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医療職向けのカテゴリ記事一覧

SCU、回復期、ACLS、認知症ケア専門士、認定看護管理者ファースト、うつ病にさせないためのアドバイザー。医療的ケア教員。現役看護師だから書ける旬な情報を分かりやすく発信。

カテゴリ:医療職向け

夜勤あるある その1

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夜勤あるあるのdお話です。


よくあるのが、


「今日は暇ねー♪ コール少ないねー。このまま終わりたいなあ」 なんて言うと、先輩看護師から 「シーーー

―ッ!余計なことを言うんじゃないよ!」 と怒られる。



皆さんもよく聞きませんか?



● ジンクス① 「今夜はヒマだなあ」と言ってはいけない



これを言ってしまうとヒマが逃げる。。。。 そういう言い伝えがこの業界にあります。


「今夜はヒマだなあ」「コール少ないね」と言ってしまうと、 急にナースコールが鳴り響き、急変やら、転倒やら、なんだかんだと忙しくなる・・・・ なんと恐ろしいジンクスでしょう。


ピストンも経験をしました。


消灯時間を過ぎてしばらくしてから。 それまで全然ナースコールが鳴らなくて、静かな、穏やかな夜勤でした。


僕が悪かったんです。


つい、つい、言ってしまいました。 あの禁断の呪文を。



「いあやーー、今夜は当たりですね。全然コールが鳴らない。このまま朝までいってしまいたいなあ」


呪文が効いて、次の瞬間


「ピンピラポンポーン」(なんちゅうコール音)



キターーーーーー!!!!!


でもこのコールだけで、また静かになるさ、きっと・・・


さらに別の患者さんからもナースコール。



あああーー、ごめんなさい。(一緒に夜勤しているスタッフたちへ)



患者さんの対応をしている最中にまたナースコールが鳴る。




不思議なことに患者さんって、同じ時にナースコーを押すんです。


一人一人の患者さんはそんなこと知らないから、私一人しかナースコールを押していないと思っているから分からないでしょうけど、ナースコールを受け取る側からすると、本当に不思議なのです。



別にナースコールが嫌っていうわけではありませんよ。


重なるコールが不思議って話です。


恐るべしジンクス。



● ジンクス② 普段は静かに座っている患者さんが、なぜか動き出す



日中はナースステーションで車いすに静かに座っている患者さんがいます。


特に勝手に立ち上がって危ないこともなく、歩くのがおぼつかないのに急に立ち上がって歩き出そうとすることもなく、特に注意して目が離せないことはない静かな患者さんがいます。


自分から動こうとされないので特にセンサーなどを付けて安全確保をしていることはない患者さんです。


ところが・・・


夜ベッドで寝ていると思って安心していると、「ガチャン!!」と物音がして急いでベッドにいくと、



て、転倒しているううううーー!



なんで⁈ 普段全然動かない人なのにぃ⁈


夜勤のときに限って不思議と動かれる患者さんがいるのです。


夜勤はスタッフ数が極端に少なくなります。 だからどうしても昼間に比べて手薄になりがちです。


予め危険な行為をするかもしれないと予測される患者さんの場合は、センサーなどを用意して、転倒などを予防する策を施します。


最近はできるだけ抑制はしないでおこうという社会の流れというか、倫理観が広まっていますので、上記の患者さんのように「この患者さんは大丈夫、危なくない」とアセスメントされると抑制されないケースがあります。


でもそういう患者さんに限って、なぜか手薄になりがちな夜勤中にハッスルすることがあるんですよね。



ケガがなかったらまだ良かったです。


それだけ動けるということで、元気な証拠と喜ぶべきなのかもしれませんね。


ちなみに、こういう患者さんはナースコールを押すように指導しても、一人でベッドから出ようとしないように指導しても、まったく聞かないことがほとんどです。


それでも僕たちは粘り強く本人に指導をするのですが、結局ナースコールを押すことを根付かないことがあります。



● 夜勤あるあるのジンクスは本当か



数々の看護師サイトなどで紹介されているこの定番あるある。


その真相は?


