今日は、患者さんの「握力」はどうやって測るのか?についてお話をします。
そんなの握力計を使えばいいじゃんと思うかもしれませんが、握力計を使わずに患者さんの握力が日常生活に困るくらい弱いのか、または困らない程度の握力があるのかを判別するための方法です。
でも握力ってなんだか地味な感じのする能力で、普段はあんまり意識していない能力でしょうか?
たしかに握力計を使えばいいのかもしれませんが、病室で患者さんの握力を診ようとしたらそんなの無いですよね。
いちいち握力計を探して持ってくるのも面倒だし。
そこで、フィジカルアセスメントです。
僕はこの前、あるセミナーに参加して勉強してきました。
名古屋大学大学院医学系研究科 臨床アセスメント看護学分野教授 山内豊明先生の 「フィジカルアセスメント」のセミナーです。
とても興味深く、面白いセミナーでした。
フィジカルアセスメントの第一人者の先生です。
本屋では様々なフィジカルアセスメントの本があり、その中で山内先生の書いた本がたくさんあります。
山内先生の「フィジカルアセスメント」の勉強会が大阪で開催され参加しました。
そこで山内先生から実際にやり方を教えてもらいました。
それをここでご紹介します。
◆ 実際に握力のフィジカルアセスメントをやってみましょう。
ではさっそくフィジカルアセスメントというだけあって、
道具や器械を使わずに患者さんの能力をみてみましょう。
写真では僕一人でやっていますが、実際は患者さんと二人でやってくださいね。
まずあなたは人差し指と中指の二本の指をそろえて出してください。
このように二本指を出して、患者さんに握ってもらいます。
次にこの二本の指を患者さんに握ってもらいます。
この二本指を離さないように患者さんにしっかり握ってもらいます。
「この二本の指を握ってください。握ったら離さないようにしっかりと持ってください。僕が引っこ抜こうとして指を動かしますけど、離さないでくださいね」
と言ってあなたは自分の指を引っこ抜こうとしてください。
■患者さんがあなたの二本指を離さないのであれば日常生活に困らない程度の握力がある。
■患者さんがあなたの二本指を離してしまうと日常生活に困るの弱い握力。
ということになります。
あなたの差し出す指は一本なら細すぎ、三本なら太すぎです。
あなたの出す指は、二本指が一番しっくりきます。
一度患者さんにやってみてください。
◆ 「患者さんの握力をどう評価し、今後につなげていくか?」アセスメントのやり方。
もし二本指を握ってもらい指を引き抜いた時に保持できないようでしたら弱い握力ということになりますから、退院しても不自由なことになります。
場合によっては危ないこともあるかもしれません。
例えば熱いお茶が入ったコップを保持できないとか、ガラスコップや食器を持てずに床に落として割れるとか、危ないこともあるかもしれません。
また仕事などで重いものを持てなかったりして退院後の仕事についてあらかじめ考えることができます。
カンファレンスなどでこうしたことを家族や本人に伝えることも大切です。
弱い握力ならば家に帰ってから不便で危ないだろうし、もう少し期限まで入院してリハビリを頑張りましょうと提案ができます。
家族から「ここの看護師はしっかり観てくれているな、退院後のことをよく考えてくれているな」と思われることでしょう。
フィジカルアセスメントは握力だけに限らず、患者の今の状態をアセスメントするために大切な技術です。
また異常の早期発見にもつながります。
看護師としてはしっかり身に付けておきたい分野です。
特に回復期リハビリテーション病棟では、急性期と違って医療機器が少ないですし、自宅退院に向けて患者さんの力の出力など、フィジカルアセスメントにより患者さんの現状を把握することは大事です。
急性期と違って回復期リハビリテーション病棟は技術が育たないとかよく言われますが、こうしたフィジカルアセスメントの力をしっかり身に付けることで観察力が高まります。やりがいも生まれます。
急性期の看護師に比べてなんら劣らない観察力とアセスメント力を身に付けることは可能です。
回復期リハビリテーション病棟では、実生活のイメージをたくましくして、患者さんの安全と質の高い生活を考えているのです。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。
初出掲載:2018年11月4日 更新日:2019年11月16日
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