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「君たちはどう生きるか」

1937年吉野源三郎著の小説を2017年に羽賀翔一氏がマンガ化したものです。

当時は児童小説として発行されていたそうです。

原作はけっこう古いんですね。

でも知りませんでした。読んだことがなかったんです。

読んだことがなかったので「一体、何について書いてある本なんだろう?」と思っていました。

読んでみて分かりました。

これは「哲学」について書いてあるんです。

「哲学?ハイ、もうおしまい」「ダメダメ、難しそう」というなかれ、書かれているテーマは今でも私たちが遭遇する問題なのです。身近にあることなのです。きっと皆さんも経験があるはず、そういうテーマです。

自分の生き方は自分で考え、自分で決める。そんなの分かっているけど実際は悩み、苦しみ、喜び、希望、損得と社会のなかで自分の軸が揺れることがあると思うんです。

さあ、著書の主人公「コペル君」と一緒に「どう生きるか」について考えてみましょう。


◆ いきなりクライマックスから始まる。

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この本は主人公の「コペル君」、その親戚のおじさん、コペル君の友人関係で成り立っています。それぞれのエピソードとおじさんのノートが折り重なって物語は進んでいきます。

そしていきなりエピソードのクライマックスからこの本は始まります。


そこから冒頭のクライマックスエピソードに至るまでを、コペル君の体験とおじさんが伝えたいことを書いたノートとが折り重なって話が進んでいき、最後にもう一度冒頭のクライマックスに戻るというのがざっとした流れです。


このコペル君、中学生にしてはものすごいことを考える子です。

「ここから見ていると人間でちっぽけだね。まるで分子みたいにちっぽけだ…」


学校で習いましたよね、この世のすべての物質は分子から出来ていると。今はもっと小さな原子や電子、などが発見されていますが、物質を拡大していくと分子に当たります。コペル君はビルの屋上から地上の人々を見ていると、ふとそんなことを思ったのです。

「人間てちいさいなぁ…まるで分子みたいだ」


すると隣にいるおじさんが言います。

「おもしろいこと言うな。いい発見だ」


というエピソードの後におじさんのノートが出てきます。

コペルニクスの話です。地動説を唱えた天文学者。

今は地球が太陽の周りを回っているのが常識だが、これが世界に定着するのにコペルニクスの時代から何百年もかかった。キリスト教の世界では地球がこの世の中心、地球が動くなんてありえない。当時はまだ天動説だったんだ。これに異を唱えるものは牢屋に入れられ、書物を焼かれたりした。人間は自分を中心に考えるもの。だから地動説は受け入れにくいんだ。これは社会にも通用する。たとえば自分の家を出て右に曲がったらとういように、自分の場所を中心に道や地図を考える。世界地図もそれぞれの自国が中心に描いてある。みんな自分を中心にして考えるものなんだ。子どもの大人もそう。でも自分中心で考えてばかりいたら、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。


おじさんはノートに、コペル君の体験を通じて伝えたいことを書いています。

ノートを見ながらエピソードを思い出していくんですね。


◆ 心から感じたことを、その意味についてよく考えるんだ。

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コペル君の友達浦川君は貧しくて山口くんからいじめられていた。そこへガッチン(あだ名)という生徒が「弱い者いじめをして!!」と、とうとう我慢ならず山口くんに言った。そしてケンカになり…。


このエピソードに関しておじさんのノートは、

自分の感じたことを、よく考えることが大切なんだと言います。


冷たい水の味をどんなものかを他人に伝えることってできますか?自分自身が水を飲んでみない限り、どうしたって伝えることはできない。誰がどんなに説明したって、その本当の味は、飲んだことがある人でなければわかりっこない。

自分が本当に感じたことや、心を動かされたことを、その意味を考えてゆくことが肝心なんだ。

何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもごまかしてはいけない。


自分が感じたこと思ったことを、素直に受け入れ、それについて深く考えることが大切だと言います。


◆ なんでニュートンは林檎をみて重力がわかったの?それはね…物事を深く深く考えたから。

おじさんのノートはこうも書いています。

ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見てなぜ重力というものにぶち当たったのか?

コペル君は不思議に思います。

これについておじさんは、

ニュートンはもっと深く考えた。もっと木が高かったら?さらにもっと高かったら?どんどん高くしていった。じゃあ月はどうして落ちてこないの?ニュートンあたりまえのことをもうすこし深めて考えていったんだ。


ひとつの分かり切ったことを追いかけて追いかけて深く考える。その先に当たり前じぁないことが分かる。

普段あることももう少し深く考えることで、物事の根っこの部分が見えてくることがあると言います。


◆ 「ありがたい」は「有難い」、つまりあることが難しい「めったにあることじゃあない」という意味。

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世の中にはお金持ちもいれば貧乏な人もいます。貧困や病気、戦争など世の中にはいっぱい問題が起こっている。


でもなぜ、これほど文明の進んだ世の中に、そん嫌なことがなお残っているのだろうか? 

なぜ、この世の中から、そういう不幸が除かれないでいるのだろうか?


そして自分が受けている幸せが、めったにあることじゃないということを思えば、それに感謝する気持ちになる。それで「ありがたい」という言葉が、「感謝すべきことだ」という意味になり、「ありがとう」と言えば、お礼の心持ちを表すことになった。


当たり前のことを考え、感謝する。

私たちが生きていくために必要なものは、どれ一つとっても、人間の労働の産物でないものはないじゃないですか。誰かが作ってくれて、サービスを提供してくれているんですよね。


◆ これは哲学の本。自分軸を考えるためにこの本はある。


まだまだエピソードはありますし、おじさんのノートはもっともっと書いてあります。


この本は単に読んで「あぁそうなんだ」で終わるのではなく、「自分で考える」ことを言っています。

読み手がまるで主人公のコペル君になったかのようです。

哲学というのは、とにかく世の中のことを「考える」ことなんです。

でも難しく思わないでください。

この本はベストセラーになっているくらいですから、子どもから大人まで分かりやすく書いてあります。先にも書きましたが、エピソード自体が私たちの身近な、そして誰でも経験したことがあるようなものばかりだからです。


さて冒頭のクライマックスでは、コペル君は友だちを裏切ってしまう。

その裏切ってしまったことについて、彼はものすごく悩むんですが、どうやってこれから進んでいくのか?

そこは本著を読んでいただきたいと思います。


子どももそうですが、大人になってからもきっと似たような場面があると思うんです。

自分が考えていたこととは反対の行動をとってしまうとか、裏切りにあうととか。ビジネスの世界でもあります。


今一度、自分の軸が何なのか?を考えたい。自分の軸となるものをしっかり持ちたいという方は、本著が考えるきっかけとなるはずです。

260万部のベストセラー「君たちはどう生きるか」

さて、どう生きましょうか?




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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