僕の答えは、「毎月に数回はある!! ただし、誰の看護師や介護士に当たるかは運しだい」 ということです。


他にも夜勤ジンクスはあります。


今日はこの辺で。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


[ひらめき] こちらの記事もおススメリンク記事「夜勤あるある その2」

[ひらめき] こちらの記事もおススメリンク記事「夜勤入り前のあるある」

失敗してもやらないと上手くなりません

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急性期でも、回復期でも、どこの病棟にも仕事ができる人とできない(と思われてしまっている)人がいます。


今日の話は、病院では仕事ができない、どんくさい、失敗が多いと判断された人はやっていい業務を大幅に減らされてしまうというお話です。


◆ 仕事ができる人かできない人かは、なんとなく見た目で分かる⁈

「あ、この人はバリバリ仕事できるな」とか

「この子はちょっとどんまいだな」とか。


病院で働いていると、いわゆる「仕事ができない」と判断されてしまった人は、仕事をさせない方向で業務を割り振られてしまいます。


つまり他の同期の子に比べて、やってもいい業務が大幅に減らされてしまいます。


どんくさい子ほど仕事をさせません。


下手なことや苦手なことをやらせない方向に持っていきます。



まるでこれが常識のような感覚になっているように思えます。


病院という職場は一般企業と比べて「あれ、変だな」と思うやり方や考え方がたくさんあります。


僕は看護師になる前は多くの一般企業で働いていました。

正社員の営業マンが長かったのですが(いわゆるセールスマン)、飲食業や法務業や運送業や販売業やら数々の職業を経験してきました。 正社員以外のアルバイトも含めると、すごくたくさんの仕事をしてきましたし、現場も体験してきました。


病院の「どんくさいやつは仕事をさせない」「ヘマをすると業務から外す」という思考は、一般企業からするとおかしな思考です。


多少はそういうことも一般企業でもあるかもしれませんが、病院ほど極端に外すということは僕は見たことがありません。


一般企業でもいますよ、そりゃあ、どんくさい人は。仕事ができない人は。


でもさせるんです。怒られながらも、叱られながらも、歯を食いしばって現場に出ます。

上司もよほどのことがない限り仕事をさせます。

アドバイスを与え、コツを教え、時には一緒に同行して、「分からないことは何度でも聞け!」と言ってくれてその場で教えます。


下手だからこそ、上司は本人にもっともっとさせるんです。


知らないことや分からないことはその場で教えるんです。

「分かるまで家に帰るな!」「分かるまで何回でも聞け!」

とは、よく上司に言われたものです。


だって明日もそのお客様に会うんですから。お客さまのところに明日も行くんですから。

今日分かっていないとダメでしょう。

いつやるの?「今でしょ!」



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下手やどんくさいなら何度も何度もやるしかない。


イチローだって夜の校庭でバットの素振りをやっていたんです。

エジソンは何百回、何千回も失敗して発明したんです。

ケンタッキー・フライド・チキンの創業者カーネル・サンダースは、自分のチキンのレシピを買ってもらうのに1,000件も企業を回ったそうです。


失敗してもやらないと上手くなりません。


できるようになるには、他の人よりももっとやらないと。


そんなことみんな知っていることでしょう。


だから会社ではできないならできるようになるまで何度でもやらせます。

だってお客さんに迷惑がかかりますから。


でも病院は違うんです。そう思わないのです。


命がかかっているから?


いいえ、タクシー運転手だって、料理人だって、自動車整備者だって、建築関係だって、電気やガスの業者だって人の命がかかってますから!


人命を預かっている仕事なんて病院以外にいくらでもありますよ。


僕の結論は明確です。

できない人はどんどんさせろ、です。

仕事を外すなです。 やらせてもできないのは、まだ回数が少ないのです。不十分だからです。もっとさせるんです。

そしてしっかりと丁寧に根気よく教えることです。


「自分で調べてこい!」はダメ。

その場で教えること。


目の前に患者さんという最高の勉強材料(失礼な言い方ですみません)があるのに、それを使わないなんてもったいない。

しかも家に帰ったら勉強しませんから。


現場で学ぶことが頭に残るんです。


「いってきまーす」と玄関を出た自分よりも、

「ただいまー」って玄関をくぐった自分のほうが賢くなっている。

これがいい労働だと思うのです。

労働するほど、賢くなっていくのです。


一般社会はそうなのです。


一般企業から医療の世界に転職してきた人はみんな思っています。

「病院ておかしい世界だよな」って。


明日も患者さんは病棟にいるのです。明日も安全に療養できるように、今日の内に分からないことは分かるようにしていかないといけません。


まさに、

「いってきまーす」と玄関を出た自分よりも、

「ただいまー」って玄関をくぐった自分のほうが賢くなっている、なのです。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年11月11日   更新日:2019年11月17日

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なぜ高齢者は夜中に目が覚めるとベッドから出ようとするのか

こんにちは、ピストンです。


高齢患者さんは、なぜ目が覚めるとベッドから出ようとするのか?


