脳梗塞の患者さんを観察するとには、何をどうみたらいいのでしょうか。
数々の参考書や看護の本がありますが、どれも同じようなことを書いてあります。
こうした本を読んで、いざ病棟の患者さんに接すると、目の前の患者さんには適応ではなかったり、
すっかり頭から飛んでいたり、読んで覚えているけどこれでいいのか不安だったりして、
十分な観察ができなかった経験があるはずです。
急性期での観察と回復期での観察ではちょっと看るところが違います。
今回は、回復期での脳梗塞の観察項目についてお話します。
◆ 回復期での脳梗塞看護の観察項目は?
① バイタルサイン(体温、脈拍、血圧)
② 麻痺の程度
③ 感覚鈍麻の程度
④ 糖尿病や片頭痛など今までから持っている病気や症状
⑤ 今までの生活状況
⑥ 趣味や大切にしていること
⑦ 排便状況
あれ?⑤とか⑥ってどこの本にも書いてなかったけど・・・
と思ったあなたはよく勉強している証拠です。
そうです。でもこれはあとで書きます。
まず、①バイタルサイン。
これは特に血圧に注目です。
急性期の脳梗塞では高い血圧を維持しますが、
回復期では違います。
主治医の方針にもよりますが、
おおむね140/90以下を目標としているはずです。
「脳卒中治療ガイドライン2015」の「脳梗塞慢性期 ⑴ 高血圧症」の項目に
ちゃんと書いてあります。
回復期に来ているとはいえ、まだ血圧が高かったり逆に低かったりと安定していない
患者さんもいらっしゃいます。
再発防止の観点からも、高血圧は治療していかなくてはなりません。
患者さんによっては、1日の血圧で朝型が高かったり、夜に低かったりと日内変動が
あります。
その場合日中のリハビリに影響がでることがあり、必要なら主治医に降圧剤の調整をして
もらったほうがいいことがあります。
できれば血圧測定値を入院中から「血圧手帳」に記入するのを始めて、
退院後も継続して血圧手帳に記入していけるように今から練習をしてほしい。
② 麻痺の程度
これは急性期であろうが回復期であろうが、必須です。
麻痺が分からないのに脳卒中患者の看護はできません。
麻痺が分からないのに脳卒中患者を看ることはできません。
麻痺の見方が分からないのなら、いますぐに勉強です。
勤めている病院が使っているスケールを使って麻痺を測るのがよいと思います。
MMTを使うのか、ブルンストロームステージを使うのか、
それは職場に聞いて確認してください。
もし看護師がほとんどどちらも使っていないのでしたら、
リハビリスタッフに麻痺には何のスケールを使っているのか聞けばいいです。
リハビリスタッフとスケールを合わせておくと、数字でお互いの共通認識がとれますので、
非常に便利であり、リハビリを進めていくのに有効です。
ベッドサイドでもリハビリスタッフがリハしている最中でもいいので、
麻痺の見方を身に付けましょう。
麻痺がみれるようになると、
車椅子のから歩行器へ、歩行器から杖へ、杖から独歩へ
など、リハビリの進み具合によって患者さんに合った歩行形態をリハビリスタッフと
同じ目線で相談できます。
メリットがたくさんありますから、まだ習得できていない方はぜひやりましょう。
③ 感覚鈍麻の程度
脳梗塞になって感覚が鈍くなることがあります。
麻痺側の腕や手、脚に感覚が鈍くなっていないかをみます。
目をつむってもらうか、塞いでもらって、実際に手や足を触ってみます。
今どこの部位を触っているのか分かるか?
触っている感覚はいつもどおりか、鈍いか?
