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阿川佐和子さんといえばTVでもおなじみの有名人です。

実は介護経験が長い方なのです。

なので、介護のノウハウをいっぱいご存知なんですね。


この本は大塚亘夫氏というよみうりランド慶友病院の会長と共著となっています。

このよみうりランド慶友病院はなかなかユニークな病院で、この本の中にも紹介されていますが、24時間365日面会オッケーなんです。

それ以外にも、他の病院ではダメと言われるようなこともオッケーという変わった?病院です。


さて、大塚医師は高齢者医療の第一人者で、著書のなかで阿川さんといっしょに介護にまつわることを話しています。

介護をされたことのある方ならすごくよく分かると思いますが、介護って想像以上に大変なのです。

中には「私、介護が大好きなの」といって苦にならない人もいますが、たいていの人にとって介護は重労働で、精神的にもかなりの負担になります。

阿川さんも大変だったことを話されていますが、不思議と大変さが感じられない。

そこには介護に向き合うときの考え方やテクニックがあり、肉体的精神的負担を軽減してくれている。

この本は、介護で疲れている人、介護で心が荒んできて優しくなれなくなってきた人にぜひ読んでいただきたい、おすすめ本です。


◆ 介護をする人がいい精神状態で保てられるようにすることが、介護を長く続けるための基本中の基本

認知症になると同じことを何度も言うし、聞いてくるし、何回教えても結局また聞いてくるなんてことは日常茶飯事です。

ついイライラしてします。

そんなことはありませんか?

これは別に変なことじゃなくて誰にでもあることなんです。

どんなに仏のような人でも、イライラしてしまうものです。


私もそうですから。


でも介護をする側がこうしたイライラしたり怒っていたりすると、不思議と相手に伝わるんです。

よく「患者さんが不穏で大変だったよ」ということがありますが、これは実はケアをする側に問題があることが多いのです。


一番理想なのは、笑い飛ばすことです。

認知症でおかしなことを言ったり、したり、とんちんかんなことがあれば、それを笑ってすませるようにできれば、高齢者介護は長くいい関係を保ちながら続けることができるのです。


この笑うというのは、何も人をバカにしている笑いではありません。


私たちもありませんか?

会話をしていて相手がギャグを言ったり、面白いことを言ったりしたとき、「ふふふ、もー、そんなこと言って」と笑って流すでしょう?これです。これが介護で大切なのです。


もうね、笑わないと介護をする人もたまったもんじゃないのです。

笑いましょう。

「もー、しょうがないなあ。またそんなこと言って」

と笑って受け流しましょう。


認知症の人に怒っても、「この人はなんでこんなに怒っているんだろう」としか思わないのと、あとで「この人から何か忘れたけど怒られたような気がする。怖い人だ。」と介護をする人に対して嫌悪感を抱くだけになってしまいます。怒ったことろでいい関係は築けないのです。


「わかっちゃいるけど、どうしてもイライラしてしまう」

という方は、この本をぜひお読みください。

阿川さんと大塚さんに教えてもらいましょう(笑)


◆ 好物は喉につまらない

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これは目からうろこでした。

嚥下障害がでてきて、食べ物をうまく喉に通らなくなってきたとき、どうしますか。

口から食べることを諦めて、胃ろうをつくりますか。もしくは鼻からチューブを通して食べ物を流し込みますか。


日本の病院ではすぐに口から食べるのを止めて、上記のような処置をしますよね。


でも大塚医師によると、不思議なことに好物はたとえ嚥下障害があっても喉を通るんだそうです。

「そんなバカな!」

という声が聞こえてきそうですが、実は私もこれを経験したことがあります。

病院食を食べない患者さんがいて、いろんな形態を変えても上手くたべられない。ムセるし、上手く喉を通さない。でも家から持ってきた好物だけは、ムセずにちゃんと食べられたんです。

また、別の患者さんは食事で口を全然開けてくれなくて困っていましたが、家から持ってきた好物はちゃんと食べるんですね。


こうした経験もあって、大塚医師の「好物は喉を通す」ということが分かります。

もちろん限界はありますよ。


でも重度でないなら、そんなに心配し過ぎて好きな食事を取り上げてしまうよりは、最後まで口から好きなものを食べてもらうほうが、よっぽどQOL(生活の質)が保てられるのではないでしょうか。


これは日本国民みんなが考えることだと思います。

すぐに食事を取り上げる。

家族も「病院が危ないからというので仕方がない」と簡単に諦めすぎです。

病院もすぐに安全策に走りすぎです。


もう自然の摂理なんですから、もうちょっと食べることに寛容になってもいいのではないでしょうか。

こんなことを考えさせられた章でした。


この章では海外の食事についても紹介されていますので、そこもぜひお読みください。




◆ 介護は家族の絆、そして病院や施設との信頼関係で成り立つ。

介護は大変ですが、家で親を看ることは並大抵のことではありません。

阿川さんも本の中で愚痴や大変さを漏らしています。


介護は大変ですが、同時に自分なりの楽しみを作ることで家族のストレスを軽減できます。

本人も家族からやいやい言われなくなるので、かえって穏やかになる。


そう!介護は完璧主義ではいけません。

みんなが潰されてしまいます。


60点!60点あればよしとしましょう。

100点を目指すからストレスになります。

介護は果てしない旅です。最初からがんばりすぎると、後でもちません。

だから、60点主義でいきませんか?


この本は、そう言って、介護をもっとやりやすくするアイデアや考え方が紹介されています。


介護で疲れている方、介護のお仕事をしている方、看護師の方、介護が必要な方がいるご家族の方、こうした方にぜに読んでいただきたいと思います。

きっと心が軽くなるはずです。




それでは最後まで読んでくださってありがとうございました。

初出掲載:2019年4月5日   更新日:2019年11月25日

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