夜勤。それは体力と眠気との戦い。それと高齢患者さんや認知症患者さん、高次脳機能患者さん、できるのにやらない患者さん、頻尿の患者さん・・・・・・・との戦い。


戦いというと看護師から絶対怒られると思いますが、現場感覚を持っている人なら分かりますよね。


夜勤の修羅場を。


まるでナイトサファリパーク。


ジュマンジ状態。


真っ暗な病棟の廊下を貞子のように這っている患者さんを見たことは、一度や二度ではありません。


夜の巷を徘徊する テレビ朝日.jpg

~夜の巷を徘徊する~ テレビ朝日


今日のお話は、高齢患者さんは、なぜ目が覚めるとベッドから出ようとするのか?ですので、そのことについて持論を述べたいと思います。



そう、高齢患者さんは目が覚めるとそのまま布団に入ったままモゾモゾしません。出ます!


一度ベッドから出ようとすると、もう止まりません。とにかく出ようとします。

説得しても無駄です。


何度も「誰かー!来てえー!」「柵とってえー」と叫んだりします。


柵を取ろうとガタガタ動かします。


「あ、まだこんな時間か・・・もうちょっと寝とこ」 て思いは皆無です。

「起きなきゃ!」って思うようです。


起きなくていいです!寝ててください!

夜は寝るためにあるんです!



大抵の病院や施設は朝の起床時間は6時なのですが、そのちょっと前に起き始めると看護師さんたちは嫌なのです。


たとえば5時とか5時30分とか、そんな時間は看護師さんたちは朝ごはんタイムなのです。


6時の起床時間から起こる怒涛の激務に備えて、体力や気力をチャージしている時間。


6時からの怒涛の激務に恐怖し怯えている時間。


「あー、もうこのまま帰りたい・・・」と思っている時間。


「患者さんは一人で起きて着替えてくれて、食堂に来て勝手にご飯たべてくれないかなあ・・」と思っている時間。


なのです。


それなのに、それなのに、高齢患者さんてば、目が覚めると最後。ベッドから出ようとしてきます。そういう患者さんに限って目が離せない危険な患者さんなのです。

僕たち看護師が見守りしている必要があるのです。

だから僕たち看護師が起こしに来るまで、ベッドで静かに寝ていてほしいのです。


でも分かってくれません。説得は無意味です。


若い時は途中で目が覚めたりしても、朝早く目が覚めても

「あー、もったいない。もっと寝ていよう。まだ布団から出たくないぃぃー!」ってなるのですがね。


睡眠 イメージ.jpg


自分で自立して何でもできる患者さんならいいですよ。別に起きて朝の身支度していても。


でも転倒しそうな危ない患者さんはとくに寝ててほしいです。


別に目が覚めててもいいから、大人しく布団に入っててほしい。僕らが起こしに来るまで。


夜勤明けの朝の看護師さんたちはこんな思いで仕事をしています。



だって、夜勤はスタッフ数が少ないので手薄になりがち、患者さんの身に危険があってはいけませんから(建前)。


だって、もう夜勤終わりで帰るときに、転倒等のインシデントレポートを書きたくないんですもん(本音)。


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握力のフィジカルアセスメント


今日は、患者さんの「握力」はどうやって測るのか?についてお話をします。


そんなの握力計を使えばいいじゃんと思うかもしれませんが、握力計を使わずに患者さんの握力が日常生活に困るくらい弱いのか、または困らない程度の握力があるのかを判別するための方法です。



でも握力ってなんだか地味な感じのする能力で、普段はあんまり意識していない能力でしょうか?