完全に触っていることが分からなければ、重度の感覚障害があります。
もし熱いものが肌に触れていても気がつかず、大やけどをする危険性もあります。
ぶつけて傷がついても気付かないので危ないですよね。
見落とさないようにしましょう。
④ 糖尿病や片頭痛など今までから持っている病気や症状
「この患者さんはもともとはどうだったのか」を知ることは、
これからの入院生活と退院後の生活を考えるうえで大切です。
例えば糖尿病患者さんなら、いままでは自宅で血糖値を自己測定していたのか、
インスリン注射をしていたのか、それは自分で打っていたのか。
頭痛がよくある患者さんなら、もともと何年来の片頭痛があるのか、
このときの対処方法は何か、
膝が痛いといっている患者さんなら、それは入院前からあるのか、何年来か、
かかりつけ医で診てもらっているのか、その医師はどう言っているのか、
今までの生活の中でこの病気や症状とどう付き合ってきたのか?
今までの対応がよくなかったら、入院中に改善できるかもしれません。
主たる疾患以外のことも対応していくことで、安心して退院できます。
また再発予防にも一役買うことにもなります。
⑤ 今までの生活状況
これはとても大事です。
ぜひ患者さんやそのご家族に聴いてください。
今回の脳梗塞の原因が、ここに隠されている場合があります。
大抵の患者さんは、「油っこいものが好き」、「濃い味を好む」、
「寿司や刺身、とんかつや串カツ類は上からじゃんじゃんソースをかける」、
「おせんべいやおかき、スナック菓子といった塩分の多いものが好き」
「タバコを吸っている」、「酒、アルコールをよく飲んでいる」
「ストレスフルな仕事、役割、生活環境」、
「運動しない」
といった生活習慣を確認することです。
僕の経験上、脳梗塞になった人は上のいづれかに該当することがほとんどです。
長年の生活習慣が脳梗塞を引き起こすと考えられています。
脳出血にもこうした因果を言われることもあります。
これから二度と再発しないようにするために、こうした生活習慣の見直しは必要です。
本人だけでなく家族もしっかりと勉強してもらい、理解してもらうことが重要です。
なぜなら家族も同じ食事を食べていますし、だいたい似たような生活習慣を送って
いることがあるからです。
入院中にぜひ病気のことを学んでもらい、再発予防をしていってほしいと思います。
⑥ 趣味や大切にしていること
脳卒中だけではありませんが、突然倒れられたて、本人も家族も戸惑っています。
麻痺が強かったり、意識がもうろうとしていたりして、これから先
いったいどうなってしまうのか、今までも生活が吹っ飛んでしまうくらいの
大きなことが起こっているのです。
前の急性期病院から更に回復期病院にきて、約6ヶ月も入院することになるのです。
数か月の入院というだけで、かなりの時間を倒れてから自宅に帰らないでいるのです。
あの倒れた瞬間から。
すべてを放っておいたままです。
病気のストレス、これからのストレス、家や仕事場はいったいどうなっているのか、
不安や恐怖は計り知れません。
だからこそ、その人の大切にしていることを聞きたい。
リハビリが進んできたら、ぜひ趣味を病院でやってもらいたい。
釣りが好きなら、竿を振る動作をリハビリに入れたらいいのです。
好きなことをまたやるために、リハビリを励んでもらったらいいのです。
看護師との会話も好きなことなら嬉しそうにしゃべってくれます。
こうしたその人に寄り添っていくことが大切です。
⑦ 排便状況
入院を期に便秘になる方は大勢います。
元気なときや若いときは、便秘なんてまったく気にしなかったのに、
加齢や入院とともに便秘になることはよくあることです。
疾患の症状として便秘になることもありますが、
多くは加齢と入院です。
お通じのことを話すのは恥ずかしいと思う患者さんもいますが、
看護師は全員慣れていますから、患者さんが思うほど何も思っていません。
それよりも排便がないのに、浣腸やら座薬やら何かされるのを嫌がって、
わざと「今日も出ました」とウソを言う患者さんもたまにいます。
そんなことをしても後で分かるものなので、正直に言ってくださいね。
いかがでしたか?
観察項目は患者さんによっていろいろです。
上に書いた観察項目以外にも、その患者さんにとって大切な観察があるかもしれません。
まずは患者さんの状況をしっかり把握しましょう。
問題点や気になることがあったら、それが観察項目です。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。