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入院時、もしくはカンファレンスでご家族さんとお話をすると、「とにかく、せめてトイレは自分でできるようになってほしいです」「トイレが自分でできないと家で看るのはちょっと…」ということを言われます。

これを言われるご家族は非常に多いのです。

看護師ならこの言葉は必ずといっていいほど聞いたことがあると思います。私もたくさん聞いてきました。



「トイレだけは自分でできるようになってほしい…」

もし愛する家族がオムツで生活になったら、もう家では看ないですか?





◆ 家族の生活スタイルによってはとても厳しい現実になる。

それぞれの家族には事情があります。

そりゃあできれば自宅で介護をしてでも、帰らせてあげたい。そう思う家族は多いはずです。

本人も大抵の場合、自宅に戻りたいと考えています。たまに「もう自宅は嫌、施設がいい」という本人さんがいらっしゃいますが。


特に独居高齢者。そして老老介護になる家族。この場合は話し合いの結果、自宅退院を断念して介護施設に入られるケースが圧倒的に多いです。この場合、本人がしっかり歩けないとか日常生活の動作がうまくできないということが前提にあります。しっかりされているのなら、自宅退院は否定されません。


あと、本人以外は働き盛りの家族ばかりで、とても面倒をみれないというケースです。


本人の介護負担が大きいほど、たとえヘルパーなど訪問を増やしても、家族が自宅退院を断ることがあります。

自宅でもしものことがあったら…と考えると24時間介護スタッフがいる施設のほうが安心するということです。


自宅で介護をするのは想像以上に大変です。それでも家族が介護をしているところはありますが、実際は本当に大変だと思います。

何が大変て、「排泄」の介護が一番でしょうか。

「家族なんだから…」という人がいますが、家族でも大変です。オムツの中だけでも処理が大変ですが、漏れてシーツや布団、衣服にまで汚染した場合、全部取り換えて洗わないといけません。


介護をする側も大変ですが、本人もそうです。

自分の排泄物を処理してもらうなんて…と思うのが人情というものでしょう。そして自分の局部をさらしていくことに抵抗を感じる人も多くいます。家族に見られるより赤の他人に見られたほうがマシという人もいます。


いろいろな諸事情がありますが、排泄処理を家族がやるのかどうか、ヘルパーに頼むのかどうか。しかしヘルパーに頼みっぱなしもありですが、それだと本人がヘルパーが来る時間以外はオムツが汚れたままでいないといけませんから、やはりヘルパーを頼んでいても家族が排泄処理をできたほうが、本人の快適と衛生面という点から好ましいと考えます。



◆ もし自宅で介護する時は、できるだけ家族の負担が軽くなるように提案します。

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家族さんが自宅介護にとても熱心な場合でも、できるだけ家族の負担が軽くなるようにケアプランを調整していきます。

それが永く続く秘訣だからです。

このケアプランはケアマネージャーの仕事です。もし自宅退院してから、負担が大きくて困った場合はケアマネージャーに相談してください。いい提案をしてくれると思います。


本人の尊厳を守りつつ、介護人の負担を減らしつつ、これは自宅介護だけではありませんが、どんな場合でもこれを基本にケアを考える必要があります。


◆ ただ、ぶっちゃけ、こういう自宅退院に条件を付ける家族は、結局自宅では介護しない傾向があります。

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排泄は生活するうえで重要な日常生活動作です。

せめてこれだけでも自分でできれば…と考えるのは自然なことです。家族も本人のプライドや尊厳を考えて「できればトイレだけは自分でできるようになってほしい」と考えているのでしょう。


ところが過去のパターンから、こうした自宅退院するときにあれこれ「条件」を付けてくる家族さんの場合、結局自宅退院は断念するケースが結構ありました。

たとえオムツが外れてトイレで排泄ができるようになっても、

「もし転倒したら」「本人が排泄に失敗したら」「やっぱりそもそも仕事が忙しくて…ね」「仕事で日中他に誰も看る人がいないので、もし何かあったら」…

まだまだいっぱい出てきます。

こうしたことでたとえトイレが自立になっても結局老人施設に入所するケースがたくさんありました。

もちろん、こうした家族を責めるわけではありません。それぞれの家庭の事情があるのでしょうから。


回復期リハビリテーションでは、こうした要望が非常に多いため、トイレ動作は必須の訓練です。本人もできれば自分で排泄をしたいもの。自宅であろうが施設であろうがそうでしょう。

(過去に、「オムツがいい」とリハビリでもトイレ動作の訓練を全然したがらない患者さんがいましたが…)



それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

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