こんにちは、ピストンです。

主に病院に入院している患者さんで、ベッドに寝ているときに、少し頭側を挙げている姿を見たことはありませんか。特に脳血管障害(脳卒中)の患者さんはそうやって、頭をギャッヂアップしていることがよくあります。だいたい、30度くらい挙げているでしょうか。ベッドが水平でないほうが多いと思います。
どうして少し頭側のベッドを挙げているのでしょうか?

これについてちゃんと答えられる方はどれくらいいるでしょう。

根拠はどこにあるのでしょうか。

一番の理由は、頭蓋内圧亢進を防ぐためです。

「脳卒中治療ガイドライン2015」ー 脳卒中急性期の呼吸・循環・代謝管理(4)体位 には、エビデンスが記載されています。
「1.低酸素血症、気道閉塞、誤嚥あるいは頭蓋内圧亢進がある場合は、15~30度の頭位挙上を考慮しても良い(グレードC1)」
「2.主幹動脈の閉塞や高度狭窄のある症例では、脳血流維持を目的として水平仰臥位をとることを考慮しても良い(グレードC1)」

つまり脳梗塞とかで血液の酸素化がよくなかったり、気道が詰まりそうだったり、誤嚥をしたり、頭蓋内圧が高くなってきたりすることを防ぐために、頭位挙上をしてもよいのです。
日本の脳卒中治療の現場では、主に頭蓋内圧亢進を防ぐために30度ほどの頭部ギャッヂアップをしていることが多いです。
そのようなわけで、急性期ならともかく、もう症状が落ち着いている回復期にいる患者さんでは、頭部挙上をする理由は弱くなるでしょう。この場合、挙上理由は、「そのほうが寝ている人からすると心地よいから」「少し頭側をあげたほうが、落ち着くから」というくらいの程度になります。ですから、やってはいけないわけではないけど、回復期ではそこまで頭部挙上についてうるさく言わなくてもいいのかもしれません。

ベッド頭位挙上.gif

たしか広島県の病院だったと記憶していますが、面白い看護研究をおこなった病院があります。
日本では、先ほど言ったように主に頭蓋内圧亢進を防ぐために頭部ギャッヂアップをしています。しかし、これはグローバルスタンダードではありません。世界共通認識ではないのです。

アジアをはじめ他国では、ベッドを水平に保つようにしています。その理由は「脳血流維持のため」です。頭を挙げることで、脳に流れる血流を悪くしてしまわないかという心配があり、そのような考えの国では頭側のベッドを挙げません。確かに脳卒中治療ガイドラインでも、そのようなことを書いています。頭部挙上について各国のやり方や考え方を調べた研究で、読んでいてとても興味をそそられて面白かったです。

回復期リハビリテーション病棟の患者さんでも、上記のように根拠がある場合は、頭部ギャッヂアップをしてもいいでしょう。しかしそれ以外の状況では、かならずしも頭側を挙げる必要性はないようです。やってはいけないわけでもないということです。

それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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