たしかに握力計を使えばいいのかもしれませんが、病室で患者さんの握力を診ようとしたらそんなの無いですよね。


いちいち握力計を探して持ってくるのも面倒だし。


そこで、フィジカルアセスメントです。


僕はこの前、あるセミナーに参加して勉強してきました。


名古屋大学大学院医学系研究科 臨床アセスメント看護学分野教授 山内豊明先生の 「フィジカルアセスメント」のセミナーです。


とても興味深く、面白いセミナーでした。


フィジカルアセスメントの第一人者の先生です。

本屋では様々なフィジカルアセスメントの本があり、その中で山内先生の書いた本がたくさんあります。


山内先生の「フィジカルアセスメント」の勉強会が大阪で開催され参加しました。

そこで山内先生から実際にやり方を教えてもらいました。

それをここでご紹介します。


◆ 実際に握力のフィジカルアセスメントをやってみましょう。

ではさっそくフィジカルアセスメントというだけあって、

道具や器械を使わずに患者さんの能力をみてみましょう。


写真では僕一人でやっていますが、実際は患者さんと二人でやってくださいね。


まずあなたは人差し指と中指の二本の指をそろえて出してください。


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このように二本指を出して、患者さんに握ってもらいます。


次にこの二本の指を患者さんに握ってもらいます。

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この二本指を離さないように患者さんにしっかり握ってもらいます。


「この二本の指を握ってください。握ったら離さないようにしっかりと持ってください。僕が引っこ抜こうとして指を動かしますけど、離さないでくださいね」

と言ってあなたは自分の指を引っこ抜こうとしてください。


■患者さんがあなたの二本指を離さないのであれば日常生活に困らない程度の握力がある。

■患者さんがあなたの二本指を離してしまうと日常生活に困るの弱い握力。


ということになります。

あなたの差し出す指は一本なら細すぎ、三本なら太すぎです。

あなたの出す指は二本指が一番しっくりきます。


一度患者さんにやってみてください。


◆ 「患者さんの握力をどう評価し、今後につなげていくか?」アセスメントのやり方。

もし二本指を握ってもらい指を引き抜いた時に保持できないようでしたら弱い握力ということになりますから、退院しても不自由なことになります。

場合によっては危ないこともあるかもしれません。

例えば熱いお茶が入ったコップを保持できないとか、ガラスコップや食器を持てずに床に落として割れるとか、危ないこともあるかもしれません。


また仕事などで重いものを持てなかったりして退院後の仕事についてあらかじめ考えることができます。


カンファレンスなどでこうしたことを家族や本人に伝えることも大切です。


弱い握力ならば家に帰ってから不便で危ないだろうし、もう少し期限まで入院してリハビリを頑張りましょうと提案ができます。


家族から「ここの看護師はしっかり観てくれているな、退院後のことをよく考えてくれているな」と思われることでしょう。



フィジカルアセスメントは握力だけに限らず、患者の今の状態をアセスメントするために大切な技術です。

また異常の早期発見にもつながります。


看護師としてはしっかり身に付けておきたい分野です。


特に回復期リハビリテーション病棟では、急性期と違って医療機器が少ないですし、自宅退院に向けて患者さんの力の出力など、フィジカルアセスメントにより患者さんの現状を把握することは大事です。


急性期と違って回復期リハビリテーション病棟は技術が育たないとかよく言われますが、こうしたフィジカルアセスメントの力をしっかり身に付けることで観察力が高まります。やりがいも生まれます。


急性期の看護師に比べてなんら劣らない観察力とアセスメント力を身に付けることは可能です。


回復期リハビリテーション病棟では、実生活のイメージをたくましくして、患者さんの安全と質の高い生活を考えているのです。



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年11月4日   更新日:2019年11月16日

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給料のお話

こんにちは、ピストンです。


看護師の給料はどれくらいなの?って世間の人は気になっているようで、

ネット上でそういうことを書いているのは多くあります。


そのネットに出ている看護師の給料額を見て

大抵の看護師はこう思うんじゃないですか

「えっ、高!わたしはそんなにもらってない。ていうか、周りの同期の子もわたしと同じくらいだし」


ネットに載っている看護師の給料額って、自分よりも高く載ってますよね。

そんなネットを見る看護師ってたいがい若い看護師で、まだ給料もそんなに高くない人が多いんです。

ネットのは平均額ですから。


前の病院では2交代制で月9回も夜勤をしたことがあって、そのときは、月収30万いきましたね。

手取りで。しかも2年目で。


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ではリハビリスタッフの方はどうなんでしょうか。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の方は、看護師よりも低いことが圧倒的に多いように思います。


いろいろ知人に聞いたりして調査すると。


リハビリスタッフと付き合っている女の子に彼の給料を聞くのが早いので、ときどき聞いたりするのですが、やはり看護師よりは低いです。


残業が少なかったら、1~2年目のリハビリスタッフで、月20万以下じゃないでしょうか。手取りで。

まあ、寮の部屋代とかも引かれている場合がありますが、それだともっと低くなるのです。


そんなことなので、給料に不満をもって病院を辞めていくリハビリスタッフは多いです。

じゃあ次はどこで働くの?というと、老健が多いです。


実は、病院よりも給料が高いとことはありますからね。


えっ、ピストンの給料は?って?


