハビリを嫌がる高齢者は非常に多いのが現状です。

個人的には80代・とくに90代になって何カ月も入院してまでリハビリをみっちりやることに疑問もあります。自分が90歳になったら、はたしてそこまでリハビリをするか?と思ったりします。そりゃあ嫌でしょう。ゆっくりしたいでしょう。ただでさえちょっと運動するとしんどいんですから。毎日強制的にリハビリをされることを考えると、それはそれはしんどいと思います。嫌になるのもわかります。

◆ 私の見解。とりあえずリハビリ病院へ、はやめよう

病院側はリハビリ単位といって、どれだけの単位をしなければいけないと基準があり、診療報酬にも影響します。高齢者が嫌だといっても、無理やりリハビリを行うこともあります。個人的には非常に胸が痛みます。


私の見解では、誰でも彼でも入院を受け入れるのではなく、どうしてもリハビリが必要なら通院リハビリにするとか、訪問リハビリにするとかして、その人にあったリハビリ方法を考えればいいと思います。

しかし、現実には90歳でも、強度の認知症でもリハビリ入院をしてきます。適応の患者さんならいいと思いますが、こういう患者さんは入院すると結局体調が悪くなって家に帰れるはずが帰れなくなるパターンが多いのです。

高齢者は入院すると弱ることが非常に多いのです。入院すると良くなると思っている家族が多いですが、超高齢になると逆です。全員がそうなるとは言いませんが、入院が引き金になってガクッとくる方は非常に多いのです。

認知症は環境の変化に弱いのです。入院すると混乱します。夜はせん妄を起こします。そして薬を盛られます。もう数えきれないほど、このパターンを見てきました。家族もこうしたことをよく知っておく必要があります。


「帰りたい、帰りたい、なんでこんなとこに連れてこられたんや・・」と言っているのをみると、本当にこの人は入院してまでリハビリをする必要があるのか?と思います。

家族もこうした現状を知ってほしいと思います。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。



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