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高齢になるとおしっこが近くなる「頻尿」という現象が起こることがあります。

よく聞きますよね「歳のせいで、トイレがちかくなっちゃって」という言葉を。

でもこれを放っておくと、あとでもっと大変なことになってしまうかもしれません。


タダの頻尿では終わらず、睡眠がろくにできないくらいのスーパー頻尿になることがあります。

そうなると、本人も周りも眠れないばかりか、生活の質も下がってしまいかねません。

このような状態になると、本人はある種のパニック状態です。

おしっこのことしか考えられなくなる。「さっきトイレに行ったばかりだよ」と説得しても無駄です。

なんとしてもトイレトイレ、他人の言うことを聞かなくなります。

では、こうした頻尿に対してどのように関わっていけばいいのでしょうか。


◆ 泌尿器科に受診する場合。

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これがまっとうな方法だと思います。

いまは頻尿に対する薬がいろいろあります。

そして頻尿にも種類があります。その種類を特定してもらい最適な薬を処方してもらう。これが一番安全ですし、もし薬の効果がなかったら医師に相談ができるので、あとあとのことを考えると、きちんと泌尿器科にかかることをおすすめします。


ただ、誰でも処方薬が効くというわけではありません。

私は病棟で頻尿の患者さんをたくさんみてきましたが、頻尿の薬が効くかどうかは患者によって違います。中にはまったく効果が出ない患者さんがいます。その場合は医師に相談して薬を変えてもらうなどの改善をしていくことになります。

かたや、薬を服用してすぐに頻尿が改善した患者さんもいますので、本当にいろいろです。


◆ さっきトイレに行ったばかりなのに、すぐに忘れてしまう認知症の場合。

入院患者さんをみていると、認知症をもっている高齢患者さんで頻尿の方は特に深刻です。

特に夜間。

なぜ深刻なのかといいますと、「今さっきトイレに行ったことを忘れる」からです。

トイレから戻ってきても、すぐにまたナースコール。もしくはセンサーが反応します。

「えっ!さっき行ったじゃない。ほんの前、さっきだよ」

ひどい時は10分間隔で、ナースコールが鳴ります。こういう患者さんは認知症も進んでおり別の疾患もあって一人では歩いてトイレに行けない方が多い。なので、看護師や介護士がそのつど介助することになります。


あまりに頻繁にトイレ、トイレとなると周りが疲弊してしまう。

介助する人の消耗が激しくなり、負担があまりに大きくなります。

で、本人はほとんど尿がでません。出てもほんのチョロット。それくらいの尿量ならわざわざ何回もトイレに行く必要がないくらいの極少量です。

それなのに何度も何度もトイレ、トイレ。

出ないのに、トイレ、トイレ。

そして介助をする人がイライラしてしまう。消耗してしまう。


本人も熟睡ができません。


こういう人は夜間にスーパー頻尿になりやすいんです。

昼間も頻尿といえばそうなんですが、夜よりかはマシです。明らかに夜になると、スーパー頻尿になりやすい。

で、お互い休まらないので困ったことになります。


◆ こういうスーパー頻尿の患者さんは、「ある種のパニック状態」にあると考えましょう。

パニック状態…つまり「混乱している状態」と言えます。

これは昼間はそれほど頻尿ではないのに、夜間にスーパー頻尿になるということから察することができます。

つまり昼間はリハビリがあったり、誰かと話したり、作業があったりと「おしっこから気が反れる」ことが多いから、昼間はおしっこから気が反れやすい。

かたや夜間はベッドで一人じっとしているので、一旦「おしっこ」とスイッチが入ると止められない。他に気を紛らわすことが起きないので、おしっこしか考えなくなる。

しかも認知症のためにさっきトイレに行ったことを忘れる。

あまりに頻尿のためにスタッフが「さっきトイレに行きましたよ。ほんの10分前に」と言っても本人は「行ってない。嘘だあ」と信じません。こういうことは本当にあります。しかも高齢で認知症があるとよけいこの傾向がひどくなります。

結果として周りの介護をする人がつぶされます。消耗してしまいます。


◆ ではこうした「パニック状態」の患者さんへの対応はどうしたらいいのでしょうか?

それは起きているとおしっこしか考えないパニック状態ですので、「寝かす」ことです。

まずは主治医に相談して夜しっかり寝かすように薬を処方してもらいましょう。

マイスリーやレンドルミンなど眠りを誘発するタイプを処方されることもありますが、デパスなど気分を落ち着かせるタイプの薬を処方されることもあります。その患者に合わせて選択されます。どちらも夜、寝てもらうためです。

寝てさえいれば、パニックを起こすこともありません。本人も夜ぐっくり眠れて、いいことなのです。

寝てさえいればおしっこを考えない。そのときは、尿パットを使うなどしてもしものときに備えます。


眠剤等を使って夜間の頻尿を抑えつつ、泌尿器科受診をして抜本的な治療をしていきます。


入院で大部屋だとこれほどのスーパー頻尿なら、物音や灯りで他の患者さんも起きてしまうことになりますから、夜はぐっすり朝まで寝るのがいいのです。


頻尿は「歳のせいだから」と考えずに、早めに泌尿器科受診をしましょう。

そうでないと、もっと歳をとったときに、あなたも周りの介護をする人も夜眠れないようになってしまうかもしれません。


それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2019年11月10日


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