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先日、勤務している病院の薬剤師さんと立ち話をしていました。

何の話をしていたかというと、今話題の薬「アビガン」について。

抗インフルエンザ薬「アビガン」

これが新型コロナに効くということで、連日ニュースで話題になっていますよね。

きっと読者の皆さんも名前くらいは知っている方が多いと思います。

報道でこんな薬ですよと説明もされていますが、いまいちよく分からないことないですか。

ちょっと簡単にご説明します。

「アビガン」ってどんな薬なの?


◆ もともとは「怖くて使えない薬」



【「アビガン」は国から製造販売の許可を得ている】

これだけを読むとほかの薬のように医師が処方して使える薬という印象をうけると思います。

しかしそうではありません。

「アビガン」って、いままで聞いたことないでしょ?

いままで自分や家族や友人がインフルエンザにかかったとき、

「アビガンを処方されたよ」

って言う人はいなかったはずです。

そうですよね。

じゃあなんで誰も見たことがない薬なの?

それは…

危なすぎて国の許可を得た場合しか使えない薬だから。

危ないから普通に流通していないんです。


「国が使用を認めた時に使える」


これにより「アビガン」はよほどの特殊な状況でないと使うことができません。

「アビガン」の取扱説明書にも書いてあります。


なぜか?

動物実験で奇形が生まれています。

受精杯の死亡が確認されています。

痛風の方は、尿酸値が高くなることがあります。

他の抗インフルエンザ薬と同様、服用後の異常行動が示唆されています。

「アビガン」は母乳にも含まれることが分かっています。

「アビガン」は精液にも含まれることが分かっています。


こわくない?

こわいですよね。

いくら妊娠の可能性がない人だとしても、使うのがこわい。

だから一般に流通していないんです。


どうしてもこれでないと助からない状況の患者さん。

他の抗インフルエンザ薬を試してもだめ、耐性ができて薬が効かないときなど、どうしようもないときに国に使用許可を取って使える薬です。


2014年に承認された「アビガン」

その製造は、厚生労働大臣の要請がないかぎりは、製造などをおこなわないことを条件に承認されています。

もしかりに「アビガン」を使用するときは、本人、家族の同意書にサインが必要です。


承認されたけど、怖くて使えない薬「アビガン」

ちなみに日本国内で使用実績はありません。


こういうことを勤務先の薬剤師と立ち話をしていました。

ボクたち医療従事者は知っているので、「えー、こんな怖い薬を使うんだ」と心配になります。

ね、怖いんです「アビガン」て。


◆ 副作用をとるか、治るにかけるか



結局はこのまま死を待つくらいなら、副作用がこわいけど使おうというわけです。

なので、おそらく重傷者メインで使用することになると考えられます。


でもそれでも使おうということですので、ウイルスには有効な結果を重視したのでしょう。

「でもインフルエンザ治療薬がどうして新型コロナにも効くの?」

と疑問に思う人がいると思います。


ウイルスというのは、増殖する仕組みが決まっているんです。

パターンがあるんです。

人の遺伝子はDNA

ウイルスの遺伝子はRNA

DNAは二重らせん構造、RNAは一本構造。

DNAは遺伝子情報にエラーが生じても、もう一本正しいのがあるから修正できます。

だから変異というのが起こりにくい。

RNAは一本しかないから、エラーが生じたら修復できない、

だから変異しちゃう。

インフルエンザが毎年変異するのはRNAだからです。


そのRNAが増えていく仕組みがパターンがあります。

ウイルスには増えていく過程に、共通の仕組みがあります。

インフルエンザウイルスもコロナウイルスも同じウイルスなので、増殖する仕組みが同じ。

なので、インフルエンザ治療薬の「アビガン」も新型コロナに効くというわけです。


でも副作用がこわいので、同意書にサインが必要です。

そんなこわい薬は使いたくないのが本音ですけど、死ぬくらいなら使おうかということです。


さて、この「アビガン」、物質特許はすでに切れています。

なので、中国など他国が後発医薬品として製造可能です。

きっとかの国のことだから、ジェネリック品を作ってきて大儲けするつもりでしょう。


こうした事情も知っておくと、より詳しく流れが分かります。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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