手取で〇〇〇です。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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患者がリハビリをする機会を逃すな

こんにちは、ピストンです。


今回は、患者さんのリハビリが進んできてそれに伴い移動形態を変えようとするときの病院ルールはどうなっているのかというお話です。


たとえば脳卒中を発症し急性期病院で治療を受けた患者さん。症状が落ち着きリハビリ効果を見込んで次は回復期病院に転院して来られます。

急性期病院でのリハビリ時間は回復期よりもずっと少ないので、まだ身体も麻痺などで動きがとても悪いのが一般的です。


回復期病院に転院して来られた当初は、移動形態を車いすから開始したり、ベッド上から開始したりすることがあります。


この移動形態を車いすから歩行器に、歩行器から杖にといったように独歩に近い形態にアップしていきます。


アップするときに主治医の許可が必要になります。病棟師長の許可が必要になり、受け持ち担当看護師の許可が必要になったりします。さらに担当リハビリスタッフの上司の許可も必要になります。

受け持ち担当看護師というのは患者さんの実質的な担当で、シフトでたまたま部屋を持った看護師ということではありません。


ざっとこれだけの許可を得て、ようやく患者さんは車いすから歩行器歩行が可能になってくるのです。


はっきり言って無駄なルールです。


まったく患者さんのことを考えていません。


このようなルールだとタイムリーに移動形態に変えられないのです。


主治医が休みの土日は変えれず現状のままになります。来週になります。

受け持ち看護師がシフトで休みなら次に出勤してくる日まで話しができないですし、その看護師の出勤日には、今度は受け持ちリハスタッフが休みかもしれません。

早く歩く練習をしたいのに「今日はあの担当が休みだから、また今度いる時に話をしてOKをもらおう」と、また今度今度になります。


担当するスタッフがそろっている日でも金曜日だと「もし土日に何かあったら困るから」と月曜日から新しい形態を開始しようとします。


ずるずると遅れていきます。今の患者さんに合ったリハビリメニューが。


歩行器や杖、独歩といった移動形態だけではなく、食べるリハビリも同じことです。

嚥下障害のある患者さんが、お粥からやわらかい食事へ、または普通の米飯へ。とろみ付きからとろみ無しへ。こうした食事形態の変化も同様にずるずると遅れていきます。


こうしたように、現在の患者さんの能力に応じたリハビリが遅れるどうなるのかと言いますと、

「患者さんが最適なリハビリをする機会を奪われる」ことになるのです。


1日移動形態や食事形態を現状のままにしていたら、その分「できる」リハビリ訓練をする機会が失われてしまう。

歩行器歩行が可能なのに来週からとなると、それまでの歩行器歩行をする機会を失います。 米飯が食べられるのにお粥のままだと、普通飯を食べるという訓練をする機会を失います。


経鼻経管栄養チューブが入っていて注入食の患者さんが、口から食べてみようというときも同じです。1日開始が遅れると、「食べる」というリハビリをする機会を失います。

これは、患者さんにとって大変なデメリットです。失礼なことだと思います。


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我々は専門職です。

特にリハビリスタッフはその分野の専門家です。

看護師も患者の能力について評価もできます。観察力もあります。

専門家たちが「よし、大丈夫。この患者さんならできる」「トライしてみる価値がある」と判断したのなら、すぐにやってみるべきです。


僕が職場のスタッフに言いたいのは、あなたたちは一人一人が専門家なのだということです。だったらもっと自分の評価に自信を持ってほしいのです。誰かがいないからとか、今日は休みだからとかではなく、今からでも新しいリハビリメニューをすることが患者さんにとって最適だと判断したのなら、やるべきです。

