看護師の業務は大きく二つから成り立っています。

「療養上の世話」と「診療の補助」です。

保健師助産師看護師法(保助看法)というとても長い名前の法律の第五条に書いてあります。

この「診療の補助」は医師が医療行為をするのを補助することで、医師の指示のもとで看護師が行う医療行為です。たとえば注射とか傷の手当とか。

もう一つの「診療上の世話」はいわゆる看病のことで、身体を拭いてあげたり排泄の世話をしたり食事を食べさせたりすることです。

法律ではこの「診療上の世話」は医師の指示がいりません。看護師が自分で考えて患者のお世話ができます。

ところがどこまでが診療上の世話でどこまでが医療行為か、グレーになっていることもあります。医療現場ではどこまで医師の指示をもらう必要があるのか判断に迷うことがあります。

実際の病棟ではどういう問題があるのでしょうか?








◆ 細かなことをいちいち医師に聞かないと動けない。

ある患者が「膝が痛い」と言っています。そこで医師に連絡して「疼痛時にはロキソニンを飲んでもらってください」と指示をもらいました。

同じ患者さんが夜に発熱しました。そこで医師に連絡すると「ロキソニンを言ってあるでしょ?それでいいんじゃないの?」と煙たそうに言われました。

いや、分かっているんですよ、こっちも。ロキソニンは疼痛と発熱の両方に効くのを。でもロキソニンは「疼痛時」という指示だったから、あえて発熱時にも使えるように指示をもらいに電話したんです。看護師は記録に「発熱時」にも使っていいよというのを書きたいんです。証拠のために。


安全のためでしょうが、医療人であれば分かり切っていることでも、今までそうしていたとしても、いちいちこの都度医師の指示をもらいます。たいして副作用のないようなことでもです。

保健師助産師看護師法第5条この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しく はじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。


保健師助産師看護師法第37条保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示 があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示 をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある 行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、 浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでな い。


それがいいとか悪いとかではなく、こういう法律上の制約があるために、患者さんから「あの薬がほしい」とか「何とかして欲しい」とか言われてもすぐに対応ができないことあります。いちいち指示をもらう必要があるからです。

でも看護師たちはなんとか早く対応したいと裏であれこれ連絡を取りながら対応しているはずです。そうしているうちにも別のナースコールが鳴って部屋へ行って別の対応をしたりと、一つのナースコールの裏に別の複数のナースコール対応が重なっていることが多い。


法律では、看護師は薬に関することや診療に使う機械を使ったりなどは医師の指示が必要です。

こればかりは勝手にするわけにはいきません。なので患者に一番近い看護師は、時に非常に面倒なことになる場合がありますが、仕方ありません。


◆ 療養上の世話でも、医師の指示が必要なことがある。



医師の指示がいらない「療養上の世話」の場合はどうでしょう。

基本的に看護師が中心になって行っています。

ですが100%看護師だけで、看護師の判断で、行っているわけではありません。


患者の病気はいろいろ、状態もいろいろ、なので療養のやり方にも医師の判断が必要な場合があります。


急性期では寝ていた方がいいのか、座るなど起こしてもいいのか。

風呂は入ってもいいのか?

回復期では、足の骨折ではいつまで足に体重をかけてはいけないのか。

などなど、病室で療養しているときでも、医師の判断が必要になる場面は少なくありません。


◆ 医師の指示がなければ医療スタッフはほとんど独自に何もできない。



これは先にご紹介した法律でそう定まっています。

なので、放射線技師は医師の指示がないとレントゲン写真1枚すら撮れませんし、リハビリスタッフはリハビリ開始することもできません。

こう考えると、看護師は少なくとも「療養上の世話」に関しては医師の指示がなくてもできる職種なので、ちょっとは自由に動ける資格職といえます。







それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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