一般的に脳卒中リハビリテーションの流れは、急性期、回復期、維持期(生活期)に分けられます。

脳卒中を発症→救急病院で治療(急性期)→回復期リハビリ病院でリハビリに専念(回復期)→退院し自宅で通院や訪問リハ等でリハビリを継続(維持期)。ざっとこういう流れになります。

こうしてみると、脳卒中を発症し救急車で救急病院に搬送されてから自宅に帰るまで、かなりの月日が経過してしまうことが一般的です。

脳卒中には麻痺や高次脳機能障害の後遺症が残ることが多く、長いリハビリの旅が始まります。

今回は脳卒中リハビリテーションの流れを解説します。








◆ 急性期ではまずベッドサイドから早期リハビリテーションを開始します。



重症度によってリハビリの開始時期は変ってきますが、状態が落ち着いてきた時点で早期にリハビリを開始します。

昔は「脳卒中は動かすな」という考えが一流の医師の間でも信じられていました。しかしこれは間違いということが分かっています。現在の脳卒中リハビリテーションは早期リハビリが鉄則です。そのほうがいろいろと体にいいことがあるからです。

長く寝ていると必ず体が弱ります。特に足腰の弱りはすごく早いのです。一週間寝たきりだと立つとフラフラです。ろくに歩けなくなります。呼吸筋、胃腸の動きなど体のあちこちが弱ってきます。

麻痺のリハビリを開始するのですが、これ以前に元々の筋肉が落ちてしまいます。

こうしたことから今では急性期から早期リハビリをスタートさせます。


SCU(脳卒中専門集中治療室)でさえ、早期にリハビリを開始します。

たとえば脳梗塞で比較的軽い脳梗塞(ラクナ梗塞)であれば、入院してきた翌日にはリハビリを始めます。

点滴をいっぱいぶら下げながらでも、リハビリをします。


ある程度症状が落ち着くと、麻痺や高次脳機能障害などが残存しているのなら、更なるリハビリテーションを行うために回復期リハビリテーション病院へ転院していくことになります。


急性期にいる患者さんが全員回復期リハビリテーションへ行くということではありません。急性期病院で退院される方もいます。私が以前勤めていた救急病院でも、回復期にいくまでもなく自宅退院された方はたくさんいました。回復期リハビリテーションに行く必要がある患者が行く、ということです。


◆ 回復期では能力の最大限の回復と社会復帰を目指して更なるリハビリテーションを行います。



回復期リハビリテーション病棟では、医療側にチームが作られます。急性期よりも、よりチーム医療で動いていきます。

更なるリハビリを行うことになりますので、失った機能回復とともに、残された機能を存分に使って生活ができるようにも訓練をしていきます。必要があれば自宅にリハビリスタッフやケアマネージャー、リフォーム業者などを呼んで、患者や家族と一緒に住みやすい住環境を用意することもあります。みんなで一回自宅に行ってみようというわけです。

こうしたことをやりながら安全に自宅に帰れるように準備をしていきます。

やらなければならないことは、たくさんあります。

回復期は常に退院後を見据えて医療チームが動きます。

脳卒中の場合、最長六ヶ月間の入院が可能です。


◆ 維持期(生活期)では獲得した能力をできるだけ長期間維持するためにリハビリテーションを行います。



維持期という名称は最近は使われなくなってきました。維持という言葉を使うと、「もうこれ以上の回復は見込めない」という誤ったメッセージを与えてしまうからです。

維持期(生活期)になってもリハビリは終了ではありません。

生活の中でリハビリを続けていきます。この生活の中のリハビリが実は一番重要です。その人の生活に則した動きができるように、できるだけ楽に安全にスムーズに生活が送れるようにしていく必要があります。

通所リハや訪問リハ、最近では民間のリハビリテーション施設もあります。

療法士から自主トレの方法を教えてもらい、空いた時間に自分でリハビリをする方もいます。

生活の一部としてリハビリがあります。

逆にさぼろうと思えばいくらでもさぼれます。やっている人は一生懸命やっています。この辺はいかにもその人の生活ということでしょうか。


このように脳卒中リハビリテーションの流れは、切れ目なく続いていくのが一般的です。

長い長い旅です。

回復の程度はその人によります。リハビリのやり方もそうです。

最近はオーダーメイドリハビリが主流になってきました。その人の目標、性格、習慣、社会的役割、家の構造など患者を取り巻く環境全てを考慮したオーダーメイドリハビリです。


リハビリは急性期から早期に開始し、退院支援も含めた総合的なチーム医療が最近の大きな流れです。







それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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