病院ですから患者さん一人で居るわけでなのです。いつも周りにスタッフがいます。「これは危ないな」と思ったらいつでも中止できるし、変更できます。


ちなみに前に勤めていた病院では、もっとタイムリーにスピーディーに患者さんに合った形態に変えることができていました。


看護師がその日のうちに変更したり、リハスタッフが変更したりしていました。もちろん、変更したことは周知していました。

患者さんの能力に合わせてリハビリをする機会を逃さないようにしていました。

食べられると判断したら食事形態を考えて今から食事を出しました。

とろみが必要と判断したら、とろみを付けました。

逆にムセが酷かったり、覚醒が悪いのが続くと誤嚥予防にその場の判断で経鼻経管チューブを入れました。

そうした現場のすばやい判断と行動で患者さんの現在の能力に合ったケアができていました。

また看護師やリハスタッフも、こういうことをしていると、見る目が養われていきます。

観察力が鍛えられますし、最適に素早く判断するという訓練になり、専門性も上がります。


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担当医もすべてを見ているわけではありませんし、一人の医師が何人もの患者を担当しています。リハスタッフも医師からリハビリを包括的に依頼されているのですから、細かなことは専門家として判断していくべきです。

看護師も看護は医師の指示なくできるのですから、細かなことは専門家として判断していくべきです。

もちろん医師や他のスタッフと相談するなというわけではありません。相談や意見は大切です。しかし、一番は患者さんのことを考えることですから、患者さんの大切なリハビリ時間を失うことは避けたいです。


もしあなたの大切な家族やあなた自身が患者だったら、 歩けるのに「まだ歩くな」とされると嫌ですし不信感を持つでしょう? 食べられるのに「食べるな」とされるとどうでしょうか。 食べる能力がないのなら、まだ分かりますよ。 でも食べる能力があるのに、ずっと経鼻経管栄養チューブのままだったら・・・


回復期リハビリテーション病棟は急性期と違って月単位で入院していることがありますから、たった1日遅れたくらいと思うかもしれません。

しかし、患者さんにとって1日は大切です。1日食べることを延ばすと、「食べる」というリハビリを1日しないことになります。リハビリをする機会を奪っているのです。


僕たちは一人一人が専門家です。プロフェッショナルとして、誰のためのリハビリなのかを考えていきたいと思います。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。


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リハスタッフが痰吸引をするのは、当然必要な業務です

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みなさんの病院では、リハビリスタッフが痰の吸引をしていますか?


私が前に勤めていた病院ではPT・OT・STさんすべてのリハ職が、吸引をしていました。

これ当然だと思っていましたが、転職したいまの病院では、リハ職は誰も吸引をしないんです。

これはびっくりしました。


周りのリハスタッフにどうして吸引をしないのか聞いてみると、

「リハの部長が吸引の必要性を分かっていない」

「痰吸引の必要とする患者がそんなに多くないから」

「どうしてなんですかね?わからないです」

「えっ、吸引してもいいんですか?」

など、さまざまな答えが返ってきました。


はっきり言ってみんな勉強不足です。勉強不足以外のなにものでもありません。


リハスタッフは吸引していいんです。当然の業務なのです。


◆ リハビリスタッフも吸引してOK。厚生労働省は認めています。

平成22年3月の厚生労働省の通達に、「チーム医療の推進について」というのがあります。


その通達の中に、

理学療法士(PT)について、

「理学療法の手法である『体位排痰法』等を安全かつ適切に実施する上で当然に必要となる行為である」


作業療法士(OT)について、

「食事訓練を実施する際、誤嚥に対応するために喀痰等の吸引が必要となるケースがあるので、食事訓練を安全かつ適切に実施する上で当然に必要となる行為である」


言語聴覚士(ST)について、

「嚥下訓練を実施する際、誤嚥に対応するために喀痰等の吸引が必要となるケースがあるので、嚥下訓練を安全かつ適切に実施する上で当然に必要となる行為である」


と明文化されています。


リハビリスタッフは、吸引が「当然に必要なる行為」なのです。


この通達は大事です。

とても重要なことが書いてあります。


リハビリスタッフも吸引は当然しなくっちゃいけないのです。


痰吸引が必要な患者が一人でもいるならば、吸引をしなくてはいけないのです。


対象患者の数の多少ではないのです。一人でも必要な患者さんがいれば、しなくてはならないのです。


STにいたっては、そもそも嚥下障害がある患者を受け入れて訓練しているわけですから、吸引ができないと、STも怖くて踏み込んだリハビリができない。

VF(嚥下造影)のときもSTが吸引できないから、看護師が吸引役でいるんです。


本当におかしなことです。


おかしなことをおかしいと言えない職場はブラックとしかいえません。

悲しいことです。


あれほど患者第一と言っておきながら、まったく患者のことを考えていません。

リハスタッフのことも考えていませんね。リハスタッフとして技術が磨けない。

もし何年かしてリハスタッフが転職したら、転職先の病院から

「あんた〇年も経験あんのに、吸引したことないの?嘘でしょ、どうやって嚥下のリハビリやってたの?」

というように言われるのが目に見えてます。

そのリハスタッフも屈辱ですよ。恥かきますよ。

うちの病院も恥かきますよ。


本当に高度なリハビリテーション病院を目指すのであれば、「当然に必要な」吸引をリハスタッフにさせてあげることです。

そしてリハスタッフももっと自分たちのことを勉強してほしい。

理不尽なことに負けないように。

論破できるように。


すべては患者さんのためです。


上層部がよりよい方向に変わってくれないと、みんなが困ります。

自らの首を絞めることになるでしょう。市民や医療職から選ばれない病院になる前に。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年10月6日   更新日:2019年11月15日


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カンファレンスでの話し方-受け持ちナースは堂々と話そう。カンファレンスでの話し方について。

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カンファレンスとは:

会議、協議、という意味です。


医療業界ではある患者の担当スタッフで会議をする「チームカンファレンス」

本人や家族を呼んで担当スタッフと治療やリハビリの進捗状況や今後の段取りなどを話す「(定期)カンファレンス」

病棟で亡くなられた患者の振り返りをして今後のケアに活かす「デスカンファレンス」

など、いろんなカンファレンスがあります。

ここでは本人や家族を呼んで担当スタッフと治療やリハビリの進捗状況や今後の段取りなどを話す「(定期)カンファレンス」のことについてのお話です。


◆ 回復期リハビリテーション病棟では頻繁にカンファレンスを開催している。

病院で働いているとカンファレンスの段取りをしたり、出席して患者や家族と現状を説明したりすることがあります。

カンファレンスの段取りや出席は、その患者の担当看護師がおこなうことが一般的だと思います。なかには相談員(社会福祉士)さんが段取りを組んでくれる病院もあります。


急性期病院ではそれほど頻繁にみんなが集まってカンファレンスをすることはないのですが、回復期リハビリテーション病棟では、頻繁にあります。

基本は月1回の開催をおこなうのですが、病棟にいる患者が全員が月1回の開催をしていると、毎日誰かがカンファレンスをしているような感じになります。

急性期ではそんなにやらなかったし、それでも特に大きな問題はなかったので、回復期でこんなにしょっちゅうカンファレンスをすることに違和感がありました。

「そんなに頻繁に集まらなくても…」

と思ったからです。

急性期病院ではそんなに開かなかったので、その感覚が残っていたのです。

 

そのカンファレンスですが、医師、看護師、リハビリスタッフ、相談員(社会福祉士)等が本人・家族に対して、入院してからどのような治療や関わりをしているのか、本人の現状はどうか、今後の予定、質問などに答えていくということをします。


◆ カンファレンスで話す時は堂々と患者さんのことを言えるようにしましょう。

医師はメモなどを見ずに患者のことをスラスラと話されます。まあ、主治医ですから当然でしょう。

看護師はといえば、多くの看護師はあらかじめ作っておいたメモを読み上げます。

リハスタッフはPT・OT・STと分かれて担当しているのを一人のリハスタッフで話しますので、他の担当リハスタッフのメモを読みます。 リハスタッフはこのように職種が分かれているので、メモの用意もわかります。


しかし、看護師は担当なわけですから、いちいちメモに用意しなくてもわかるのではないかと思ってしまいます。 自分がその日にどうしても出席できないので、代わりの看護師に出席してもらう場合は致し方ないのかもしれませんが、担当が出席するカンファレンスでは、メモを見ずに患者のことを話してもらいたいなあと思います。  


メモを読むと目線がメモのほうに向いて下にいきますし、患者や家族を見ないし、なにより「本当にうちの家族のことをわかっているの?あなた、担当看護師でしょ。」と家族が、不信感とまではいかなくても、いい感じはしないでしょう。  


メモを用意するのは当日に大事なことを抜けたり、うまく話せなかったりするのを防いだりすることが目的なのでしょうが、自分がしゃべるのはたかが数分です。

担当看護師ならばそれくらいのことをメモを用意しなくても、患者のことを話せるようにしておきたいものです。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2018年10月6日   更新日:2019年11月15日


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